悪役令嬢は氷結の戦乙女

marumarumary

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対決

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~某洞窟内~

岩に腰をかけている魔人ハー。
眼光するどく見据えている先に、カサンドラが転移して来る。
「来たか。嬢ちゃん、お前なら来ると思っていたぞ。」
「・・・・」
「泣き寝入りなんてしねーよな。あんたは!」
カサンドラは、標的を見つけ吐き捨てるように呟く。
「お前だけは絶対に許さない。」
「(ふん、損な役回りだぜ、・・・だが)
 良い根性だ。なぁ、お前、俺と来い。悪い様にはしない。
 俺は、これでも魔王軍ではそこそこの地位と力を持っている。」
「聞こえていなかったのか? お前は殺す。」
女生徒は思えないドスの効いた声が洞窟に響く。
カサンドラの怒りは凄まじい気迫となっている。
「おいおい、待て待て、話を聞け。俺は、殺してはいないはずだ。
 それにな、俺は群将だ。向こうでは1000の魔獣を従えている。
 俺が号令すれば、そいつらがお前を、お前の家も、お前の街も襲い掛かるぞ。それでも良いのか?」
「やれば良いわ。お前は殺す。次に全ての魔獣もこの手で滅ぼす。」
「くっ・・・。それなら、いいか、良く聞け。魔人と人間は元々同種族だ。」
「・・・知ってるわ。」
「何! 知っているだと。たかだか貴族の小娘が?」
「太古の昔、魔力を持たない人間が魔力ある人間を迫害したんでしょ。」
もちろん、ゲームで得た知識で、設定資料から知っていた。
しかし、今の状況はそんな事ではない。
目の前の此奴を倒す。この感情はもうどうにもできない。
「へへっ、それで、地獄という地の果てに追いやられたのが俺たちだ。
 俺たちが迫害されたんよ。お前達善良と言われる人間にな。
 知っているなら話は早い。俺たちは人間同士だ、殺しあう必要は無い。」
「けれど、お前たち魔人が力任せに人間を蹂躙してきたのも事実だ。」
「それはそうだがよ。それでも百年に1度の話だ。
 俺たちは強大な魔力を得た代わりに子孫を残せない。
 だからよ、ちょっと、その協力してもらうだけの事よ。
 向こうでは、手厚く扱っている。御姫様の様にな。
 だから、お前も俺と来い。悪いようにはしない。」
「言いたいことはそれだけか。ピグマン家の怒りと悲しみを知れ。」
カサンドラは、日本刀を抜刀し不敵に口角を上げた。
「ちっ。(さすがは魔王のお気に入りってところか)」
「魔法剣 ~フェニックス・ブレード~」
圧倒的な魔力が噴き出る。
日本刀とカサンドラ初となる魔力全開がもたらした力。
素早い動きで身構える魔人ハー。
だが、その瞬間、”バシュー”と身を切り裂く音がした。
まさに、”一刀両断”魔人ハーは血しぶきを上げて・・・血を出しただけで倒れない。
「ぐはっ、・・・・なぜ殺さない。」
なんと、カサンドラが切ったのは魔人ハーの皮2cmというところだった。
「人間なんだろ、お前・・・。」
少し、カサンドラの表情が柔いでおり、それでいて悲しそうに呟いた。
「・・・・ぐぐっ。」
「私は、自ら人間と言う者は殺さない。
 それに、女が欲しければ堂々と口説きなさい。」
カサンドラは日本刀を鞘に収め、転移魔法を唱える。
「甘いぜ、あんた。ガッカリだ。」
「それは、良かったわ。貴方の顔は二度と見たくないと思っていたもの。止血は自分でしなさい。」
そう言うと、カサンドラの姿は空に消えた。
その場で”どさっ”と倒れ込む魔人ハー、いや今は”人”と言われるただの人間。
「くそ、取りつく島もねえな。」

群将ザガンは、それでも何か吹っ切れたような笑みを浮かべていた。
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