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合神!超思重合想!!
生きる化石
しおりを挟むアンバーニオンを退けたギバドは、薄暗い海底で静かに踞っていた。
しかしその静けさには覇気を纏った渇望や脅迫的な衝動が混ざり、その居心地の悪さはあらゆる生物達を周囲に寄せ付ける事を許さないでいた。
そんなテリトリーに突然縫い込んで来た噴射の音。
ユーラティスからやって来た琥珀のミサイルは、ギバドへの攻撃が目的では無い。
先行したアンバーニオン達への宝甲補給を行う為に駆け付けたそのミサイルの光点を、ギバドは少しだけ視線を上げて一睨みする。
ドッ!ギュボッッッッ!!
元々高い水圧に、もうひと押ししただけの力。
ギバドの羽根から伸びた波動の牙は、いとも容易くミサイルを破片に変える。
爆発して砕けた琥珀の燐光は海中の僅かな光を乱反射して、ギバドを挑発するように閃いた。
ギバドがその光景に片目を歪ませて憤るだけだったのは、未だに自身を縛っている体内の最終封印を消化出来ていないからであった。
「宝甲弾···ロストしました···」
ユーラティスのブリッジで報告を上げたハグスファンの声に、重い沈黙が纏わり付く。そんな緊急発進中の活気を冷やした打ち水を再び温め直したのは、レミレタによるアンバーニオン健在の知らせだった。
「!、T都内でアンバーニオン墜落を確認、先程の光線で吹き飛ばされた模様です!|NOI Zは不明の要神の保護に成功!撤退完了との事!」
「と!都内まで?!!飛ばされたァ?!」
「レミレタよ!宇 留達は?!」
「現在情報収集中!」
ゴライゴ艦長は怪訝な表情になりながらも、コンソールで巨大な琥珀のインカムのチャンネルを調整する。
「ぬぅ、その件については【ヤツ】の動きも含め、判明し次第緊急報告をくれ!ワシは今から少々、共上のと共に重拳隊の皆と交渉してくるでな?作戦区域到着までには戻るゆえ、それまで宜しく頼む···」
「ア「ィムアム」」
レミレタとハグスファンの微妙にタイミングがずれた了承を残し、艦長席が轟音と共に下降してゆく。
そして次にクルー達の目を奪ったのは、一瞬にしてユーラティスの下方から海上を突き抜け飛び立って行くガルンシュタエン ティアザとゼレクトロンの背中だった。
「みんな···ウルちゃん、ヒメちゃん···ゲルナイド···」
ユーラティスの警護の為、晶叉同様琥珀柱神に直接搭乗しているコティアーシュが仲間達の名前を呼び終える頃、二機の後ろ姿はもう小さくなっていた。
「【アンバーニオン】は無事だってさ」
「···はぁ!良かった!」
ゼレクトロンの操玉で椎山の報告を聴いた藍罠は、取り敢えず安堵した。
「しかし藍罠?まだ彼らが無事かどうかは···」
「アンバーニオンって分かる位、原型を留めてるんだったなら、きっと大丈夫ッスよ!」
「?···んぁ!ああ!そだな?!」
「···」
無理矢理納得して更に加速するゼレクトロンとガルンシュタエン ティアザ。すると意外な気遣いが藍罠の横腹をつついた。
「···(会議で聞きたかったんじゃないのか?白無貌の事を?)」
ガルンシュタエン ティアザを操るエシュタガは、言葉で口に出した上で想文も用いて藍罠達にチャンネルした。
藍罠は驚きつつも同じ要領でエシュタガに返す。
「(こ、こんな時にいきなりなんだよ!)」
「(モヤられたまま強敵に挑まれてもらっても、こちらが迷惑なのでな?)」
「な!···今度はそんなヤベェ奴が相手だってのかよ!」
「時間が無い。だが簡単にだが説明してやらん事も無い、まぁ最も、俺の情報も正確なものでは無いかもしれんが?···キネイニウムの事はもう勿論知っているな?」
「ああ、アノ帝国の機体の基本装甲素材?」
「特定の次元内部を満たす、特殊な完全単一物質···」
「···」
椎山の補足にエシュタガは微笑した。どうやら説明の手間が省けると踏んだようだ。
「あの白無貌の正体、俺は今まで、キネイニウム製兵器の細分化結合機能を応用した生物らしいモノへの擬態とばかり思っていた···」
「意外と帝国の戦士への情報提供、雑なんだよなぁ、あすこ」
「今の皇帝ナニガシのボディ、あの魔獣入り琥珀の中身か···」
「···一度、噂だけだが聞いた事がある。ただ単に完全単一物質空間と言っても、キネイニウムの正確な純度は100パーセントはおろか99パーセントにも満たない事があると···」
「?···どういう事だ?完璧なひとつの世界に他のモン···不純物がある···って事か?」
「勿論こちらの世界からアプローチをかけて、異空間への扉が開いた。こちらの世界と繋がった以上、不純物は観測されて当たり前なのだが、どうもソレとは違うらしい。あるというより···」
「あった?」
「帝国にある都市伝説さ···最初に試掘されたキネイニウムの一部が、無加工にも関わらず勝手に動き出したというんだ」
「勝手に?···それって、生きてるモンって事か?」
「呼び名は多々あった。生き鉱脈、キネイアニマ···あるいは、シロガタ···などな?」
「シロガタ!?」
それは藍罠を長く縛ってきた鎖のような言葉。やはりあの白無貌は、かつて藍罠兄妹の両親の命を奪った怪獣、シロガタの仲間であるというのだろうか?
「···どうして教えてくれるんだ?」
「?」
大人としての険が取れた藍罠の声。
いつか知った藍罠の経歴を思い返し、鑑みたエシュタガは、戸惑いを隠して返答する。
「···仲間としての役目は、一応果たすさ。···ヒヨルなよ?」
「!!なっ!!、誰がっ!!」
「!、気を付けろ!!もう、サガミの谷の真上だぞ!!」
「!!」
ザシュァァァァァァ!!
その時、
海面を割って、巨大な壁が二面突き上がった。
「なんじゃこりゃ!!」
ゼレクトロンを急上昇させながら驚く藍罠。良く見るとその巨大な壁は、所々コウモリの翼のように骨張っている。横方向へ翔び退けたガルンシュタエン ティアザもそれに気付いた。
「これはッ!?羽根か?!!」
巨大な壁、もといギバドの羽根の先端部分。
そこが上下二つに割れ、口のようになった部分から簡単な牙が突出する。
キャコオオオオオオオンン!
キォォォオォォオンンンン!
ギバドの両翼が変化した怪物が二体。
ゼレクトロンとガルンシュタエン ティアザを、大声で威嚇した。
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