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後日譚(最終話)
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10年の月日が流れた。
悪役令嬢・カサンドラがもたらした束の間の平和を人々は謳歌している。
かつて、魔王とカサンドラが戦ったクリスティン領辺境の平原は、一大観光地となっていた。
愛娘の亡き骸が、野ざらしである事を不憫に思ったクリスティン侯爵は、永久凍土の地に神殿を築いた。
神殿はやがて博物館となり、今では修学旅行のメッカでもある。
”氷結の戦乙女”の部屋は、博物館の最奥部にあり、通常入室は出来ない。
その代わり、そっくりに描かせた絵画が展示されている。
観光客は、こぞってこの戦乙女の絵画を見ようとやって来るのである。
□ □ □ □
~博物館前の商店街~
生徒A
「カサンドラ様、素敵だったわー。あんなに綺麗な人だったとは思わなかった。」
生徒B
「そうよね。綺麗で、強くて、そして悲愛のヒロイン! 憧れちゃうわ。私達と同じ歳とは思えないわ。」
「私も、会ってみたかったなぁ。」
「そうよね。それで、あの話本当かしら?」
「あの話ってランバート先生の話?」
「そうそう、ランバート先生ってカサンドラ様と付き合ってたんじゃ無いかってやつ?」
「あはは、無い無い、絶対ないわ。」
「どうしてよ。私はお似合いだと思うわ。」
「あなたは、ランバート先生をお気に入りだから…。けどね、ジークフリート陛下と婚約してたって話じゃない?
それと、侯爵家と伯爵家じゃ無理よ。」
「それは、そうだけど・・・、そこが非愛なんじゃない?」
「違うわよ! カサンドラ様とジークフリート様! 無実の罪で婚約破棄。
カサンドラ様は、王子とお家の為に甘んじて受け入れたのよ!
それでも、この国の為に一人で戦ったんじゃない。」
「えー?だって陛下はご結婚されてるじゃん。」
「そこもお国の為よ。別の都合でね。」
「陛下はきっと今もカサンドラ様を・・・、う~ん、萌えるわ。」
二人の会話に引率の教師が割って入る。
「こらこら、おまえら、ボサボサしてたら集合時間に遅れるぞ!」
「あ、ランバート先生! 先生! ね! 先生ってカサンドラ様と付き合ってたの?」
不意をつかれ赤面するランバート。
「バ、バカ言うな。そんなわけないだろう。」
「だって先生、その歳でまだ独身じゃん。」
「それとこれとは話が違う! ほれ、さぁ行け!」
「じゃあ、もう一つだけ質問。」
しぶしぶ受け答えするランバート。
「何だ?」
「カサンドラ様って生きてるの?」
「・・・・。」
答えあぐねるランバート
(自己犠牲魔法を使って生きてる者はいない。だが、)
「俺は、生きていると信じている。」
(アレンの奴が、世界中駆け回って助ける方法を探しているはずだ。)
「さぁ、もう行け!」
「「 はーい。 」」
「なあ、おまえら、カサンドラに憧れるのは勝手だが、あいつはお前らと変わらない、ケーキを食べては美味しそうに笑う普通の女の子だったんだぜ。」
「何それ? そんなの当たり前じゃん。」
「ん? そうか・・・、当たり前か。」
ふふっと笑うランバート。
「じゃーおまえら、今、幸せか?」
「ふふ、まあまあかな?」
「だったら良かった。」
「なあ、カサンドラ・・・。」
ランバートは、カサンドラの眠る神殿の方を見て微笑んだ。
~ 完 ~
悪役令嬢・カサンドラがもたらした束の間の平和を人々は謳歌している。
かつて、魔王とカサンドラが戦ったクリスティン領辺境の平原は、一大観光地となっていた。
愛娘の亡き骸が、野ざらしである事を不憫に思ったクリスティン侯爵は、永久凍土の地に神殿を築いた。
神殿はやがて博物館となり、今では修学旅行のメッカでもある。
”氷結の戦乙女”の部屋は、博物館の最奥部にあり、通常入室は出来ない。
その代わり、そっくりに描かせた絵画が展示されている。
観光客は、こぞってこの戦乙女の絵画を見ようとやって来るのである。
□ □ □ □
~博物館前の商店街~
生徒A
「カサンドラ様、素敵だったわー。あんなに綺麗な人だったとは思わなかった。」
生徒B
「そうよね。綺麗で、強くて、そして悲愛のヒロイン! 憧れちゃうわ。私達と同じ歳とは思えないわ。」
「私も、会ってみたかったなぁ。」
「そうよね。それで、あの話本当かしら?」
「あの話ってランバート先生の話?」
「そうそう、ランバート先生ってカサンドラ様と付き合ってたんじゃ無いかってやつ?」
「あはは、無い無い、絶対ないわ。」
「どうしてよ。私はお似合いだと思うわ。」
「あなたは、ランバート先生をお気に入りだから…。けどね、ジークフリート陛下と婚約してたって話じゃない?
それと、侯爵家と伯爵家じゃ無理よ。」
「それは、そうだけど・・・、そこが非愛なんじゃない?」
「違うわよ! カサンドラ様とジークフリート様! 無実の罪で婚約破棄。
カサンドラ様は、王子とお家の為に甘んじて受け入れたのよ!
それでも、この国の為に一人で戦ったんじゃない。」
「えー?だって陛下はご結婚されてるじゃん。」
「そこもお国の為よ。別の都合でね。」
「陛下はきっと今もカサンドラ様を・・・、う~ん、萌えるわ。」
二人の会話に引率の教師が割って入る。
「こらこら、おまえら、ボサボサしてたら集合時間に遅れるぞ!」
「あ、ランバート先生! 先生! ね! 先生ってカサンドラ様と付き合ってたの?」
不意をつかれ赤面するランバート。
「バ、バカ言うな。そんなわけないだろう。」
「だって先生、その歳でまだ独身じゃん。」
「それとこれとは話が違う! ほれ、さぁ行け!」
「じゃあ、もう一つだけ質問。」
しぶしぶ受け答えするランバート。
「何だ?」
「カサンドラ様って生きてるの?」
「・・・・。」
答えあぐねるランバート
(自己犠牲魔法を使って生きてる者はいない。だが、)
「俺は、生きていると信じている。」
(アレンの奴が、世界中駆け回って助ける方法を探しているはずだ。)
「さぁ、もう行け!」
「「 はーい。 」」
「なあ、おまえら、カサンドラに憧れるのは勝手だが、あいつはお前らと変わらない、ケーキを食べては美味しそうに笑う普通の女の子だったんだぜ。」
「何それ? そんなの当たり前じゃん。」
「ん? そうか・・・、当たり前か。」
ふふっと笑うランバート。
「じゃーおまえら、今、幸せか?」
「ふふ、まあまあかな?」
「だったら良かった。」
「なあ、カサンドラ・・・。」
ランバートは、カサンドラの眠る神殿の方を見て微笑んだ。
~ 完 ~
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