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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!
イメージ通り
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足が痛いのです。
これはいつか聞いた誰かの物語と同じ。
人間の姿になったばかりの私が走るのはこれが最初。データの水槽や琥珀の操玉に浮かんでいるだけとは違う、とても懐かしい感覚。人の喉で紡ぐあなたの名前。データに変換しないで直接目で見るあなたの姿。色々企んでいたけどやっぱりダメでした。観測不能の100分の0.1%がとても小さいのにとても大きすぎて···これが素直。···言葉にも出来ないもの。これが私の、私だけの、思いの丈。
「···とと!わ!」
元気に走るコティアーシュの背中を追い風が押した。
風に煽られただけで途端に覚束なくなった足下を庇い、その腕は頼るものを探す。
結局コティアーシュの額は、そのまま晶叉の鳩尾目掛けてグシッと埋まるように飛び込んだ。
「っと!···だ、大丈夫か?」
日頃の鍛練に加え、さらに宝甲で強化された熱く固い服越しの胸板はその強い抱擁を難なく受け止め、晶叉の戸惑いとは真逆の優秀なパフォーマンスを発揮する。
「···コティ···アーシュ!?」
よく知った声。カミカマスの宝甲を通して感じていた激しい一体感。しかし予想だにしていなかった人型中枢活動体姿のコティアーシュに晶叉は驚いている。
「はい!···アキサ!」
今にも咽び泣きそうになっている瞳を上げるコティアーシュ。
その時その横顔をパッと照らしたのは、にじがねが打ち上げた信号弾。重深艦隊が戦闘状況終了を告げる合図だった。気が付けばつい数秒前まで辺りに満ちていた戦乱の気配は鳴りを潜めている。そして今目の前にあるのは、ずっとおとぎ話の中だけの出来事と思っていた奇跡的な温もりだけ。
「っとてへ、く、か、かわわ···!」
“大変長らくお待たせ致しました。この度、この超琥珀神艦の力で人間体のデバイスに入ってみたのです。どうですか?アキサ。かわいいですか?„
定型文を作ったハズなのに言葉が出て来ないもどかしさ、気恥ずかしさ。
いつ以来ぶりかの生物的な曖昧ささえ、コティアーシュには新鮮な感触。
「可愛いかどうかなんて···イメージ通りだよ。全く···素晴らしいな?コティアーシュは···」
「!───────」
コティアーシュの両肩に優しく手を添えて少しだけ引き離した晶叉は、そんな言い淀みからも意図だけを掬い取った。言葉も想文も使わない、気が合うという事実、受け入れられているという自信。熱い視線を交えたまま耳まで真っ赤になったコティアーシュという波は、再び晶叉の懐目掛けて打ち寄せる事になった。
〔いいじゃないか!戦い終わって映画のラストシーンみたいで!〕
ロウズレオウは腕を組み、コティアーシュ達の抱擁に感激している。
〔ふくぁ···ハまれ、せーひゅんひジィ···〕
共上の声に次いで、スフィが欠伸を堪えるような声で文句を言う。
〔よかった···!コティアーシュ姉ちゃん···〕
「ふゅえ~!」
落ち着き払ったNOI Zの隣、アンバーニオンの中の宇留は大きな溜め息をつく。
「ウリュもお疲れ!」
「うん、ありがとう···みんなも、どうもありがとう。···なんか凄いね?なんかやっと、琥珀の戦士って感じがする」
〔ははは!おいおい!そりゃ今更だぜセンパイ!?〕
ゼレクトロンを通して藍罠がツッコミを入れる。
〔ゴライゴ閣下、こちらも戦闘終了でよろしいか?〕
ユーラティスの艦首天獣像にガルンシュタエン ティアザが話し掛けると、像はギャグ漫画のようにわざとらしくビクンと跳ねた。続けて慌てふためくブリッジからの音声が流れて来る。
ザガザッ!ポヒーン!
〔うぅおっっ!とっと!!スマンスマン!!ちょっと皆で見とれとったわい!そうじゃの!全艦警戒体制に移行!琥珀巨神にはすぐユーラティスの琥珀の泉を用意する故、メンテ待機じゃ!···コリャ!泣くなハグスファン!!後始末やらナンやらまだまだ先は長いぞ?!〕
アンバーニオン達との通信を終えたゴライゴ艦長は、勝利の喜びにざわめくブリッジの中で天を向き少し息を吐いた。
「!」
頭上の天窓モニターに映る夕方の青空には、大裂断が猛禽類のように旋回している。
「来たか?···どれ、忙しくなるぞぃ」
ゴライゴ艦長は視線を前方に戻すと、モニター越しに艦首に並んだ七体の琥珀の巨神と、はしゃぐ若者達を頼もしそうに眺めた。
ユーラティス格納庫エリア。
開かずの第9チャンバー前。
その扉の前を作業用のリニアカーで偶然通り掛かったコハクルーは、突然聞こえた唸り声の為に運転操作を誤り、壁に衝突してしまった。
グゴァアアアアアアア······
ヴァクルルルル······
ヴコココココ······
「!─────」
少なくとも、二~三体以上の圧倒的な迫力を持つ怪物達の声。
第9チャンバーはユーラティスの格納庫の中でも、比較的広い面積を持つと推定されている。コハクルーはそんな巨大なハッチの前でそそくさとリニアカーを復旧させると、傷の付いた壁面の自己修復を見届ける事もせず、アンバーニオン達を受け入れる為の琥珀の泉起動作業に向かって逃げるように立ち去って行った。
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