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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!
ファイナルレイデン
しおりを挟む「多く出過ぎましたな?これ以上は現世への希求を元に何をするものやら」
嗄れているが腰の座った老人の声。溶接面に似たマスクを被ったエンジニアの一人が呟く。
報告に切迫感をあえて含まないのは、皇帝であるエグジガンの意を阻害しない為の配慮である。
アルオスゴロノ帝国の居城。
エガルカノル内、玉座の間。
エギデガイジュⅡに座したエグジガンは只黙って眼を閉じている。
先程呟いたエンジニアはそれを特に気に掛けるでもなく、アンバーニオン達と戦っている白無貌のモニター作業へと戻った。しかし端末に表示されたデータを見てもう一度エグジガンの方を振り向いたその時、今度はエグジガンが眼を閉じたままで口を開く。
「城の神経にやや汚染を感じる。ヤツめ、琥珀巨神の光を弾く際に下心を出したな?···エスケープフープを落ち着かせろ、スタッフの【枝】を払って混ざらんように手を打て、アレはまだ自由過ぎて敵わん」
指示を出しながら眼を開けたエグジガンは、宙に浮かぶ立体映像のひとつに注目した。映像にはアンバーニオンを中心に陣を組む琥珀の巨神達の姿が映っていた。エグジガンがコメントをする前に、今度は別のエンジニアがアンバーニオン達を揶揄する。
「意外と学ばん奴らだ。もうアレの正体と能力に気付いただろうに!」
「琥珀の海虫どもが突っ込んで来るよ?目に見えて時間稼ぎ!」
エグジガンは同じ声で語り合うエンジニア達に呆れているようだったが、丁度気休めのように着想したクイスランの想文を解読し、やや口角が綻ぶ。
シヅメ部隊。予定ポイントに到達。
作業開始致します。
その時、メインモニターにはカミイソメとカミカマスによって、擦れ違い様に何度も牙で小突かれる白無貌の姿が映っていた。
!!
ドツォォッッ!!!
電撃を伴い突撃したカミカマスに撥ね飛ばされ、力無く宙を舞う白無貌。
だが相変わらず、他人事のようにダメージの気配は無い。それどころか、まるで思い付いたかのようにビクンと体躯を弾ませ何かに反応する素振りを見せた。
一度、白無貌と距離を空けるカミイソメとカミカマス。その証拠であるユーラティスからの砲撃が眩しく迫る。
白無貌は片腕を前方に突き出すと、腕は本体の何倍もある円錐形のトゲに変化した。
バスバスとトゲを焼き潰していく太陽光集中収束光線。
しかしその攻撃は、膨らんだトゲを丁度消滅させるだけの形に終わる。
何事も無しをアピールするかのように、指先をワキワキさせる白無貌。
カミイソメとカミカマスは、延長している長い胴体から先端のメインヘッドユニットだけをそれぞれ切り離し、ミサイルのように白無貌に向かって飛ぶ。
上下で擦れ違った二機は白無貌の残像だけを切り裂いて飛び、やがて待ち受けていたそれぞれの接続部に交代する形でキャッチされ再接続した。
白無貌は相変わらず、次の攻撃を待ち遠しそうにしている。
ユーラティスのブリッジ。
ゴライゴ艦長はレミレタにひとつ訊ねていた。
「レミレタよ、散布中の琥珀宝甲片塵によるモニターで何か分からんか?」
レミレタはバンダナの縁を指先でグシグシと捻りながら、琥珀のモニターを見て苦い顔をする。
「これは私がコティアーシュ程の解析能力が無いのもありますが、アイツの周囲では想いがキツ過ぎてエラーが起きているようです。これでは正常に片塵が機能しているかどうかも···」
ゴライゴ艦長、既に人類軍スタッフに体調不良者が数十名出ているようです···バトルオペレーション中における想定を越える数らしく···これはまさか?
「ローケン!この現象は···?」
ローケン博士からゴライゴ艦長に届いた想文。メインモニターには飽き飽きとばかりに余裕で身体を捻る白無貌の姿。
「ヤツはこの瞬間も関心を喰っとるのか?単騎で関心吸収能力は都市制圧レベルか?···急がねば!皆、気をしっかり持てぃ!!」
「「うおおおおおおっ!」」
再び突撃するカミイソメとカミカマス。しかし突き立てた両機の琥珀の牙は、いつの間にか白無貌が両手に持っていたメカベデヘムを挟み込んでいた。
「メカのベデヘムっ?!?」
「塔崩しやカムイスパークでユーラティスのエネルギーが少ないのを見越して、電撃に強い怪獣の盾を···自分の仲間を連れて来たっていうのか?!なんてヤツだ!」
コティアーシュと晶叉が大袈裟に狼狽えたのは、驚く事で何かがゴッソリと持って行かれる。それを防ぎたい予感からであった。
白無貌はメカベデヘムを二機の牙に突き立てたままで腕を無数に触手化させ、カミイソメとカミカマスの機体に瞬時に絡み付く。
例えここで電撃による攻撃を与えたとしても、ベデヘムの細胞が電撃を吸収してしまうか、その前に自慢の異空間へと電流がアースされてしまうか?
例え神の船の加護があったとしても、残された手数は意外と少ない。一撃必中の吟味はもう必要な段階である。
手数?
ボグァァァッッ!!!
コティアーシュがハッとした瞬間。
白無貌の後頭部が爆発した。
「く!当たったァ!」
にじがねの単装砲による砲撃。
「よ、良かったなぁ!遠距離狙撃練習しといて!」
具合の悪そうな執間が、同じく具合の悪そうな射撃員の隊員を褒める。
「みんな!!!」
仲間が作ってくれたチャンス。晶叉は白い触手の締め付けが緩むのを見逃さなかった。
思い切りカミカマスの機体を触手から引き抜く晶叉。だがカミイソメの方は未だ捕縛されたままである。
「コティアーシュ!!」
シュアッッ!
心配する晶叉の視線を、刃の閃きを思わせるレーザー光線が遮った。
!!
パラリと触手が千切れ、自由になるカミイソメ。コティアーシュは決意に満ちた眼差しを白無貌に突き刺す。
「······ゴライゴ艦長!!」
「!!、総員!!慣性警報!!対ショック姿勢ェェッ!!」
ユーラティス内外全体に轟くゴライゴ艦長の怒号。乗組員全員が指示に従った次の瞬間。ユーラティスは女神の手から解き放たれ自由に落ち始めた。
ズドンッッッッッッ!!!
白無貌は、巨大な力で押し上げられた。
と言うよりは、不可視の巨大な拳に殴られた。
見えない拳の正体はユーラティスの主自重制御能力、ゴッデス ブンドド クラフトそのもの。女神の拳によるアッパーカット。
上空に突き上げられた白無貌は、再び浮力を取り戻したユーラティスの先端がこちらを向くのを、黙って見ている事しか出来なかった。
ガシュ!ヴァシュインッッ!!
ユーラティス艦首の天獣像広場。
アンバーニオンの胸部宝甲が展開し、内部が琥珀色に眩く輝いている。そしてその背中を支える仲間達。
白無貌が今現在も補食し、エネルギーに変えている関心の力に五目の味が混ざる。白無貌は味覚を知らないが、何故かそんな気がした···。
待たせたね?
ここまでだ
チェック···
悪いな?
もう···火は付いてるんだ!
白無貌の胸には、もう既に大穴が空いていた。
解き放たれた事すら気付かない。
力が駆け抜けた事すら分からない。
ファイナルレイデンは命中した。
白無貌は、初めて自身の源であるエグジガンに納得を願った。
もう一度見てみたいと。
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