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予兆
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~王立学園~
今日はなぜだか”ぞわぞわ”する。
嫌な予感と言うものだろうか。
私は、気になってマリアの様子を見にA組に行った。
・・・、特に変わった様子は見られない。
先ずは一安心だ。
すると、目が合ってしまったマリアがこちらに駆け寄って来た。
「カサンドラ様、どうかなさいましたか?」
「あ、いえ、特に用事があって来た訳ではないのです。」
「 ? 」
「その、少しマリアさんの顔を見に・・・。」
と正直に言ったところ、なぜかマリアは頬を赤らめ視線を逸らした。
ん?その反応、ちょっとおかしくない?
「えっと、そうだ! 義弟のアレンは居ますか?」
と聞いたところ、マリアは首を傾げながら
「アレン様は、本日お見えになっておられないようですが・・・、何かありましたか?」
「あら、おかしいわね。今朝は特にそんなことは言っていなかったのに。
御免なさい、変なことを言ってしまいましたね。気にしないでください。また来ます。」
「そうですか。ではカサンドラ様、お待ちしておりますのでまたいらして下さい。」
ふふっ、いつ見てもマリアは可愛い。
仕方なく私はC組に戻ったところ、学園長が呼んでいるとのことだった。
何だろうか?いよいよ胸騒ぎがする。
◆◆◆
学園長室に向かうと、そこには意外な人物が私を待っていた。
「カサンドラ嬢、急に呼びつけてしまって申し訳ありません。」
卒業後、宰相府の高官となったオクティビアであった。
表情は硬く、重大な事であることが推測される。
こういう時こそ、余裕が必要だと私は思う。
少し笑みを作りながら淑女の礼をとった。
「私に出来ることであれば、何なりとおっしゃって下さいませ。」
すると、オクティビアは少し表情を緩め、瞳からは柔らかな眼差しが向けられた。
「実は、アズラーン村近くに亡者の群れが現れたのです。
騎士団が防衛に向かいましたが、戦況は思わしくありません。
実のところ防戦しか出来ず、お知恵を借りたいのです。」
そう、相手は不死者である。
普通の戦い方では倒すことは出来ないし、心理的な嫌悪感もある。
柵や落し穴で防戦するしかないが、遠からずそれらは突破される。
しかし、倒し方が無い訳ではない。
古今東西、ゲームでの不死者の弱点は”火”だ!
「オクティビアさま、火炎魔法は使われましたか?」
「もちろんです。伝承に残っている倒し方ですから、
しかし、亡者どもは、燃やしたところでスケルトンに成ってまた立ち上がってくるのです。」
・・・単純に火力が足りないのね。
今の私にもそれ程の魔力は無いので、偉そうな事は言えないが。
「私に考えがあります。アズラーン村出身の人を探して貰えないでしょうか?」
「うむ、そうしたいところですが、騎士や官吏のほとんどが貴族なのです。
その中に地方の村出身の者がいるとは思えません。兵士の中にはあるいは・・・。」
困り顔のオクティビアを制して「では、学園の中から探しましょう。」と提案する。
実は、探すまでも無く私は知っている。
アズラーン村こそがマリアの故郷だ。
「待って下さいカサンドラ嬢、見つけたとしてどうするのですか? まさか、その村に行くつもりでは?」
「もちろん、そのつもりです。オクティビア様もそのつもりでこの学園に来られたのでしょう?」
「そ、それは・・・否定できません。
しかし、対策方法をご教示いただければ、騎士団で対応するつもりです。」
「やって見せた方が早いわ。それに・・・。」
これはマリアのイベントなのね。
「それに?」
「守って下さるのでしょう?」
「それは、もちろんです。この命にかえても。」
「頼もしいです。では、先ずはお力を少々いただきますね。」
そう言うと、私はオクティビアに近づき手を取った。
驚くオクティビアに構わず、「失礼します。」と言って魔力循環を始めた。
循環と言っても魔力の総量が違い過ぎるので、オクティビアの魔力が一方的にこちらに流れてくるだけだ。
オクティビアの魔力は、以前の様な淀みは無く、彼らしい誠実な魔力だ。
うん、ご馳走様。久しぶりに私の魔力は満タンになった。
「ご気分はどうですか?気持ち悪くはありませんか?」
「あゝ、何ともない・・・です。 あ、いや少し怠いくらいですね。」
流石は聖騎士候補、私の魔力を満タンにしても余裕があるのね。
悔しくないと言えば嘘になるけど、しょうがないわね。人にはそれぞれ役目があるもの。
「良かった。では、行きましょうか。」
私は、オクティビアを連れだって再びマリアの元へ移動した。
これは、いわゆる”予兆”だ。
最終戦争の前に現れる亡者の群れ。
シナリオでは村々は蹂躙され、アズラーン村にも悲劇が訪れる。
そして、それがマリアの聖女覚醒への第一歩となる。
マリア・・・。
今日はなぜだか”ぞわぞわ”する。
嫌な予感と言うものだろうか。
私は、気になってマリアの様子を見にA組に行った。
・・・、特に変わった様子は見られない。
先ずは一安心だ。
すると、目が合ってしまったマリアがこちらに駆け寄って来た。
「カサンドラ様、どうかなさいましたか?」
「あ、いえ、特に用事があって来た訳ではないのです。」
「 ? 」
「その、少しマリアさんの顔を見に・・・。」
と正直に言ったところ、なぜかマリアは頬を赤らめ視線を逸らした。
ん?その反応、ちょっとおかしくない?
「えっと、そうだ! 義弟のアレンは居ますか?」
と聞いたところ、マリアは首を傾げながら
「アレン様は、本日お見えになっておられないようですが・・・、何かありましたか?」
「あら、おかしいわね。今朝は特にそんなことは言っていなかったのに。
御免なさい、変なことを言ってしまいましたね。気にしないでください。また来ます。」
「そうですか。ではカサンドラ様、お待ちしておりますのでまたいらして下さい。」
ふふっ、いつ見てもマリアは可愛い。
仕方なく私はC組に戻ったところ、学園長が呼んでいるとのことだった。
何だろうか?いよいよ胸騒ぎがする。
◆◆◆
学園長室に向かうと、そこには意外な人物が私を待っていた。
「カサンドラ嬢、急に呼びつけてしまって申し訳ありません。」
卒業後、宰相府の高官となったオクティビアであった。
表情は硬く、重大な事であることが推測される。
こういう時こそ、余裕が必要だと私は思う。
少し笑みを作りながら淑女の礼をとった。
「私に出来ることであれば、何なりとおっしゃって下さいませ。」
すると、オクティビアは少し表情を緩め、瞳からは柔らかな眼差しが向けられた。
「実は、アズラーン村近くに亡者の群れが現れたのです。
騎士団が防衛に向かいましたが、戦況は思わしくありません。
実のところ防戦しか出来ず、お知恵を借りたいのです。」
そう、相手は不死者である。
普通の戦い方では倒すことは出来ないし、心理的な嫌悪感もある。
柵や落し穴で防戦するしかないが、遠からずそれらは突破される。
しかし、倒し方が無い訳ではない。
古今東西、ゲームでの不死者の弱点は”火”だ!
「オクティビアさま、火炎魔法は使われましたか?」
「もちろんです。伝承に残っている倒し方ですから、
しかし、亡者どもは、燃やしたところでスケルトンに成ってまた立ち上がってくるのです。」
・・・単純に火力が足りないのね。
今の私にもそれ程の魔力は無いので、偉そうな事は言えないが。
「私に考えがあります。アズラーン村出身の人を探して貰えないでしょうか?」
「うむ、そうしたいところですが、騎士や官吏のほとんどが貴族なのです。
その中に地方の村出身の者がいるとは思えません。兵士の中にはあるいは・・・。」
困り顔のオクティビアを制して「では、学園の中から探しましょう。」と提案する。
実は、探すまでも無く私は知っている。
アズラーン村こそがマリアの故郷だ。
「待って下さいカサンドラ嬢、見つけたとしてどうするのですか? まさか、その村に行くつもりでは?」
「もちろん、そのつもりです。オクティビア様もそのつもりでこの学園に来られたのでしょう?」
「そ、それは・・・否定できません。
しかし、対策方法をご教示いただければ、騎士団で対応するつもりです。」
「やって見せた方が早いわ。それに・・・。」
これはマリアのイベントなのね。
「それに?」
「守って下さるのでしょう?」
「それは、もちろんです。この命にかえても。」
「頼もしいです。では、先ずはお力を少々いただきますね。」
そう言うと、私はオクティビアに近づき手を取った。
驚くオクティビアに構わず、「失礼します。」と言って魔力循環を始めた。
循環と言っても魔力の総量が違い過ぎるので、オクティビアの魔力が一方的にこちらに流れてくるだけだ。
オクティビアの魔力は、以前の様な淀みは無く、彼らしい誠実な魔力だ。
うん、ご馳走様。久しぶりに私の魔力は満タンになった。
「ご気分はどうですか?気持ち悪くはありませんか?」
「あゝ、何ともない・・・です。 あ、いや少し怠いくらいですね。」
流石は聖騎士候補、私の魔力を満タンにしても余裕があるのね。
悔しくないと言えば嘘になるけど、しょうがないわね。人にはそれぞれ役目があるもの。
「良かった。では、行きましょうか。」
私は、オクティビアを連れだって再びマリアの元へ移動した。
これは、いわゆる”予兆”だ。
最終戦争の前に現れる亡者の群れ。
シナリオでは村々は蹂躙され、アズラーン村にも悲劇が訪れる。
そして、それがマリアの聖女覚醒への第一歩となる。
マリア・・・。
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