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合神!超思重合想!!
足踏ペアリング
しおりを挟む夕闇を見送った海上を進むユーラティス。
主琥珀球の両脇に一基づつ設置された巣穴から延々無限に伸びていたカミイソメとカミカマスの多節胴が、まるで焦っているかのようにガションガションと轟音を立てて引き込まれていく。
やがて両機の多節胴だけが完全に収容され、残った先端の男神と女神柱だけが、静かに其処に鎮座した。
「わー遅刻だー!いっそげ急げー!」
ここは守護神柱搭乗専用極安定転送エレベータールーム。
カミイソメから転送されて実体化したコティアーシュは、魔方陣のような彫刻が刻まれた琥珀の床材を蹴って円柱形の部屋を飛び出した。
コの字型のルートの反対側にはカミカマスの転送エレベーターがあるはず···。コティアーシュが期待しながら角を曲がると、ドンピシャ丁度のタイミングで晶叉も小走りで曲がって来た。
「アキサ!急ぎましょう!追佐和さん達が待ってます!」
「ああ!」
コティアーシュは出会い頭に左手を翳して晶叉とハイタッチする。そうして二人は、エレベータールームエリア中央から延びた廊下を曲がり、並んで歩き出した。
「まさか···非公式の合同部隊構想だったとは、中々面白そ···ん?」
晶叉はコティアーシュと足並みが揃っている事が気になった。
晶叉が右足を出すとコティアーシュも右足を前に出す。左足もなお同様だった。試しに少しタイミングをずらそうとしてみるも、そのフェイントのタイミングすらピッタリと追随されてしまう。
「えへ~、アキサの宝甲とリンクして運動機能と同期してまーす!」
「!」
驚いた晶叉がコティアーシュの顔を見ると、コティアーシュも晶叉の眼を見つめていた。一瞬で吸い込まれそうになる優しい眼差し。晶叉はその動揺を質問に変える。
「ど、どうして?」
「これから面白い事になるからでーす!」
コティアーシュは自走靴の出力を上げると、滑るように加速して晶叉を追い抜き走り去った。そして未だに足並みは同調している。晶叉は今見つめ合った時の動揺がコティアーシュにバレた気がしていたが、同様にコティアーシュの嬉しさのようなものを確実に感じた気もして、和んでしまうのを止められなかった。
その頃。藍罠が宛がわれたユーラティス内の待機自室。
琥珀のセミスイートルームにある琥珀の冷蔵庫をガパリと開けると、日本では見た事も無い銘柄のドリンクが各種揃っていた。
中でも藍罠の眼を引いたのは、外国産とおぼしき魅惑の缶ビール達···。
「嗚呼ッッ!!どうしようかなッ?一応任務中だしなっ?んんんッッ!そう言えば!体内の宝甲でアルコールの解毒ってまだ試してなかったナぁ?どうしようかなッ?試してみようかなぁ······?···!」
藍罠はそのまま冷蔵庫の扉を閉じる。その誘惑を一瞬にして掻き消す事が出来たのは、今同じ艦内で仕事を頑張っているであろう音出を強く感じていたからに他ならなかった。
状況がもう一段落ついてからにしよう。
その時にみんなで呑みたい。それまで楽しみにとっておこう···。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!ピーン············ポンッ!
「!」
藍罠が一人我慢する俺スゲーと思っていると、部屋の呼び鈴が大人げ無く連打された。藍罠は強山さん何故溜める?と思いながら返事をしてドアを開ける。悲しい程予想通り、椎山がそこに居た。まるで学生の合宿ノリである。
「藍罠ァァ!!風呂入ったか?!見て来いよ?スッッゲーぞぉ!琥珀の豪華大浴場だよ!いッやー!ホントまるで見慣れる事はないなァ!?」
「うおー!マジっすか!?」
「お!サンキュ!」
首にタオルを掛けた椎山は、炭酸水のミニボトルを藍罠から受け取った。
「でさー藍罠?このフネ!ショッピングモールもあるんだってさ!」
「ずああ!そんな施設まで?俺まだチェックして無かったんすよね?」
「でさ!今からちょっと探検して来ようと思うんだ!」
「えぇ~?さそってくんないんスかぁ?」
「イヤホラ!環巣さんとか、追佐和ちゃんとか来てるし一応さ···て藍罠?気を使ってるんだぜコレでも?」
「!!、ッデャッテッデャッテッデャッテぇ!!」
察してるぜと微笑む椎山に向かって、藍罠は分かりやすく手をワチャワチャさせて慌て惚気る。どうやら音出への気遣いが漏れ伝わってしまったらしい。
「じゃあ!使い方分かったら想文するよー!」
椎山は、事もあろうに手に持った炭酸水のミニボトルを頭上でブンブンと振り回しながら、噂のショッピングモールへ向かって行った。
「がうううぅ···!」
成る程、このユーラティスの自販機は体内の宝甲で認証して購入するシステムらしい。我々特別待遇は飲み放題。ありがたい話だ。
「がうううるるる!」
エシュタガ、背後に美少女。
怒ってる?波高し。
「がうううぃぉぉ!」
フッ···しょうがないコだな?振り向き詰め寄って壁ドン、顎に優しくクイッと指先を添えて瞳で宥めよう?
「ぉがううう!!早くして下さい!!!」
「え?!」
自販機で飲み物を選んでいたエシュタガは、凄まじい殺気に驚き振り向いた。
臀部を強靭な指先の力でつねられたかのような戦慄。
エシュタガが振り向いた視線の先とその下には、コティアーシュが立って彼を睨み上げていた。
(エシュタガ、声紋も一致、このコはあの時の···)
そうか!?、君は!!?
瞬間的な宝甲の認証。目前のコティアーシュという存在がどういう人物なのか、エシュタガとガルンは理解した。
「!?」
「がううう!早くして下さい!自販機でしか買えないお土産の焦げティーがあるんですっ!!それとこの間はよくも!」
それはついでなのか?
エシュタガとガルンは、かつて氷結島で邂逅した言葉を話す潜水艦と、目の前に居るコティアーシュが同一の存在であると認識した。
(もう顎クイッ済だったね?エシュタガ?そうか、蘇ってたんだね···コティアーシュ?)
「ぬぅ···!し、失礼?お嬢さん?お先にどうぞ?」
「がるるるる!!」
ピッ!!
順番を譲ってくれたエシュタガを横目で睨みながら、さも当たり前のようにボタンだけを押して焦げティーを購入するコティアーシュ。
ようやく追い付いた晶叉は、そんなコティアーシュ達を不思議そうに見つめていた。
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