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合神!超思重合想!!
追い騒ぐ
しおりを挟む〔これを付けて下さい〕
「?」
ユーラティスの駐機場で追佐和 鈴蘭がコハクルーから受け取ったのは、指先程の宝甲が付いた琥珀のネックレスだった。
大裂断はプッシュバック代わりのコハクジュウケン達によって、格納庫への収容作業が行われていた。
それを視界の隅に捉えつつ、鈴蘭は両手を後頭部へ回し、琥珀のネックレスのチェーンを繋げようとする。
チェーンの接続部はプラスチックのような質感でありながら、まるで磁石のようにピタリと引き合い、ロックの感覚を鈴蘭の指先に伝えた。
〔···え、エ~、オイサワ レイラさまの御客人登録が完了しました。これより先、そのコハクタグを取り外さないようお願い致します。もし外されますと、行動制限、鎮圧、及び独房への強制転送収容対象となりますのでお気をつけクダサイ〕
「えええ!独房があるんですかコノ戦艦?!なんか燃えるんですけど!」
〔ハ?!?〕
鈴蘭は眼をキラキラさせながら担当のコハクルーに詰め寄った。コハクルーは、注意事項に喜ぶ鈴蘭が理解出来ないでいるらしい。
「だってそうじゃないですか!ままならない現実と向き合って、宿敵への闘志を研ぎ澄ませるのにうってつけの場所と言えば···ぉっと!」
「ハイハイ、もう行くわよ」
「ど、ど~も~」
〔?〕
コハクタグを身に付け終えた等和田は、鈴蘭の首根っこを掴みズルズルと引き摺って行く。彼女らの後に続く丹理田は、コハクルーに頭を下げながら申し訳無さそうに腰を低くしている。
等和田のやや斜め後ろに追い付いた丹理田は、担当のコハクルーが次の持ち場に向かうのを見届けると、横でお人形さんのように引き摺られる鈴蘭に構わず等和田に話し掛けた。
「···しかしアレ大丈夫でしたかね?にじがね。先行するにしても近すぎでしょう?この琥珀戦艦の大きさならシゴセンメートルくらい離れてた方が良いような気もするんですけどねぇ?」
「うにゅう!」
引き摺られていた鈴蘭はヌルリと立ち上がり、直ちにキビキビ歩きを開始する。
「それなら大丈夫でしょう?このオフネは空も飛ぶのよ?非常識はかえって疑わない事ね···」
「あの?教官?音出さんは···?」
「あぁ!なんかみんな、別の用事があるみたいよ?」
「みんな???」
ユーラティス格納庫エリア。
開かずの第9チャンバー前。
その前に並んで立っているのは、丘越 折子、巨大猫アッカ、音出 深侑里。
何か思う事があるのか、全員は扉を睨んだまま、微動だにせず動かない······。
「おっちゃん、今ちょっといいですか?」
「おぉ?来たな?宇留よ?」
ユーラティスのメインオペレーションルームで細かい打ち合わせを重ねるオペレーター達。その面子に混ざって、ゴライゴ人型中枢活動体との会話をねじ込んだ宇留は、周りのクルー達にも聞こえるようにハキハキと言葉を弾ませる。
「コハクジュウケンのみんなの事なんだけど···?」
「やっぱり気にしておったか?、ホレ大方お主の事じゃから、あやつらがどうも突っ込み過ぎな件とかじゃろ?」
「わ!おっちゃんも気にしてたんだ!?うーん、なんかねぇ?その内自爆でもしに行きそうな勢いが気になっちゃって···」
「やはりの!?まぁじゃが、元々そのようなコンセプトありきの量産機なのかもしれんからの?···それに、コハクルー達が搭載式の思考ユニットである事から見ても···」
「うん···こんな、言い方は悪いかもだけど、比較的に動きがぎこちない所もちょっとあるし、そういう状態ってのもどうかな?って心配で···」
「フフ、さすがじゃ宇留よ!分かった!検討しよう!実はプランがあっての?···お!噂をすれば···」
「?」
「あ!宇留くんだ!」
「追佐和さん!?」
メインオペレーションルームにやって来たのは等和田、丹理田、そして鈴蘭。鈴蘭は眠ったように動かないゴライゴ艦長ことゴライゴ リパレギレムの巨体にビクビクしながらも、宇留達の元に近付いて来る。
「おし宇留よ!続きはまた!次の会議まで休んでおれ!遅れるでないぞ?」
「ハイッ!アイムアムっ!!」
「?あいむ?あむ?」
宇留はゴライゴと鈴蘭達に向けて、交互に敬礼をする。鈴蘭は聞き慣れない宇留の返礼にポカン?と困った。
お疲れ様ですと敬礼をしたままで去る宇留。鈴蘭は推しむ、いや、惜しむ表情に切り替えたままで、等和田達と一緒にゴライゴの前に並び立った。
「最終局面省の等和田です「丹理田です」···こちらは国防隊航空重翼隊から出向【した形となります】、追佐和 鈴蘭。大裂断のメインパイロットを務めています」
等和田の鋭い敬礼が巨漢のゴライゴに突き立つ。そしてゴライゴは握手の為に右手を差し出し、柔和な笑みを浮かべる。
「ようこそユーラティスへ、ワシは艦長のゴライゴ、方針を無視させるような話で悪かったの?」
「いえ、【我々】の意向でもあります。今回はお招き頂き恐縮です」
握手を交わす二人を見て、鈴蘭はまだ話がよく見えないといったような困った表情をしている。
と、とりあえず単純にな?私にこの戦艦所属で戦えって事カナ??
「ヒトワダ殿、もうすぐ案内役が戻る。その頃になればお席に導けよう!···さて、“お連れ„の方々は?」
「···すでに空かずの部屋へご挨拶に向かわれております」
「おおぉ!!」
「バビエルプレイスから特別拝領した特殊ロボットミーム開放キー、ギガミネンスライズが彼らに適用出来ればよいのですが···」
「ん?」
鈴蘭はシートの背もたれの向こうから、鼻の上だけを覗かせてこちらを見ている男性クルーの視線に気が付いた。
男性クルー、ハグスファンは、ヤベッとでも呟いたかのように身を屈め顔を引っ込めた。
にッヒィィィ!とイタズラっぽい笑顔になった鈴蘭は、ズカズカとハグスファンの席に歩み寄った。
「どーもダーリン!、こんな所でアウトは百年目ですねぇ?」
「は!?はぁ?ちょっとォ意味がぁ?」
背もたれを片手でガッと掴み、ハグスファンの横顔を覗き込むように凝視する鈴蘭。対するハグスファンは、視線をディスプレイに向けたまま鈴蘭と目も合わせようとしない。その光景を見てニコニコと嬉しそうな表情を浮かべるレミレタ。鈴蘭はそのまま更に顔を近付けてハグスファンをからかう。ハグスファンは嫌そうに体を反対方向に傾けてそれを避ける。
「フフン···」
プレッシャーをかけるのに満足した鈴蘭は顔を引いて背筋を伸ばした。
「···この戦艦が呉越同舟と言うのは理解しもうした!これからヨロシクぅダーリン!」
「くっ···!」
鈴蘭の表情は、どう見ても宜しくと思う人のそれでは無かった。
やがてレミレタのニコニコは他のクルー、等和田達やゴライゴにまで伝染していった。
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