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十一章 大人たち
二
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「ね~っ、最低でしょ? うちのお父さんとお母さん」
「はははっ、まあそうかもな」
いよいよ文化祭本番がスタート。高校生活最後の文化祭。とはいうもののたった一日の開催だし、特に行きたい出し物があるわけでもなかったし。そういうわけでこの日私と琴乃は午後に予定していた自分たちのシフトの時間まで二人一緒に行動することにした。途中、真妃と秦野の不釣り合い仲良しカップルを見かけたのだが、彼女たちも二人きりの時間を楽しんでいるみたい。邪魔するのは悪いと思い目であいさつをしてそのまま見なかったことにすることにした。そして気になる琴乃はというと……やはり昨日までと同様、仲良しカップルを目にしてもブチギレることもなく、何事もなかったかのように平常心を保っていた。そしてほんの少しではあったが、私と友好的に話をしてくれるようになっていたのだった。
「ったく……ほんと、何が若気の至りよ! 冗談じゃないわ!」
「ははははっ。まあでもいろいろ貸してくれるんだろ、百合絵の母さん。なんだかんだいい親でうらやましい限りだ」
「まあ、それはそうかもしれないけど……」
いい親? うちのお母さんが? 使い古しのコスメの貸し借りなんてどこの母と娘もやってるんじゃないの?
「あっ、百合絵にねーさん。ちーっす」
そんなことを考えていると聞きなれた声がした。とはいうもののクラスも文理も違うということもありここ最近まともに直接話をしていなかったので少しだけ新鮮だった。
「あーっ、綾子!」
「よっ! なんか久しぶりだね。ねーさんと何話してたの?」
「あっ、おまえか。ねーさんって呼ぶのはやめろとあれほど」
久しぶりに見る綾子の姿に喜びを隠せなかった私だが、隣の琴乃はNGワードである『ねーさん』という呼び名で呼ばれてしまい相変わらず不機嫌そうだった。すっかり先ほどまで琴乃と何の話をしていたのかすら忘れてしまいそうなほどだった。
「えーっ、秘密? 若気の至りとか言ってたけどますます気になっちゃうじゃなーい」
あっ……。
そうだったあの話……。琴乃の方を見ながら私は一瞬固まった。
「綾子、悪いがおまえには関係ない。悪いが別のこと話そうぜ」
「え~っ。ねーさんケチくさっ! ね~、お願い百合絵~っ、絶対秘密にしておくからさ~」
少しだけ申し訳なさそうにペコっと頭を下げる綾子。別にそこまでしなくてもいいのに。正直さっきのことは今となっては結構どうでもいいことだと思っていたし、それ以前に大切な友達に隠し事をするのは後ろめたかった。
「別にいいけど。あっ、ちょっとだけびっくりしちゃうかもしれない」
「えっ……いいのか?」
「あっ、うん」
「サンキュー百合絵! やっぱねーさんとは違うね。で、なんなの?」
あっけにとられる琴乃をよそに、私は先ほど琴乃に話した話を綾子にも話した。
「……なんか……、ごめん」
「ううん、別にいいよ」
話を終えると、場の空気がしんみりと静まり返っているのを感じた。先ほどまで楽しそうにしていた綾子もすっかり落ち込んでしまっているようだった。
「なんか芸能人の不倫とか、そんな楽しい話題だと思ってたら……。なんか悪いことしちゃったわ」
「綾子ったら~。大丈夫だよ~、そんなに深刻にならなくても」
相変わらず綾子を気遣う私に琴乃が声をかけた。
「なんか……百合絵。おまえすごいというか鈍感というか……、さっきまではあれほど嫌そうにしてたのに」
「う~ん、なんていうか……もう慣れちゃった。まあでもとりあえず、これでうちが親ガチャハズレっていうのは確定でしょ? ねっ、綾子」
「親ガチャハズレね~。でもあれでしょ? なんだかんだ普段からいろいろしてくれてるんでしょ、百合絵のパパとママ。さっきだってママがコスメ貸してくれるとか言ってたし。パパさんの方もなんかないの?」
「う~ん、お父さんね。なんかうちのお父さんも秦野みたいにカメラとか写真がどうこう言ってきてしつこくて……。あっ、でもこの前のオンライン授業始まる前ミニ琴姉プレゼントしてくれたんだっけ」
「はっ⁉」「えっ⁉ ねーさん?」
「あ、ごめん、つい……。お父さん、めちゃくちゃ頭いいパソコン作ってくれたの」
「百合絵、おまえ……」
「まじか~っ、いいな~。パソコンって結構値段するんしゃな~い? てか百合絵、何よ『ミニ琴姉』って、超ウケる~っ」
つい口が滑ってしまい琴乃と綾子を驚かせてしまったが、まあ確かによくよく考えてみたらお父さんも一応私のために何かしてくれてはいるようだった。
「綾子は何かないの?」
「うーん、うちは別に何も。予備校とか習い事のお金は出してくれてるけど、それ以外は全然よ。完全お小遣い制で服やコスメとかのお金も全部そっからだし。あ~、あたしも正直金欠なんだよなー。ほんと、百合絵がうらやましーわ」
「ええっ、そんな……うちだって」
「はぁ~っ、あ、そうだ、ねーさんは?」
「あ、そういえば……。そういえば琴姉のお父さんとお母さんってどんな人だっけ?」
「えっ、百合絵ねーさんと幼馴染なんでしょ? 知らないの?」
「うん」
「マジかー」
そういえばそうだ。よくよく考えてみたら、何年も琴乃と付き合っている割には彼女の父と母のことについて全くと言っていいほど知らなかった。強いて言えばお父さんがお堅い仕事についているとかその程度のことだった。私も特に気にしていなかったし、琴乃の方も全くそんな話題を出そうとしなかった。勇逸無二というべき幼馴染のことだということもあって考えれば考えるほど興味が湧いてきてしまうのだった。
「琴姉?」
「おまえら……どうやら開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまったようだな。――まあいいだろう。百合絵も秘密話したんだもんな。私も話してあげよう」
「ねーさん何よそれーっ。どんだけすごいパパとママなのよ? もしかして、親ガチャSSR?」
「いや、その逆だ。百合絵、おまえ親ガチャハズレとか言ってたけど、そのレベルでハズレとか言ってもらっちゃ困るな」
「えっ?」
「ふっ、私の親ガチャなんか、ハズレどころか闇だらけでハズレもクソもないからな。まあいい、要は簡単に言うと私の今の親父、実は実の父親じゃないんだ」
「えっ……ななっ⁉」
一瞬冷や汗を感じてすぐさま隣の綾子を見る。やはり彼女も同じだった。綾子としばらく目を見合わせると、すぐに琴乃の方へと目線を戻した。
琴姉のお父さんが実のお父さんじゃないって⁉ 何その超特大級の新情報!
「ふ~っ……。まあもとはといえば、すべてあのババアが悪いんだが」
「えっ……ババアって、お母さん?」
「ああ。まああんなやつ母親でもなんでもねえよ。生物学的に私を産んだ女ってことだけだ」
「そ、そんな……」
すでに琴乃の口から飛び出す話の理解に追われいっぱいいっぱいになっていた私は、ほとんど言われるがまま彼女の話を聞き続けた。
「まああのババアさ、若いころから結構いろんなヤバい男と付き合ってたらしくて。で、当時付き合ってたそいつがさ、ババアが妊娠したってこと聞いて手のひら返したように絶縁しやがったんだ。で、その結果あいつは一人で仕方なく……。一度はどっかに捨てようかと迷ってたみたいだったが、結局できなかったそうだ」
「えっ! てことはねーさんは⁉ えっ! えっ! 超やばっ⁉」
返す言葉がなかった。綾子も申し訳ないとかそういう気持ちを通り越して、もはや驚くことしかできなくなってしまっていた。
「あまりでかい声出すなよ」
「あっ! ごめんごめん」
「えっ……。でも琴姉のお父さん、結構お堅い仕事してるって前に……」
「まあ、さすがにこのままじゃヤバいって思ったんだろうな。私と二人っきりで数年さすらった後はなんとか市役所勤めの独身を捕まえることに成功したようで。――あーなんか自分で言っててもうんざりしてくるわ、あのクソババア」
「あ……そういうことなの」
超特大級の秘密を聞いてしまった私と綾子は本当に返す言葉がなくなってしまった。またもや私たちは目を見合わせて固まってしまった。
「で、今でも私は生物学的な父親を一度も見たことはない。ああ、一応言っておくが、今のことはあまり広めないでくれよな」
ブンブンブンブン!
真顔のまま首を縦に振る私と綾子は相変わらず無言のままだった。
琴姉ん家そんなことが……、もうレベルが……。なんか親ガチャハズレとか言っちゃって申し訳なくなってきたわ……。
「はははっ、まあそうかもな」
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「ったく……ほんと、何が若気の至りよ! 冗談じゃないわ!」
「ははははっ。まあでもいろいろ貸してくれるんだろ、百合絵の母さん。なんだかんだいい親でうらやましい限りだ」
「まあ、それはそうかもしれないけど……」
いい親? うちのお母さんが? 使い古しのコスメの貸し借りなんてどこの母と娘もやってるんじゃないの?
「あっ、百合絵にねーさん。ちーっす」
そんなことを考えていると聞きなれた声がした。とはいうもののクラスも文理も違うということもありここ最近まともに直接話をしていなかったので少しだけ新鮮だった。
「あーっ、綾子!」
「よっ! なんか久しぶりだね。ねーさんと何話してたの?」
「あっ、おまえか。ねーさんって呼ぶのはやめろとあれほど」
久しぶりに見る綾子の姿に喜びを隠せなかった私だが、隣の琴乃はNGワードである『ねーさん』という呼び名で呼ばれてしまい相変わらず不機嫌そうだった。すっかり先ほどまで琴乃と何の話をしていたのかすら忘れてしまいそうなほどだった。
「えーっ、秘密? 若気の至りとか言ってたけどますます気になっちゃうじゃなーい」
あっ……。
そうだったあの話……。琴乃の方を見ながら私は一瞬固まった。
「綾子、悪いがおまえには関係ない。悪いが別のこと話そうぜ」
「え~っ。ねーさんケチくさっ! ね~、お願い百合絵~っ、絶対秘密にしておくからさ~」
少しだけ申し訳なさそうにペコっと頭を下げる綾子。別にそこまでしなくてもいいのに。正直さっきのことは今となっては結構どうでもいいことだと思っていたし、それ以前に大切な友達に隠し事をするのは後ろめたかった。
「別にいいけど。あっ、ちょっとだけびっくりしちゃうかもしれない」
「えっ……いいのか?」
「あっ、うん」
「サンキュー百合絵! やっぱねーさんとは違うね。で、なんなの?」
あっけにとられる琴乃をよそに、私は先ほど琴乃に話した話を綾子にも話した。
「……なんか……、ごめん」
「ううん、別にいいよ」
話を終えると、場の空気がしんみりと静まり返っているのを感じた。先ほどまで楽しそうにしていた綾子もすっかり落ち込んでしまっているようだった。
「なんか芸能人の不倫とか、そんな楽しい話題だと思ってたら……。なんか悪いことしちゃったわ」
「綾子ったら~。大丈夫だよ~、そんなに深刻にならなくても」
相変わらず綾子を気遣う私に琴乃が声をかけた。
「なんか……百合絵。おまえすごいというか鈍感というか……、さっきまではあれほど嫌そうにしてたのに」
「う~ん、なんていうか……もう慣れちゃった。まあでもとりあえず、これでうちが親ガチャハズレっていうのは確定でしょ? ねっ、綾子」
「親ガチャハズレね~。でもあれでしょ? なんだかんだ普段からいろいろしてくれてるんでしょ、百合絵のパパとママ。さっきだってママがコスメ貸してくれるとか言ってたし。パパさんの方もなんかないの?」
「う~ん、お父さんね。なんかうちのお父さんも秦野みたいにカメラとか写真がどうこう言ってきてしつこくて……。あっ、でもこの前のオンライン授業始まる前ミニ琴姉プレゼントしてくれたんだっけ」
「はっ⁉」「えっ⁉ ねーさん?」
「あ、ごめん、つい……。お父さん、めちゃくちゃ頭いいパソコン作ってくれたの」
「百合絵、おまえ……」
「まじか~っ、いいな~。パソコンって結構値段するんしゃな~い? てか百合絵、何よ『ミニ琴姉』って、超ウケる~っ」
つい口が滑ってしまい琴乃と綾子を驚かせてしまったが、まあ確かによくよく考えてみたらお父さんも一応私のために何かしてくれてはいるようだった。
「綾子は何かないの?」
「うーん、うちは別に何も。予備校とか習い事のお金は出してくれてるけど、それ以外は全然よ。完全お小遣い制で服やコスメとかのお金も全部そっからだし。あ~、あたしも正直金欠なんだよなー。ほんと、百合絵がうらやましーわ」
「ええっ、そんな……うちだって」
「はぁ~っ、あ、そうだ、ねーさんは?」
「あ、そういえば……。そういえば琴姉のお父さんとお母さんってどんな人だっけ?」
「えっ、百合絵ねーさんと幼馴染なんでしょ? 知らないの?」
「うん」
「マジかー」
そういえばそうだ。よくよく考えてみたら、何年も琴乃と付き合っている割には彼女の父と母のことについて全くと言っていいほど知らなかった。強いて言えばお父さんがお堅い仕事についているとかその程度のことだった。私も特に気にしていなかったし、琴乃の方も全くそんな話題を出そうとしなかった。勇逸無二というべき幼馴染のことだということもあって考えれば考えるほど興味が湧いてきてしまうのだった。
「琴姉?」
「おまえら……どうやら開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまったようだな。――まあいいだろう。百合絵も秘密話したんだもんな。私も話してあげよう」
「ねーさん何よそれーっ。どんだけすごいパパとママなのよ? もしかして、親ガチャSSR?」
「いや、その逆だ。百合絵、おまえ親ガチャハズレとか言ってたけど、そのレベルでハズレとか言ってもらっちゃ困るな」
「えっ?」
「ふっ、私の親ガチャなんか、ハズレどころか闇だらけでハズレもクソもないからな。まあいい、要は簡単に言うと私の今の親父、実は実の父親じゃないんだ」
「えっ……ななっ⁉」
一瞬冷や汗を感じてすぐさま隣の綾子を見る。やはり彼女も同じだった。綾子としばらく目を見合わせると、すぐに琴乃の方へと目線を戻した。
琴姉のお父さんが実のお父さんじゃないって⁉ 何その超特大級の新情報!
「ふ~っ……。まあもとはといえば、すべてあのババアが悪いんだが」
「えっ……ババアって、お母さん?」
「ああ。まああんなやつ母親でもなんでもねえよ。生物学的に私を産んだ女ってことだけだ」
「そ、そんな……」
すでに琴乃の口から飛び出す話の理解に追われいっぱいいっぱいになっていた私は、ほとんど言われるがまま彼女の話を聞き続けた。
「まああのババアさ、若いころから結構いろんなヤバい男と付き合ってたらしくて。で、当時付き合ってたそいつがさ、ババアが妊娠したってこと聞いて手のひら返したように絶縁しやがったんだ。で、その結果あいつは一人で仕方なく……。一度はどっかに捨てようかと迷ってたみたいだったが、結局できなかったそうだ」
「えっ! てことはねーさんは⁉ えっ! えっ! 超やばっ⁉」
返す言葉がなかった。綾子も申し訳ないとかそういう気持ちを通り越して、もはや驚くことしかできなくなってしまっていた。
「あまりでかい声出すなよ」
「あっ! ごめんごめん」
「えっ……。でも琴姉のお父さん、結構お堅い仕事してるって前に……」
「まあ、さすがにこのままじゃヤバいって思ったんだろうな。私と二人っきりで数年さすらった後はなんとか市役所勤めの独身を捕まえることに成功したようで。――あーなんか自分で言っててもうんざりしてくるわ、あのクソババア」
「あ……そういうことなの」
超特大級の秘密を聞いてしまった私と綾子は本当に返す言葉がなくなってしまった。またもや私たちは目を見合わせて固まってしまった。
「で、今でも私は生物学的な父親を一度も見たことはない。ああ、一応言っておくが、今のことはあまり広めないでくれよな」
ブンブンブンブン!
真顔のまま首を縦に振る私と綾子は相変わらず無言のままだった。
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