悪役令嬢は氷結の戦乙女

誕生日１ アレン編

～誕生日～

さて、私は数年前から誕生日でもパーティや豪奢なプレゼントは不要とお願いしている。
今年も、簡単な食事会だけで済ましてもらう。
（アレンは、凄く驚いてプレゼントの換わりに、午後から城下町へ連れて行ってくれる。）
お父様には、換わりにあるおねだりをした。
それは、　”魔道具”　　＝＞　屋敷が買えるほど高価な物・・・である。
アンティークな小瓶の様に見えるが、魔力を溜め込むことができる。
これから毎日この小瓶に魔力を注ぎ込むつもり。

～～そして午後～～
アレンと商店街へ
どこへでも連れて行ってくれると言うので、私は迷わず武器屋を選んだ。
だって、この前の魔獣討伐で私の剣は使えなくなってしまったから。
馬車を降り、二人で通りを歩き出すと、アレンが急に片肘をこちらに向けて来た。
「　？　」（なんのアピールだろう？）
気付かないふり。
今度は、「ん。」と言いながら、小突いて来た。
あゝ、腕を組めって事なのね。
この世界の家族はそうするものなのかな。
まあ、楽しいから良いことにしよう。
そおーと、アレンの腕に手を通す。
そうすると、アレンは満足そうにニコリと笑った。
しばらく歩いて、アレンが目星をつけていた武器屋に入る。
さすがに色々ある。
防具は私には必要ない。
目指すは剣のみ。
まぁ、剣でも聖剣エクスカリバーとかは要らない。
そういう凄いのは勇者のものだ。
そう言えば、ゲームの勇者は伏線だけで出番無く終わった。
この世界では勇者の登場はあるのかな？
とか考えていると、　
”あった！”
私に訴えて来る剣。
思わず手に取ってみる。
ある程度の重さと長めの刀心。
これぞ　”ザ・日本刀”　この店でも一際異彩を放っている。
「これよ。これにするわ！」
満面の笑みのカサンドラに、アレンはちょっと嫌な顔で、
「え！　これ？　何かちょっと形が違うな・・・。」
「ううん、これなの、これは　”日本刀”　と言って凄いものなのよ。絶対これにするわ。」
するとやって来た店主が、
「へー、それは日本刀って言うのか。ま、買ってくれるなら安くしておくよ。」
とノリノリで言った。明らかに剣とは違う形状から買い手がつかなかった様だ。
「本当！　嬉しい！」
「ええ～！　もしかしてお嬢ちゃんが使うのかい？」
「　そうよ！　」
アレンが慌てて二人の会話に割って入る。
「いやいや。も、もちろん飾りさ。壁に飾るんだよ。うん、店主、これに決めた。」
「はい？　ありがとうございます。ところで、お代の方は・・・」
アレンはクリスティン家の家紋を見せた。若僧と侮られたような気がしたからだ。
「こ、これはクリスティン侯爵家の・・・紋。すると、このお嬢様は・・・まさか、紅炎の戦乙女・・・様？」
「おい店主、そんなわけないだろう。な！　な！　ほら、これで払うから、　な！　な！　」
アレンは、黙って受け取れと言わんばかりに店主に金貨を渡した。
まさか、カサンドラがここまで有名になっているとは・・・。
アレンは軽率な自分の行動を後悔した。
「は、はい、分かりました。　今後ともよろしくお願い申し上げます。」
（本物だ！間違いない。まさか、あんな綺麗なお嬢様が紅炎の戦乙女とは！）

その後、店先には『紅炎の戦乙女来店』との貼り紙がなされた。

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二人は再びストリートを散策する。
「ねえ、あそこのカフェに行かない？」
「そうだね。夕食に差し支えない程度なら・・・。」
「ふふっ、嬉しい。」
カサンドラにしては珍しくご機嫌だ。
アレンもつい嬉しくなってしまう。
女性にはやはり笑っていて欲しいと思う。・・・・・特に好きな娘には。