神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

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合神!超思重合想!!

琥珀の騎士

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 宇留の父、須舞 春名が経営する都内のローカルスーパー、マイス。

 まだ早朝であるにも関わらず、パートやアルバイト達は慌ただしく通路を行き交い、商品の搬入口では軽めのゲキさえ飛んでいた。
 店内のイートインコーナーには店長の春名をはじめとした正社員達が集い、慣れない赤スカーフを首元に四苦八苦しながら巻きつつミーティング開始を待っている。
 全員がどうにか一通りスカーフを巻き終え、春名の挨拶と共にミーティングがスタートした。そこで改めて春名から語られたのは、今回の早朝開店の理由だった。

「···えー、昨日連絡した予定通り、都内他店の例に漏れず、緊急事態という事でここに今ある商品はほぼ全部!行政に買い上げてもらいました!。全国的に非常時という事で、今回お客様、もとい避難民の皆様に商品をお配りするという形になり、普段とは毛色の違う作業となりますが···」

 ほぼ徹夜で準備していた春名のテンションはやや低い。
 そしてその春名も含め、家族への心配を振り切ってこの非常時営業に参加している従業員の表情も険しかった。

 !

 ···春名の挨拶が終わろうかという時、雷のような閃光と共に突如上空から吹き降りた突風が、ミシリと店舗外壁を軋ませた。ついで数名のスタッフが叫び声を上げる。
 異変を予感した全員が窓の外に視線を向けた、その時···。


 ズダァァァァァァァァンン!!

 まだガラ空きの駐車場に、巨人が降って来た。
 巻き込まれた人や車は居ない。舗装は所々砕け、意外にも店舗のガラスには殆どヒビが入っていない。どうやら落下直前の突風は、着地の衝撃を和らげる為のワンクッションだったようだ。春名の憶測によれば、そんな事が出来る存在は限られている。大慌てで外に駆け付ける春名と従業員一同。治まりつつある土煙から、キラリと琥珀色が光る。
「ア、アンバーニオン!」
 マイスの駐車場には、全身の琥珀宝甲アーマーにヒビが入ったアンバーニオンが仰向けで倒れていた。
 
 春名は思わず宇留むすこの名前を叫びそうになった。宇留の秘密を守ってやりたいという気持ちと、プリミティブな親心がせめぎ合って大声が喉に詰まる。
「こ、国防隊に連絡してきます!」
 パニックに陥りそうになりながらも、店内に戻って行く従業員達とは逆に、数歩づつアンバーニオンに近付く春名。

    ···と、父さん···

「!」
 アンバーニオンから響く宇留の掠れた声。
 幸いか否か、周囲のざわめきに紛れたその声は、春名くらいにしか分からなかった。


 
 その頃、同じ区内にある避難所でも、上空の閃光と近所への落下物に対する動揺が広がっていた。

「マイスの方だ···!」
 寝起きのラフな私服で立ち尽くしている磨瑠香は、轟音が響いた方向を食い入るように見つめている。
 ただなんとなく、出来る事を探して。せめて避難所に居る同級生なかまたちを探しに来た矢先の出来事だった。

 ···アンバーニオン軍!出動!

 心の中でそう叫んだ磨瑠香は、ポケットからヘアゴムを取り出すと、いつも通り後ろ髪を後頭部で束ねながら、小走りでマイスに向かって走り出した。
 
 


 春名は恐る恐る、アンバーニオンの体表に触れてみた。
 ギリギリ火傷しない程度の熱さ、琥珀の巨神にして息子の愛機。
 ヒビ割れた宝甲からは、脈動と共になにか波動のようなものが溢れて、春名の指先を撫でた。

 ごめん!駐車場が!!

「!」
 今度はハッキリと、耳元で宇留の声が聞こえた。耳の奥がムズ痒い。鼓膜が直接震えたのだ。
 春名はアンバーニオンの能力に驚きつつも、顔を少し宝甲に寄せて言葉を返す。
「心配すんな!よくピンポイントで帰って来たな?ここでよかったんだぜ?宇留!」
 春名は一呼吸置いて続ける。
「またケンカして帰って来たな?上等!上等!!ちょっと休んでけ休んでけ!!」

「店長ぉ!」
「!」
 会話を遮り、春名は後ろから呼び止められた。春名は何事も無かったかのように振り向き、アンバーニオンから離れる。その指先だけがピンと動き、【マタアトデ】と宇留へシークレットサインを送っていた。


 朦朧としている宇留は、その所為か寂しそうに現状対応へ戻った父の背中を見送る。
 そして次にロルトノクの琥珀アンバーを手に取った。かろうじて感じる温もりだけが、ヒメナの生存を示しているのが救いだった。
 だがギバドの一撃を食らう前から、まだヒメナは目を覚まさない。ヒメナに今何が起こっているのかもまだ把握出来ない中、冷静に考えればサガミの谷からT都まで、かなりの距離を弾き飛ばされた事になる。
 アンバーニオンは防御力を使い切ったのか、ボロボロだがかろうじて原型を留めている有り様だった。
 そのフィードバックなのか非常に眠い。ユーラティスと通信したいのに、脳内にあるアプリのようなものが立ち上がらないかのようなもどかしさ。
 焦る宇留。早くギバドの対応をしなければならないのに···!

 パチン!

 宇留の耳元で指が鳴った。
 途端に気を失い、操玉コックピットの中にうつぶせで浮かぶ宇留。
 その表情はヒメナと共にとても安らかで、完全に眠っていた。


 アンバーニオンの周りに野次馬が集まり出した。
 そしてその光景を近隣のビルの屋上から眺める影。

 琥珀で出来たシンプルな西洋甲冑を纏ったその琥珀騎士は、今鳴らしたばかりの指先をマントの中に隠して翻し、朝焼けの中に消えていった。

 
 

 




 

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