神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

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合神!超思重合想!!

日火の色鋼

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 太陽の樹。神椚の枝。

 ムスアウ アーカイブはいつも通り、巨大過ぎる黒い枯れ枝の上を歩む。その枝はかつて、ムスアウ アーカイブが【訪問者B9GoT0094A】から受け取った剣のアクセサリーをうずめた枝であった。

 彼はふと立ち止まると、いきなり靴の爪先をヂンと枝の表面に突き立てた。
 その振動が枯れ枝の中を行き渡ると共に、一瞬だけ輝く根のシルエットが内側から表面を照らし、駆け抜けてはすぐに消える。
「···もう根を宿り張ったのか。これがオリジンアースの日火色ヒヒイロの鋼···!」
 
 ヅザザザザ······

 ムスアウ アーカイブの呟きに返答するかのように、神椚の黒い葉が一斉にざわめく。
 彼が立つ枯れ枝を称える為に集まったその音はまるで、岩礁に打ち寄せる荒波の残響に似ていた。






 超琥珀神艦ユーラティス。
 艦載琥珀巨神用チャンバー琥珀泉ドッグ

 ユーラティスの艦体下部に複数あるリング状のレリーフ。
 ゴライゴ艦長とハグスファンのゴーサインでレリーフに近付いたアンバーニオンをはじめとする琥珀の巨神軍団は、レリーフから下方に伸びたガイドライトに沿って、頭上の琥珀の泉に飛び込んだ。
 アンバーニオン、ガルンシュタエン ティアザ、ゼレクトロン、ロウズレオウ、NOI Zの収容が完了し、操珀パイロット達にも乗艦許可が出る。

「ねぇヒメナ?降りれるってよ?」
 宇留は、アンバーニオン素体ニー専用操珀サブシートから戻って来ないヒメナに語り掛けた。
〔ウリュ、疲れたでしょ?先に行ってていいよ?もーう···ちょっとかかるから。なんか少しユーラティス用に調整ソートしたいんだよね?〕
「大丈夫?手伝う?」
〔ウリュ目がなんかトロントロンしてるよ?テンションのせいでお疲れに気付かないパターンじゃない?だからホラホラ!行った行った!休んだ休んだ!〕
「ん!?ぅぇ?そ、そう?な、ならオコトバに甘えて···ヒメナも無理しないでね?八卦良い!」
〔残った残った!〕
 宇留は目を片方づつ擦りながら、ゆっくりと操玉コックピット背面の壁に溶け込んで行く。


「···ふぅ······」
 宇留を無事外部へと送り出したヒメナは、自身の肩を抱いて身震いする。
 恐怖心を伴う寒気。それは彼女にとって久しぶりの感覚だった。
 存在限界によるヒメナ消滅へのカウントダウンは確実に刻まれている。もしかすれば早まっている可能性さえあるのだ。
 しかしその時、苦悩を押し込めようとするヒメナの脳裏に、無音の稲妻のようなイメージが一瞬湧き立った。

「!」「!」「!」

 龍、 虎、 鳥。

 琥珀色の閃光を後光に、透かしの入った暗い焦げ茶色のシルエット。
「···?アンバーキメラ?いいえ?違う?!」
 三神獣の強いイメージは、覇気を漲らせ蠢いていた。ヒメナの不安は彼らに喰い千切られたかのように、いつの間にか鳴りを潜めている。宇留の言霊通り、今だけは八卦がよろしいようだ。
 




 琥珀の泉ドッグ上方の外周を円のように囲う琥珀の通路。
 その通路の途中に張り出た短い桟橋の上にある乗降用転送ポートに、宇留が閃光と耳鳴りを伴い実体化する。
「······ここ、が···」
 宇留は、照明が眩しいユーラティスのチャンバーエリアを見渡した。
 ほぼ全ての建材が琥珀宝甲で構成されたエリア。琥珀の泉が多数並ぶその異様は、宇留がいつかテレビで見た原子炉プールを彷彿とさせる。
「おおぉ!」
 琥珀の手摺から身を乗り出して泉を覗き込めば、透明度の高いオレンジ色の琥珀の中に、アンバーニオンのシルエットがしっかりと見えた。
 聞こえて来た話し声に頭を上げる。隣の泉からも続々と操珀パイロット達が降りて来たようで、アンバーニオンの隣の泉、おそらくゼレクトロンが搭載されたであろう泉の転送ポートには、実体化した藍罠ヨキトとマーベラス強山(仮名)の姿があった。遠くから宇留に気付き、おーい!と無邪気にヤンヤヤンヤと両手を振る彼らの元には、パイロットケアラーと思しきコハクルーが数体集いつつあり、また宇留の元へもコハクルー達が訪れようとしているのも見える。
「おっと!来たキタって?···ん??」
 視線を琥珀の通路に戻した宇留は、目の前に落ちていた何かを発見し拾い上げた。床にこぼれ固まったペンキのような形をした大きめの宝甲こはく
 宇留がそれをまじまじと眺めていると、下半身が一輪車のコハクルーが宇留の元を訪れ、琥珀のトングをカチカチと鳴らしながら宇留に話し掛けてきた。
〔やースイマセン宇留サマ!我がユーラティスは再起動したばかりで、まだまだお掃除が行き届いておりませんもので!そのような劣化宝甲は後程弾頭に再利用致しますので、お手数ですがこちらにお預け頂けますでしょうか?〕
 言うや否や、コハクルーは上半身の向きだけをクルリと変え、背中に背負った琥珀の編みカゴをズイッと宇留の方に向けた。
「······」
 だが宇留は宝甲の塊を見つめたまま、何か考え事をしている。塊は劣化しているとはいえ琥珀としても透明度が高く、そのままでも何か価値がありそうな見た目である。
〔?、宇留サマ?〕
 首をかしげるコハクルーに、宇留はニコッと微笑み掛けた。
「···ねぇ?もし構わないなら、これ貰っていい?」
〔え?は、はァ、構いませんが?〕
「よっしゃ!ありがとう!工作室と道具とかも後で借りれるかなぁ?」
〔あ!ハイ!畏まりました。我々で宇留サマのご要望を共有しておきますので、その際はお近くの我々にでもお気軽にお伝え下さい!〕

「うょーし!」

 宝甲の塊をゲットした宇留は、何やら企んでいる。
 再び上半身の前後を入れ替えたコハクルーは、宇留の意図がまだ読めず、暫く首を傾げたままであった。







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