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聖騎士候補は疑聖女を論ずる。
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~王城 王太子の部屋~
ジークフリート目線
「ご苦労だったなオクティ。さっそくだが辺境地で何があったのか聞かせてくれ。」
「先に送った報告書の通りさ。」
オクティビアは素気なく答えた。
「散策の途中で偶然出会った魔獣を退治した。それを信じろと・・・。」
「嘘はついていない。」
ジークは少しあきれた様に問う。
「分かった。では、これだけは教えて欲しい。 ”紅炎の戦乙女”とは誰なんだ?」
「ふっ、耳が早いですな。」
オクティビアは言い淀む。口止めはしていたが、王家の諜報部を遮ることは出来なかったようだ。
「私が自ら行けば良かったと思わせないでほしい。・・・オクティ。」
「行かせる訳がありません。魔獣が出たのですよ、幻の魔獣ブラック・グリズリーが!
王太子の貴方が現場に行くなどあってはなりません。」
「オクティ・・・私とお前の仲だ。さっさと白状したらどうかな?」
ジークは、オクティビアの肩をポンポンと叩いて、力を抜くように促した。
幼馴染であり親友であるジークフリートの言葉に、そもそも抗うことは出来ない。
やっと、オクティビア普段の砕けた調子で話出す。
「うむ。だが知らない方が良いこともある。良いんだな?」
黙って頷くジークフリート。
「カサンドラ嬢だ。・・・彼女がほぼ一人で魔獣を殲滅したのだ。」
「なっ!・・・そんな事はあり得ない。」
さすがのジークフリートも驚きを隠せない。
「我々は無力だった。彼女の指示が無ければ魔法も唱えられないほどにな。」
「まさか! 公爵家の精鋭5人が無力など。」
「それ程の力の差があったのさ。それに、彼女には力や技術だけでは無い”何か”がある。」
「ほう、その”何か”とは?」
「これはあくまで私の推測だが・・・、彼女の力は”聖なる力”ではないかと考えている。」
「”聖なる力”・・・つまり、カサンドラ嬢は聖女だと。・・・まさか。」
ジークフリートは、突拍子もない話と受け取り、驚きを隠せない。
「彼女は、3年前に急に人が変わったそうだ。
それまでの我儘、傲慢な言動が改まり、優しく勤勉な人柄になった。
そして厳しい鍛練をはじめたそうだ。何か神託の様なものがあったのかもしれない。
それに、魔獣が出現したのはクリスティン領だ。いち早くそれを察知し、並外れた力で討伐したのだ。
こう考えれば合点がいく。単なる偶然とは思えない。」
「いやいやいやいや、少し早計ではないか?
例えば、聖女の力は戦闘向きではないはずだ。
むしろ、その力は”癒やしの力”と文献には記されている。」
「その点も考慮した。彼女は自分を弱いと言っている。これほどの力を示しておいて。
おそらく、勇者や魔王など戦闘特化の者と比べての話ではないか。
それに、聖女くらいになると、一般人より遥かに強い戦闘力があるのだろう。」
「済まない。思考が追いつかない。」
ジークは目頭を抑えるポーズを取った。
「カサンドラ嬢について何か思い当たる節はないか?」
「・・・ある。【回想】 "私の魔力はこのプランター程度のもの"」
「やはりな。彼女は、戦闘向きでは無いと自覚しつつ、魔獣に突っ込んで行く様な戦い方をしているのだ。」
ジークは立ち上がり語気を強めた。
「ならば何も迷う事はない。直ぐに彼女を迎えに行かなくては!王家の名の下に庇護するべきだ。」
オクティビアは、首を何度も振り
「駄目だ駄目だ。魔獣討伐に彼女の力は欠かせない。
もし、彼女がいなければ我々は全滅していただろう。
そして、町の一つや二つは無残にも食い荒らされていたかもしれない。」
「ではどうすれば良いんだ。」
「だから、聞かない方が良いと・・・・。
彼女を囲いの中に閉じ込めてしまうのは愚策だ。かと言って魔獣と戦わせる訳にもいかない。
ところで、お茶会で彼女は他に何か言っていなかったか?」
「・・・私を、聖女とともに在るに相応しいと。」
ジークは少し誇らしげに言った。
「それは、聖騎士のことを指しているのかもな。」
「伝説の聖騎士ならば、彼女を守る事が出来る。(そうだ!私が聖騎士となり傍にいれば、彼女を危険に晒すようなことは絶対にしない。では、オクティのこの態度はどうしたのか?)」
「オクティ、君はカサンドラ嬢から魔力について何も言われなかったのか?」
「言われたさ。私の魔力は淀んでいたそうだ。」
ピクリとするジーク。
「ほう。それで?」
オクティビアは少し頬を赤らめながらも、「特に話すべきことは無かった。」と素っ気なく答えた。
ジークは、ほぼ直感的に(あったんだな。)と悟った。
さては、オクティビアの淀みを清めたのか・・・・聖なる力か、それとも。
ジークフリート目線
「ご苦労だったなオクティ。さっそくだが辺境地で何があったのか聞かせてくれ。」
「先に送った報告書の通りさ。」
オクティビアは素気なく答えた。
「散策の途中で偶然出会った魔獣を退治した。それを信じろと・・・。」
「嘘はついていない。」
ジークは少しあきれた様に問う。
「分かった。では、これだけは教えて欲しい。 ”紅炎の戦乙女”とは誰なんだ?」
「ふっ、耳が早いですな。」
オクティビアは言い淀む。口止めはしていたが、王家の諜報部を遮ることは出来なかったようだ。
「私が自ら行けば良かったと思わせないでほしい。・・・オクティ。」
「行かせる訳がありません。魔獣が出たのですよ、幻の魔獣ブラック・グリズリーが!
王太子の貴方が現場に行くなどあってはなりません。」
「オクティ・・・私とお前の仲だ。さっさと白状したらどうかな?」
ジークは、オクティビアの肩をポンポンと叩いて、力を抜くように促した。
幼馴染であり親友であるジークフリートの言葉に、そもそも抗うことは出来ない。
やっと、オクティビア普段の砕けた調子で話出す。
「うむ。だが知らない方が良いこともある。良いんだな?」
黙って頷くジークフリート。
「カサンドラ嬢だ。・・・彼女がほぼ一人で魔獣を殲滅したのだ。」
「なっ!・・・そんな事はあり得ない。」
さすがのジークフリートも驚きを隠せない。
「我々は無力だった。彼女の指示が無ければ魔法も唱えられないほどにな。」
「まさか! 公爵家の精鋭5人が無力など。」
「それ程の力の差があったのさ。それに、彼女には力や技術だけでは無い”何か”がある。」
「ほう、その”何か”とは?」
「これはあくまで私の推測だが・・・、彼女の力は”聖なる力”ではないかと考えている。」
「”聖なる力”・・・つまり、カサンドラ嬢は聖女だと。・・・まさか。」
ジークフリートは、突拍子もない話と受け取り、驚きを隠せない。
「彼女は、3年前に急に人が変わったそうだ。
それまでの我儘、傲慢な言動が改まり、優しく勤勉な人柄になった。
そして厳しい鍛練をはじめたそうだ。何か神託の様なものがあったのかもしれない。
それに、魔獣が出現したのはクリスティン領だ。いち早くそれを察知し、並外れた力で討伐したのだ。
こう考えれば合点がいく。単なる偶然とは思えない。」
「いやいやいやいや、少し早計ではないか?
例えば、聖女の力は戦闘向きではないはずだ。
むしろ、その力は”癒やしの力”と文献には記されている。」
「その点も考慮した。彼女は自分を弱いと言っている。これほどの力を示しておいて。
おそらく、勇者や魔王など戦闘特化の者と比べての話ではないか。
それに、聖女くらいになると、一般人より遥かに強い戦闘力があるのだろう。」
「済まない。思考が追いつかない。」
ジークは目頭を抑えるポーズを取った。
「カサンドラ嬢について何か思い当たる節はないか?」
「・・・ある。【回想】 "私の魔力はこのプランター程度のもの"」
「やはりな。彼女は、戦闘向きでは無いと自覚しつつ、魔獣に突っ込んで行く様な戦い方をしているのだ。」
ジークは立ち上がり語気を強めた。
「ならば何も迷う事はない。直ぐに彼女を迎えに行かなくては!王家の名の下に庇護するべきだ。」
オクティビアは、首を何度も振り
「駄目だ駄目だ。魔獣討伐に彼女の力は欠かせない。
もし、彼女がいなければ我々は全滅していただろう。
そして、町の一つや二つは無残にも食い荒らされていたかもしれない。」
「ではどうすれば良いんだ。」
「だから、聞かない方が良いと・・・・。
彼女を囲いの中に閉じ込めてしまうのは愚策だ。かと言って魔獣と戦わせる訳にもいかない。
ところで、お茶会で彼女は他に何か言っていなかったか?」
「・・・私を、聖女とともに在るに相応しいと。」
ジークは少し誇らしげに言った。
「それは、聖騎士のことを指しているのかもな。」
「伝説の聖騎士ならば、彼女を守る事が出来る。(そうだ!私が聖騎士となり傍にいれば、彼女を危険に晒すようなことは絶対にしない。では、オクティのこの態度はどうしたのか?)」
「オクティ、君はカサンドラ嬢から魔力について何も言われなかったのか?」
「言われたさ。私の魔力は淀んでいたそうだ。」
ピクリとするジーク。
「ほう。それで?」
オクティビアは少し頬を赤らめながらも、「特に話すべきことは無かった。」と素っ気なく答えた。
ジークは、ほぼ直感的に(あったんだな。)と悟った。
さては、オクティビアの淀みを清めたのか・・・・聖なる力か、それとも。
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