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合神!超思重合想!!
掘出物
しおりを挟む等身大のNOI Zがユーラティスの上を飛び跳ね、艦首方向へ急ぐ。
〔すまんな?では偵察頼んだぞ?二人とも!〕
「はいっ!!」
NOI Zはゴライゴ艦長への返答と共に気合いを足に込め、より高く跳躍する。そして艦首衝角の根元に着地する瞬間、足の裏を紫電のクッションが受け止めた。
バシュィィイッッッ!!!
クッションはNOI Zを足裏から前方へと弾き出し、長い艦首衝角の上を伝い彼を【発射】した。
NOI Z発進完了。
黒い風のような疑似黒宝甲がその航跡を迅速に追随し結合、巨大なNOI Zが組み上がっていく。
続けてアンバーニオン。
対してアンバーニオンは、ユーラティス下部の【泉】入り口からポイッ!と呆気無く放り出されたのみ。
「?」
操玉内で一瞬怪訝な顔をする宇留。
宇留はアンバーニオンを海中で加速させ、海中から目的地を目指す。
口にこそ出さなかったが、宇留は何かに納得がいかないようだ。
「不満そうね?」
「?!」
宇留の背後からポッと肩を叩いて現れたのは、いつの間にかアンバーニオンに乗り込んでいた土地神、丘越 折子だった。
「丘越さん!?」
「やっぱり来てたのね?存在を強く感じてた!」
宇留とヒメナに驚かれ、ふふ、と相変わらず優しい笑顔を返す折子。
「このフネの起動お疲れ様。ちょっとお仕事手伝うわね?」
「え!?じゃあアッカや音出さんも来てるんですか?」
「ええ、宇留?まぁ、あのコ達は私と違ってもう少しかかるでしょうけど?」
「かかる?」
疑問でヒメナの首が傾く。
アッカは開かないはずのチャンバー内で一匹、猫集会モード。暗くて良く見えないが、超巨大な虎の目だけが奥で彼を見つめている。
輝く鳥の姿になった音出はというと、無限に続く仮想の朝焼け空間を超高速で飛んでいた。数十キロ先を飛ぶ大翼の主にまだどうしても追い付けないのだ。
どうやら折子だけが、【試練】をクリアしたらしい。
「えっと···?」
「さぁ宇留、急ぎましょう?、···聴こえる?ゲルナイドくん?行き先は鍋子じゃなくて···」
事情を訊ねる宇留を遮り、折子は現にコンタクトを取る。彼らの行き先は、連絡の取れないヌシサマの祠があるC県の鍋子ではなく、K県の沖合いだった。
「ぐ!ぁあ!あ!あ!」
「く!ぅあ、ぐ!」
「ぅう!あぐ!」
サガミの谷。直上の海底。
龍神の姿になったヌシサマと、そのお供である猫仮面巫女二人。
彼らは赤黒いエネルギーの鎖に全身を縛られ、意識が朦朧とした状態で海中を漂っている。
シヅメはその光景を呆れたように見つめながら、ボリボリと後頭部を手で掻きながら呟いた。
「ふふふ、アンタラ土地神の夢の嘆きは、必ず【アレ】をここまで押し上げるエサになる。はからずも、最強の掘り出し物には最悪の掘り出し物をぶつけるって形になるのさ?ふっふっふ···」
さて、もうそろそろ撤退しましょうか?シヅメ?
「?」
シヅメの脳内に響くクイスランの想文。シヅメは泥煙を上げる海底に目配せする。
「そうだなぁ?ぼちぼち、色々勘違いされたら困るものなぁ?」
そうね?それに壊した百数個目の埋設廟に違和感があったわ?恐らく私達のような悪戯目的探知用のダミーの祠。周辺の土地神に動きが知られたかもしれないし、何より、アレが閉じ込められていた地底湖は環境や対策や汚染や閉鎖生態系やらの蠱毒状態。正直とばっちりは御免こうむるわね?
「おーコワ!コノヒトタチがどうなるか想像もしたくねーな?···しかし人間達の永きに渡る埋め立ての努力がこうも簡単に海の藻屑と消える事になろうとは残念。さすがの俺も心中察しちゃうよ?」
ギュズズ······。
ゆっくりと後退り、ヌシサマ達を置き去り海の闇に消えて行くシヅメ達。そんな彼らに手を伸ばすように、海底を底から微震が突き上げた。
「居た!!!」
海底の赤黒い星を目指し、NOI Zが海中を猛進する。
大きくなってくるヌシサマ達のシルエット。現が初めて見る巨大な龍神の形態。
すると折子達の声が、背後からNOI Zを呼び止めた。
〔〔そのエネルギー縛に近寄っちゃダメ!〕〕
「!」
その場で急停止して振り返るNOI Zの脇を縫って、アンバーニオンが突撃する。
ドッ!!!
逆手持ちの慈龍剣バジークアライズの束が、ヌシサマを拘束していたエネルギーの縄を直接、一度突き叩く。
すると一瞬にして赤黒い縄が霧散して、ヌシサマ達は解放された。
「···あのコ···こんな業に命を掛けるなんて···!」
ヒメナに宿った折子はアンバーニオン越しに、クイスランの壊れたトラップに複雑な感情を向ける。
〔ヌシサマ!ヌシサマッ!!どうして!だれが!?何でこんなっ!!?〕
NOI Zは、意識が戻らないヌシサマを抱き抱え死活監視を行った。
アンバーニオンは慈龍剣を背中にマウントし、同じく目を覚まさない二体の猫仮面龍神を両腕で抱えつつNOI Zの様子を見る。
〔アラワルくん!取り敢えず皆さんを安全な所へ!!〕
〔はっ!ぁ!ああ!!そうだな!!?〕
バヅンンン!!
「!!」
耳元で板を割ったような轟音。
怖じ気、この暗い海よりも濃い、インクのプールに飛び込んだような絶望感。気が付けば、周囲の海水が渦を巻き始めている。アンバーニオンもNOI Zも、自然と渦の中心から距離を置いていた。
「なんっ、?!」「これは???!」
「そんな!!···いけない!···宇留、ゲルナイド、今すぐヌシサマ達を連れてここを離れて!!早く!」
折子が撤退を進言する。宇留も現も、その提案に素直に従った。
踵を返し、水中で超加速するアンバーニオン達。
何かが目を覚ました。
纏わりつく不安に目を細めた折子は、最古辺から引っ張り出した記憶に基づき、この現象を引き起こしている根元の名を読み上げる。
「···ギ バ ド···!」
「!」「?」
ギャゴオオオオオオオォォォ!!
「!」
海底を割るかのように響く恐ろしい咆哮。
折子は名指しに返答されてしまったのではと、撤退中も気が気ではなかった。
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