悪役令嬢は氷結の戦乙女

marumarumary

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お茶会は二次面接

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~お茶会の日・再び王城・中央庭園テラス~

「本日はお招きいただき恐悦至極に存じます。殿下にはご健し・・・」
私は、王太子ジークフリートに丁寧に淑女の礼をとった。

「堅苦しい挨拶は、それくらいで良いよ。 さぁ、こちらへカサンドラ嬢。
キャシーと呼んでも?」
「はい? 殿下、それはどのようにお答えすれば・・・」
  ・・・いくら何でも愛称呼びは早すぎるよね?
「困らせてしまったかな。 まあ良い。 さあ座って」
「はい、ありがとうございます。それで、他の方々は何処に・・・」
ジーク殿下に招き入れられ、私はそそくさと着席した。

「我々二人だけだよ? 何なら給仕達も下がらせようか?」
「え! いえ、その、、、結構でございます。」
ど、ど、ど、どう言うこと? 二人きり?
王太子殿下は、なんかいつもとテンションが違う。

「では、いただこうか。」
勧められて紅茶を飲んでみる。
「あ、美味しい。」
香りも上品で、それでいて優しい味だ。
一瞬、自分の置かれている状況が頭から抜け落ち、思わずほっこりしてしまう。
ほっこりしてテーブルを見ると、様々なスイーツが並んでいる。
これはクッキーかな。焼き菓子系もいただこう。
前世からクッキーとかサブレは大好きなんだ。男だったけどさ・・・。
ふふふっ、美味しい。 お茶会って意外と楽しいかも。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「キャシーは、どんなものに興味があるのかな?」
・・・・キャシー呼びは確定なんだ。
「はい。当面はパワーアップですね。パワー不足は否めないので。」
「パワー? パワーとは何かな?」
魔力とかも含めて戦闘力と言う意味で使ったのだけれど、それだとちょっと令嬢らしくないよね。
ここは、簡単にジーク殿下の ”パワー” = 魔力を測らしてもらいましょうか!
そうすれば、自ずとパワーなるものを分かって貰えることでしょう。

「あの、失礼ですがお手をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ。」(初心な様に見えて、キャシーは意外と積極的なのかな。)

差し出された手を両手で包み込み、軽く魔力を流してみる。
私の得意な魔力探知だ。

力強く、暖かく、そして少し憂いを帯びた魔力が流れて来る。
うっとりする様な透き通った魔力だ。
「・・・素晴らしい魔力ですゎ。」
流石は王太子、そして乙女ゲームの王道ヒーローと言うべき人物なだけある。
魔力だけではなく、その手は大きく、柔軟であり、それでいて剣だこでゴツゴツしており、強く男を感じさせる。
くそ、私では全く足元にも及ばない。
いったいどんな鍛錬を詰めばこれだけのパワーが得られるのだろう。
つまらない嫉妬で少し落ち込む。
「キャシー、その・・・パワーとは魔力のことかい? それで何が分かったのかな?」
「ジークフリート殿下、貴方様はもの凄く努力を重ねて来られたのですね。」
しみじみと感心して言ってしまった。
「うん? それは物心付いた時から王族として、その・・・」
(僕は一体何を言おうとしているんだ。急に照れくさくなってしまった。)

「私は、自分が恥ずかしいです。自分だけが特別なんだと、どこかで勘違いしていました。
 ジークフリート殿下と比べると・・・いえ、ご無礼をお許しください。比べること自体が不敬でした。」

私はそっと手を放す。

ところが、その手をジーク殿下が引き留めて握り返して来た。
「どうかしたのですか、何かあったのですか?」
握り締められた手は大きく暖かい。劣等感から言葉に詰まる。
早く何か言わなくては、
「・・・・・・・・。」
「君の魔法のことは聞いているよ。見事なものだと。」
「いえ、あんなのはほんの子供騙しです。こつさえ掴めば誰にでも・・・」
「無詠唱は子供騙しではないよ。 高等技術であり、1級魔術師の一部の者にしかできないはずだよ。」
「そういう次元ではないのです。 そう、例えるなら殿下の魔力がこの美しい庭園とすれば、私の魔力はこの目の前のプランターくらいに見劣りするものなのです。」

「なんだか分からないけれど褒めてくれているんだよね?」
「勿論です。来るべき時には聖女とともにあらせられる方だと思います。」
「聖女? あの伝説の?」
「あっ、いえその・・・伝説級のお力かと。」
「ふふっ、嬉しいことを言ってくれるね。でもさすがにそれは言い過ぎだよ。
 仮に僕の力が伝説級だとしても、キャシーだって何も恥じることはないんじゃないか。
 僕は、このプランターの花も美しいと思うし、現にこの魔力探知の力は充分に有用だと思うよ。」
 
ジーク殿下は私を慰めてくれているのだろうか。
「ありがとうございます。今後も気を緩めず精進を続けます。」
「えっと、そうするとこれまでも・・・弛まぬ努力をしてきたと?」
「はい、勿論です。家に戻って一から鍛え直します!」
「え、もう帰るのかい?・・・・最後に一つ聞かせて欲しい。
 先日の舞踏会で貴女をエスコートしていた彼・・・グレゴリー家の彼とはどういう関係なのかな?」
「ああ、アレンですね。関係?・・・は、一族の者ですゎ。遠い昔に分家した・・・」
さらに言葉を続けるような目線を投げられる。
「敢えて言うなら、(義)弟の様な者ですかね?数か月、先に私が生まれましたので。」

私が答え終わるや否や、急に王太子殿下はご機嫌になった。
「弟! あははっ、それは良い! 弟か!」
「?」
と首を傾げて見せる。

アレンを我が侯爵家に養子に入れるのが?王太子殿下にとってそんなに愉快なことなの?
シナリオの強制力なのかしら。こんなに楽しそうに笑って。

「では、この話は進めておくよ。良いねキャシー?」
「はい? その・・・(アレンの)将来に関わることですので、一度父とも相談しなくてわ。」
なんでそんな大事なことを私に聞くのよ。

「ああ、そうだね。つい逸ってしまったね。ごめんよ。
 この場で直ぐにと言うつもりはないよ。侯爵には私からも話を通しておくからね。」
「はい・・・あの、もちろん、王太子殿下の意向に背くような事はないとは思いますけど・・・。」

~~~~~~~~~~~~

最後は訳が分からなかったが、私は逃げるように帰った。

アレンにはもちろん良いことだ。
王太子と言う強力な後ろ盾を得るのだから・・・。
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