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シ ロ ガ タ 事 件
しおりを挟む20○○年。○月21日。
○都 M区 ○○分子科学研究所。
AM4:32。
特殊非常事態セキュリティシステムが発報。
職員二名が意識不明との連絡。
駆け着けた管理職員、警察官、警備会社隊員が施設を破壊しながら移動する白い粘土質状の異様な物体を確認。
研究所備え付けの最終防疫手段によって対象物体を凍結、回収。施設を一時封鎖。
確保された物体は総量不明。目視による目測でドラム缶一本分程度。重量のデータ不明。
二日前に同研究所に持ち込まれた不明物質サンプルと酷似しているとの発表。
物体は某機関によって回収済み。
その他の異変。
異変のあった施設内の時計が全て、その施設外の時計と比べて三分四十秒間もれなく遅れているズレが生じていた。
20○○年。○月24日。
事件より三日後。
AM 11:10。
○都 M区 ○○分子科学研究所第三分所。
所内の屋内ほぼ全てが○○分子科学研究所に発生した白い異様物体で埋め尽くされているとの通報。
施設は閉鎖。
近隣住民の避難を開始。
異様物体は殆ど動かず、沈黙を守っている。
施設の外観からは、割れた窓より膨れた餅のようなものが跳び出ているのが所々散見される。
政府は特異性物災害警報を発令し、対策本部を設置。
分所の警戒警備を警察から専門対応部隊へ委譲。
分所では分割された不明物質のサンプルと、新たに発見されたキネイニウムと呼称される物質も扱っていた。
PM 13:21。
物体が移動を開始。
東側非常口より外部へ流出を確認。
先端と思われる部分にはカタツムリの目のような突起が十本ほど突出しているのが確認出来る。
物体は対応分隊の威嚇射撃に反応。
迅速的速度で地面を滑るように移動を開始。
銃撃が行われるも効果無し。
凍結性装備も効果無し。
すぐに屋外へ全総量が流出し、物体は形状を自在に変化させつつ市街を破壊しながら移動。
分量、あるいは質量は増大し続けている模様。増大、増殖の原理は不明。
物体の移動被害における家屋、ビル損壊五十六棟。車両十八台損壊。犠牲者七十二名。
巨大生物の認定を前に物体は活動停止。
活動停止の原因は不明。
物体は総量を減少。最終的に5t程を残して縮小。
物体の内部には遺体十六名が巻き込まれていた。行方不明者無し。
物体の減少が停止した原因は、残留遺体により“詰まった„為と推定。
まるで見えない排水溝に吸い込まれて行くようだった。と語る目撃者の所持品の時計関係に、再び誤差が生じているのを調査官が確認。
物体はもれなく某機関によって回収済み。
事件は地下より出現した巨大生物災害として発表。
後に生物構造化学的見地から、物体が極めてキネイニウムと関連性の高い細胞模倣体の集合体である研究結果が出るも公開されず。
後記
“生き鉱脈„の在処について多方面の情報筋にコンタクトを取り続けた結果。T女史との面会が実現した。
貪欲に各方面から力を吸収しつつあるこちらとしては、異空鉱の利権は誰よりも先駆けてなんとしても得なければならない。
先んじよ
我々のモットーは時代の変化に流されない。
根継桁 昌士
※先日、某k研究所から押収されたファイルより一部抜粋、修正して掲載しました。
この文章はフィクションです。
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