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入園の日 前編
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ついに今日と言う日が来た。
王立学園入園の日
いよいよ、乙女ゲーム『5人の聖騎士と悲愛の魔王』が始まる。
馬車を降りるとアレンがエスコートしてくれる。
私は、ジークフリート王太子に頂いた傘(日傘兼用)をおもむろに開く。
アレンは、嫌そうに「それ要るの?」と尋ねて来た。
「それはそう思うよね。 毎日お庭で剣の鍛錬しているのだから、今さらこれくらいの日差しなんてね。」
「じゃー、なんで?」
「う~ん。雰囲気?」
まさか、ジーク殿下との約束で傘を差しているとは言えない。
「ねぇ、それより可愛いと思わない? 私には似合ってないかもだけど。」
「いや、そんな事はないけど、日傘を差している生徒なんていないんじゃないかな?」
「それもそうね。・・・(くそっ、ジーク殿下め)
目立っちゃいそうね。これって悪役令嬢の悪目立ちになるのかしら。(はぁ↘)」
「アクヤクレイジョ?・・・」
アレンには悪役令嬢の意味が分からなかったようだ。
私は、視線を学園に向ける。
う~ん、流石は王立学園、門前に立つとその広大な敷地と手入れされた施設が分かる。前世の有名私立学園に引けを取らない。
街路樹に沿い、二人で校門から校舎へ歩いて行く。
うん。めちゃくちゃ目立っている。
只でさえ、超美形、魔獣退治の英雄アレンにエスコートされているのに、羞恥心で心が折れそう。
程なくすると、
「待っていたよキャシー! 私だ!」
と聞き慣れた声がする。
やはり、入園式には来るわよね。重要なイベントだもの。
でも私の所では無く、ヒロインの所へ行ってもらわなければ、せっかくの出会いイベントが台無しに・・・。
「う、ジークフリート・・・さま。 今日は、生徒会の役割で忙しいのでは?」
「少しだけ抜けて来たよ。 だって、今日はキャシーの入園式だろ。 婚約者である私がエスコートしなければね!」
「しー!」小声で(それ、言わない約束ですよね。)
「あゝ、勿論だとも! さあ、アレンここまでご苦労、ここからは代ろうか?」
「ちっ、」
ニコニコ顔のジークは言う。
「分かってるだろ?ほら、何かと目立っているから早く代りなさい。」
小声で(でないと大声で”大切な婚約者”と言いますよ。)
眉間に皺を寄せながらも、アレンは苦笑いで私の手をジーク殿下に渡す。
「傘を差させたのも?」とアレンは睨みながら言う。
(いや相手は王太子殿下だからね。その態度と言葉遣いはどうなの? 不敬では?)
「もちろんそうだよ。キャシーが僕のものだって目印にね?」
そこで、ふと背後から物凄い圧を感じる。
「ジークフリート殿下。令嬢をもの呼ばわりは感心しませんよ。」
アレンは、溜息交じりに呟く。
「貴方も来たのですか⤵」
ジーク
「やあ、オクティ、今日は何の用事なのかな? 確か数日前に卒業したのではなかったかな?」
「今日は来賓代表で出席させられるのですよ。 知っているでしょう!」
「あゝ、そうだったね。」と、わざとらしく手を叩く。
もう駄目だ。この三人がいるからめっちゃ目立っている。
登園中の生徒の視線が痛い。痛い過ぎるわ。
これでは、ヒロインと聖騎士候補たちとの劇的な出会いの場面が台無しだ。
そうこうしていると、不意に爽やかな風とともに花びらが舞い出した。
(こ、これは! はじまる! 出会いイベント!)
急に神々しい光がある方向から射して来る。
ま、眩しい・・・。
目を細めて見ると、学園の並木道を・・・もぞもぞ歩く主人公であるヒロイン!
マリアンナ・・・愛称 ”マリア”!
ん? なぜ、”もぞもぞ”、しかも端っこを歩く?
こうしては居られない。
私は、やかましい三人を放置し、マリアの方へ駆け寄った。
「貴女、駄目よそんな端っこにいては、それにね、背筋を伸ばして!
ほら、今日は記念すべきオープニングイベ・・・じゃなかった、入園式の日だから!
ね。こっちに行きましょ!」
「あ、あの申し訳ありません。 え~と・・・どちら様ですか?」
「あゝ、私ったら御免なさい。不躾でしたね。それにまだ名乗って無かったわね。
私は、カサンドラ・クリスティン。キャシーと呼んでね。
それよりね、早くこちらへ!」
私は、少々焦っていた。
早く3人の内の誰かと・・・もう誰でもいいから接触させなければ。
「え! いえいえそんな。 カサンドラ様。
私は、マリアンナと申します。 その・・・、平民なので苗字はありません。
ですから、高名なクリスティン家のご令嬢にお声を掛けていただける様な者ではありません。」
「もう、そんなことは良いから。それよりほら、こっちに来て皆に挨拶しましょう。」
多少ぎこちないが、これでも出会いイベントがないよりは”まし”だ。
私は、順に目を向けながら、王子枠のジーク様、宰相枠のオクティ様、最強魔術師のアレン。
(もう、早くしないとオープニングイベントが~。早く誰かを選んで! マリア!)
訳も分からず、ただ”もじもじ”するだけのマリア。
気持ちは分かるけど、急にイケメン3人の前に連れて来られても困るわよね。
でもね。でもね。オープニングなのよ!
「え、ええ~。 無理です。無理です。 許してください。」
うう~、これではイベントが台無しに・・・。
困ってしまい、固まる私にマリアは
「あの、カサンドラ様は、あの ”紅炎の戦乙女” なのですよね? 街の武器屋さんに聞いたのです。」
「「「「「「「「「「「「「「「 え! 」」」」」」」」」」」」」」」
”戦乙女”という言葉に、登園中の全生徒が一斉にこちらへ振り向く。
私は青くなりながら
「ダメ、それ禁句、言っちゃあ駄目。ね。マリア、良い子だから。」
すると、マリアは急に”パ~”と明るい表情となり”やっぱり!”
「私、憧れていたんです。お会いできて光栄です。
お声も掛けていただいて!とてもとても嬉しいです。」
周りのざわつきが尋常ではなくなって行く。
私は、堪らずマリアの手を取って校舎に逃げるように入って行った。
う~、マリアってばめっちゃ可愛いけど、空気読んで~。
マリアは子犬の様に飛び跳ねている。(こんなキャラじゃないよね。ゲームでは?)
可愛いから私は好きだけど。
もう出会いイベントは諦めて・・・とにかく次は入園式ね。
登園時に出会った人が、大きく好感度を上げるのだけど、これって、どうなるのだろう?
こんなので出会ったって言えるのかな?
~マリア目線~
今日は憧れのカサンドラ様とお知り合いになれた。
噂通りとても綺麗な人だ。
想像していたよりも気さくで少し驚いたけれども、平民の私に声をかけて下さるなんて感激!
これから一緒に学園生活を送れるのかと思うと嬉しくなる。
もっと仲良くなれるかしら?・・・なりたいな。
王立学園入園の日
いよいよ、乙女ゲーム『5人の聖騎士と悲愛の魔王』が始まる。
馬車を降りるとアレンがエスコートしてくれる。
私は、ジークフリート王太子に頂いた傘(日傘兼用)をおもむろに開く。
アレンは、嫌そうに「それ要るの?」と尋ねて来た。
「それはそう思うよね。 毎日お庭で剣の鍛錬しているのだから、今さらこれくらいの日差しなんてね。」
「じゃー、なんで?」
「う~ん。雰囲気?」
まさか、ジーク殿下との約束で傘を差しているとは言えない。
「ねぇ、それより可愛いと思わない? 私には似合ってないかもだけど。」
「いや、そんな事はないけど、日傘を差している生徒なんていないんじゃないかな?」
「それもそうね。・・・(くそっ、ジーク殿下め)
目立っちゃいそうね。これって悪役令嬢の悪目立ちになるのかしら。(はぁ↘)」
「アクヤクレイジョ?・・・」
アレンには悪役令嬢の意味が分からなかったようだ。
私は、視線を学園に向ける。
う~ん、流石は王立学園、門前に立つとその広大な敷地と手入れされた施設が分かる。前世の有名私立学園に引けを取らない。
街路樹に沿い、二人で校門から校舎へ歩いて行く。
うん。めちゃくちゃ目立っている。
只でさえ、超美形、魔獣退治の英雄アレンにエスコートされているのに、羞恥心で心が折れそう。
程なくすると、
「待っていたよキャシー! 私だ!」
と聞き慣れた声がする。
やはり、入園式には来るわよね。重要なイベントだもの。
でも私の所では無く、ヒロインの所へ行ってもらわなければ、せっかくの出会いイベントが台無しに・・・。
「う、ジークフリート・・・さま。 今日は、生徒会の役割で忙しいのでは?」
「少しだけ抜けて来たよ。 だって、今日はキャシーの入園式だろ。 婚約者である私がエスコートしなければね!」
「しー!」小声で(それ、言わない約束ですよね。)
「あゝ、勿論だとも! さあ、アレンここまでご苦労、ここからは代ろうか?」
「ちっ、」
ニコニコ顔のジークは言う。
「分かってるだろ?ほら、何かと目立っているから早く代りなさい。」
小声で(でないと大声で”大切な婚約者”と言いますよ。)
眉間に皺を寄せながらも、アレンは苦笑いで私の手をジーク殿下に渡す。
「傘を差させたのも?」とアレンは睨みながら言う。
(いや相手は王太子殿下だからね。その態度と言葉遣いはどうなの? 不敬では?)
「もちろんそうだよ。キャシーが僕のものだって目印にね?」
そこで、ふと背後から物凄い圧を感じる。
「ジークフリート殿下。令嬢をもの呼ばわりは感心しませんよ。」
アレンは、溜息交じりに呟く。
「貴方も来たのですか⤵」
ジーク
「やあ、オクティ、今日は何の用事なのかな? 確か数日前に卒業したのではなかったかな?」
「今日は来賓代表で出席させられるのですよ。 知っているでしょう!」
「あゝ、そうだったね。」と、わざとらしく手を叩く。
もう駄目だ。この三人がいるからめっちゃ目立っている。
登園中の生徒の視線が痛い。痛い過ぎるわ。
これでは、ヒロインと聖騎士候補たちとの劇的な出会いの場面が台無しだ。
そうこうしていると、不意に爽やかな風とともに花びらが舞い出した。
(こ、これは! はじまる! 出会いイベント!)
急に神々しい光がある方向から射して来る。
ま、眩しい・・・。
目を細めて見ると、学園の並木道を・・・もぞもぞ歩く主人公であるヒロイン!
マリアンナ・・・愛称 ”マリア”!
ん? なぜ、”もぞもぞ”、しかも端っこを歩く?
こうしては居られない。
私は、やかましい三人を放置し、マリアの方へ駆け寄った。
「貴女、駄目よそんな端っこにいては、それにね、背筋を伸ばして!
ほら、今日は記念すべきオープニングイベ・・・じゃなかった、入園式の日だから!
ね。こっちに行きましょ!」
「あ、あの申し訳ありません。 え~と・・・どちら様ですか?」
「あゝ、私ったら御免なさい。不躾でしたね。それにまだ名乗って無かったわね。
私は、カサンドラ・クリスティン。キャシーと呼んでね。
それよりね、早くこちらへ!」
私は、少々焦っていた。
早く3人の内の誰かと・・・もう誰でもいいから接触させなければ。
「え! いえいえそんな。 カサンドラ様。
私は、マリアンナと申します。 その・・・、平民なので苗字はありません。
ですから、高名なクリスティン家のご令嬢にお声を掛けていただける様な者ではありません。」
「もう、そんなことは良いから。それよりほら、こっちに来て皆に挨拶しましょう。」
多少ぎこちないが、これでも出会いイベントがないよりは”まし”だ。
私は、順に目を向けながら、王子枠のジーク様、宰相枠のオクティ様、最強魔術師のアレン。
(もう、早くしないとオープニングイベントが~。早く誰かを選んで! マリア!)
訳も分からず、ただ”もじもじ”するだけのマリア。
気持ちは分かるけど、急にイケメン3人の前に連れて来られても困るわよね。
でもね。でもね。オープニングなのよ!
「え、ええ~。 無理です。無理です。 許してください。」
うう~、これではイベントが台無しに・・・。
困ってしまい、固まる私にマリアは
「あの、カサンドラ様は、あの ”紅炎の戦乙女” なのですよね? 街の武器屋さんに聞いたのです。」
「「「「「「「「「「「「「「「 え! 」」」」」」」」」」」」」」」
”戦乙女”という言葉に、登園中の全生徒が一斉にこちらへ振り向く。
私は青くなりながら
「ダメ、それ禁句、言っちゃあ駄目。ね。マリア、良い子だから。」
すると、マリアは急に”パ~”と明るい表情となり”やっぱり!”
「私、憧れていたんです。お会いできて光栄です。
お声も掛けていただいて!とてもとても嬉しいです。」
周りのざわつきが尋常ではなくなって行く。
私は、堪らずマリアの手を取って校舎に逃げるように入って行った。
う~、マリアってばめっちゃ可愛いけど、空気読んで~。
マリアは子犬の様に飛び跳ねている。(こんなキャラじゃないよね。ゲームでは?)
可愛いから私は好きだけど。
もう出会いイベントは諦めて・・・とにかく次は入園式ね。
登園時に出会った人が、大きく好感度を上げるのだけど、これって、どうなるのだろう?
こんなので出会ったって言えるのかな?
~マリア目線~
今日は憧れのカサンドラ様とお知り合いになれた。
噂通りとても綺麗な人だ。
想像していたよりも気さくで少し驚いたけれども、平民の私に声をかけて下さるなんて感激!
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