悪役令嬢は氷結の戦乙女

marumarumary

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第4の聖騎士候補者 ~~ VSランバート・ホルス ~~

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~王立学園内~

クラス分けが決まった。
私は、A~E組中のC組だった。
アレンとマリアは当然A組ね。
うん、知ってた。
ゲーム『5人の聖騎士と悲愛の魔王』と同じだ。
私がC組へ赴くと・・・、あゝ、ランバートがいる。知ってた。
入園式ですっかり気まずくなったので、できれば避けて過ごしたい。
そもそも、悪役令嬢カサンドラとの絡みは無い。
ところが、学園生活が始まると、ことごとく私に絡んでくるようになった。
授業の班分け、クラス委員、休み時間、お昼ご飯まで。
入園後の大事なスタートダッシュで大コケさせられたようなものだ。
これじゃ、女の子の友達が1人も出来無いし、マリアを虐めにも行けない。
 ”ムカムカ”

遂に、私は堪忍袋の緒が切れてしまった。
「もう、なんでよ!なんで私について来るのよ!」
「それは、・・・貴女が”紅炎の戦乙女”なんだろ? 私と勝負してほしい。」
「い、や、よ! 私は、貴方みたいに逃げている人は嫌いなの。」
「なんだと! 俺のどこが逃げているって言うんだ! むしろ追いかけているだろ。」
(ストーカーの逆切れ? メッキが剥がれて本性が出ていますわよ。)
「だって、勝負したいなら普通はアレンになるよね。 入園式で恥をかかされたと思ってるんでしょ?」
「ち、違う。あの時は悪かったよ。すまない。
 けど、アレンじゃない。 あいつの魔力は確かに凄い。
 凄いが、俺が求めているのとは違うんだ。」
「じゃあ、何が違うのよ?」
「武力! 純粋な武力だ! 白兵戦だ! なぁ、あんたもそうなんだろ? 力が全てと思ってるんだろ?」
「思って無いわよ! しかも何よ! 女の子に向かって筋肉バカみたいに。」
「違うのか?(シュン⤵)」
 明らかにランバートは気落ちしてしまった。
「俺は、魔法はダメなんだ。何か違う気がして・・・。
 何ていうか?卑怯?と言うか、卑怯では無いんだが・・・。
 あんたなら分かってくれると思ったんだがな。」
さらに、がっかりするランバート。
(こいつを更生させるのは私の役目なの? 本当に? マリアじゃなくて? 仕方がない・・・)
「分かったわよ。 言っておくけど魔力も武力の内よ。何をしても最後に立っている者が勝なのよ。私はそう思っているわ。」
「え!?」テンションが上がるランバート。カサンドラ男前!とでも思っているのだろうか?
「その代わり、明日の早朝にクリスティン家に1人で来なさい。」
「お、おう、分かった。絶対行くよ。」
「最初で最後。人に対して全力で相手してあげるわ。」
「え? それはどう言う意味だ?」
「その言葉通りよ。それとね。ストーカーは止めなさい。 ちゃんとまともな女の子を選びなさいね。 貴方は、普通にしてればそこそこなんだから、ね。」
「・・・・。」ガッツポーズを取って、こいつ最後まで聞いてないな。

~~~~~~~~~~~~~~~~

~クリスティン家 庭園内広場~

翌朝
今朝の私は、魔道具の小瓶を使わなかった。
ランバートの目を覚ますにはこれしか無いと思った。
”全力でコテンパンにやっつけてやるわ!”
あの馬鹿は、逃げて、逃げて、魔法から逃げて、腕力だけに頼っている。
本当は、シナリオの中でマリアが導くのだろうけど、現実を目の前にすると、マリアがこいつを選ぶことはないなと悟ってしまった。
仕方ない、ここは悪役令嬢の出番ね。
カサンドラは、日本刀を横目で見つつ木刀を手にした。
”うん”と気合を入れると、久々に魔力が潤沢なため、全身に力が漲り薄く光を放つ。

~~~~~~~~~~

「約束通り一人で来たわね。」
「あゝ、それより、そんな薄っぺらい格好で良いのか?」
カサンドラの体からうっすらと光が放たれ衣服が透けて見えている。
ドキッとするランバート。
「良いわよ。どうせ勝負は一瞬で着くし。」
「凄い自信だな。しかも木刀かよ。一応言っておくが、俺は大人にも負けたことないぜ。そんな木刀くらい簡単にへし折ってしまうぞ。」
「知ってるわよ。(ゲームでね。しかもその中途半端な自信で拗らせちゃうのよ。)貴方が逃げないで、ちゃんと自分と向き合っていれば勇者になれたのに。本当、馬鹿!」
「はぁ?、何言ってやがる。分けわからん。さっさと始めようぜ!」

ランバートが言い終える前にカサンドラは呪文を唱え始める。
「マキシマイズ・マジック(魔法強化魔法)、
 フル・ポテンシャル(身体強化魔法)、
 プロテクション・スクルト(上位防御魔法)、
 マキシマイズ・アーマー(武器強化魔法)」
すると、カサンドラの全身は光のオーラに包まれた。
そして、ニヤリと不敵に笑う。

~~~~~~~~~~~

遠くで二人の様子を見守るアレン。
いつでも飛び出せるように高速化魔法を使っている。
カサンドラの事は分っているつもりだ。全て計算通りなのだろう。
けれど、放っておくことなど出来ない。
もしもの時こそ自分の出番だ。

~~~~~~~~~~~~

ランバートは、そんなカサンドラの姿を見て焦りを感じる。
(こ、こんな魔法があったのか。彼女こそ最強なのではないか?)
そんな不安を振り払うかの様に己に言い聞かす。
「はったりだ! そんなもんで俺を倒せるものか!」
ランバートは、渾身の力を込め、剣をカサンドラに振り降ろす。
”バ イ ー ン”  ~ ”ドスン” 
カサンドラは微動だにせず、木刀で剣をはじき返した。
すると、ランバートはその威力に押され、吹っ飛ばされてしまったのだ。
驚くランバート。
一瞬で力量の差を悟った様だ。
「こ、こんなはずでは、俺の15年の生き様は・・・俺のこれまでの訓練の日々は・・・」
涙さえ滲ませるランバート。

「本当、馬鹿ね。魔法を甘く見過ぎよ。強化魔法くらい覚えなさいよ!」
カサンドラにはじかれた腕が痺れている。
ランバートはやっと理解した。
陰と陽、光と影、男と女、この世の表裏一体のもの。
片方だけでは成り立たない。
今さら気付いた。
いや気付かされた。魔法と言うもう一方の武力を。
「クソ! それでも俺は!・・・俺にも意地がある。」
奥義、これしか無い。もう名誉もくそもどうでも良い。
血の滲む努力をしてようやく習得した父譲りの奥義。

「貴方のそういうところ。治しなさいよね!
(ゲームでは、)聖女に振られたからって意固地なって、馬鹿みたいに一人で魔王軍に突っ込んで行って討ち死に。そんなの名誉の戦死でもなんでもないわ! 貴方なら勇者にもなれたのに! そうすれば、みんなを救えたのに!」
シナリオでは、ランバートさえ覚醒すれば、誰も傷つかずにハッピーエンドを迎えられたかもしれないのに。
腹立たしさのために感情的になってしまったカサンドラ。
「な、何言ってんだ。さっぱり分からん。勇者も何も関係ない。俺の奥義でぶっ倒してやるよ!」
「そんなものではブラック・グリズリーすら倒せないわよ。」
カサンドラは、木刀を構え直す。
そして・・・、”魔法剣”
カサンドラの腕から炎が湧き出し木刀を覆う。
「見せてあげるわ。これでブラック・グリズリーを真っ二つにしたのよ。13歳の時にね。」

二人の気が高まった瞬間、そのシルエットが激突する。
 《アレンが飛び出すが間に合わない。》
”奥義ランバート・ブレード!” (ダサい名称)
しかし、ランバートの剣は虚しく空を切る。
”ファイヤー・ブレード” カサンドラの怒号が飛ぶ!
木刀は振り降ろされ、ランバートの脳天に・・・、と思われたが、
その瞬間、木刀は焼失しボロボロと崩れていった。
へなへなと尻もちを付くランバート。
 《飛び出したは良いが中途半端になってしまったアレン。》
「本当馬鹿ね。 いいこと! ちゃんと魔法も身に着けるのよ!」
「わ、分かった。分かったよ。カサンドラ。」
 「呼び捨て!」なぜか突っ込むアレン。
「そうすれば勇者に成れるわ、貴方は・・・多分ね。」

「「多分かよ!」」

うふっ「そして、世界とヒロインを救って。」
「任せろ!」ここ一番の笑顔を見せるランバート
何かが吹っ切れたようだ。

魔法剣の木刀が崩れ去り、行き場の無くなった火炎がカサンドラを包む。
燃え上がる炎の中で満足そうに微笑むカサンドラ。
ランバート
「・・・これが、紅炎の戦乙女か! まじで・・・綺麗だな。」
アレン
「まずい、これ、まずいやつだ。」

消炎の煙の中から一糸まとわぬカサンドラが姿を表す。
ランバート
「おおー! 」
アレン
「お前は見るな! こら! 目を潰れ!」
それでも凝視するランバート。
そして、鼻を手で抑え始める。

「もう良いわよ、今さら。見られて減るもんじゃ無いし。」
なぜか堂々としているカサンドラ。

アレン
「増えるんだよ! また一人!」
「 ? 」
不思議がるカサンドラにリカバリー(修復魔法)をかけるアレンであった。
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