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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!
要 請
しおりを挟むカミイソメとカミカマスが突き刺さった巨大な白い足の裏で、輝く雷紋が弾けて暴れ馳せる。
そして一瞬一回り膨らんだかと思うと、呆気ない音を立てて破裂した。
ッツ!パァァァァン!!
〔なんだ!風船じゃねーか!脅かしやがって!〕
白い爆風と虚空に溶けて消える足の裏の破片。それを見上げていたゼレクトロンを操る藍罠は、茶化すように上空の白無貌に向かって叫ぶ。
〔風船と言っても厚さは40~50メートルはあったぞ?まぁ、このまま簡単に考えて行きたいモンだがねぇ?〕
ロウズレオウは、こちらに向かって降りてくるカミイソメとカミカマスの頭部を誇らしげに見つめる。一体何キロメートル伸びているのか?二体の胴体は長大な龍神のように周囲を取り囲み、戦場を限定する琥珀の檻のようであった。
〔ウルちゃん!ヒメちゃん!〕
カミイソメから響くコティアーシュの声。
〔コティアーシュ!それとそっちは環巣さん!?〕
アンバーニオンは頭部を近付けて来たカミイソメとカミカマスの牙に片方づつ、優しく手を添えた。
〔須舞くん!今から俺も琥珀の戦士の仲間入りだ!よろしく頼む!〕
その背後では右足を再構築した白無貌が、足首をプラプラと振りながら降下してきた。すかさずカミイソメとカミカマスの背部にある女神像と男神像の目からオレンジ色のビームが放たれ大爆発を起こす。
〔行こうコティアーシュ!〕
〔はい!アキサ!〕
振り返ったカミイソメとカミカマスは、最小限の防御姿勢で爆煙の中に健在している白無貌を睨む。そして白無貌が防御姿勢を解いた瞬間、二体揃って腹部に抉り込むように突撃して白無貌を海面まで押し込んで伸びてゆく。あまりのテキパキ具合に敵への対応を任せっきりにしてしまった宇留達。琥珀の戦士達が次の戦略を練ろうとした矢先、ユーラティスの天獣像頭部がゴライゴ艦長の声で語り始めた。
〔皆の衆!〕
〔!、ゴライゴ艦長!〕
ゴライゴ艦長は、琥珀の紙コップに琥珀の蛇腹管が付いたような器具を口元に当て、片耳を手で塞ぎながら語る。
〔よく聞いとくれ、あのノッペラボーに関してはデータが少なすぎる。アレが今のエグジガンと同じような存在だと仮定しても、以前のアンバーニオンのように琥珀封印するのも問題の先送りというもんじゃ?皆の琥珀達の負担も途方もないと聞くからの?〕
「!」「!」
「···ゴライゴ艦長、あれが最新式かつ新しく出来たエブブゲガボディ(仮)であるなら、封印への対策能力やアップデート機能もあり得ると?」
固唾を飲むヨギセの琥珀とナキルの琥珀の一方、建設的に会話を進めるヒメナ。
〔おお!それもじゃがな琥珀の姫よ?あ奴の動きはあの二人とこちらで何とかする。皆の衆に要請したい事があるんじゃ!〕
「要請?」
エシュタガが聞き返そうとしていると、カミイソメ達が飛び込んだ海面から水柱が上がる。数百メートル毎の瞬間移動を繰り返して上昇して来る白無貌に向かって、カミイソメとカミカマスが螺旋を描いて急上昇しながら追撃している。途中で機体が絡み過ぎないよう、胴体がブロックごとに分離し再合体して加速、直列随伴する二体の牙が白無貌に追い付いた。
〔···よくヒーローものであるじゃろ?皆の力を一つに託すアレ。単純にアンバーニオンを中心とした最後の一撃、最終局面雷電轟サーキットの構築を要請する!!〕
「!」「!」「!」「!」「!」
顔を見合わせる五体の琥珀の巨神達。
機体の表情には勿論笑顔こそ無いが、仲間の輪に満ちる妙な納得感。
「あぁ!あれね?」
「成る程···」
「いいねぇ?」
「面白そうだ」
「···ハイハイ」
そこからはすぐだった。
両肩の琥珀柱を肩アーマーごと前傾させたアンバーニオンの背面に立ち、二体づつでそれぞれの左右肩アーマーを支えるガルンシュタエン ティアザ、ゼレクトロン、NOI Z、ロウズレオウ。そして先程の飛翔から帰艦したコハクジュウケン達はユーラティスの表面とガッチリ接続しつつ、琥珀の腕で彼らを支えエネルギー供給ベースとしても機能し始めた。
「···············あ、あれが琥珀戦艦?」
ユーラティスと重深艦隊の作戦区域にやって来た大裂断。だが作戦区域突入予定までまだ間がある。パイロットの鈴蘭は、遠くからでも視認出来るユーラティスのスケールに驚愕した。
「!、アレでかくないですか?!」
「そうね?近くに見える。重深にもう合流の合図出したくなるわね?」
音出がお頭と呼んだ大裂断のブリッジ。
ヘリコプターを思わせる広さのコックピットは操縦席の鈴蘭を先頭に、指揮管制席の等和田 圭子と丹理田がチーフとコパイを務めていて、まるで特撮ドラマの戦闘機の様相である。しかもここはあの翼竜メカの頭部内であるという。裂断のコックピットからどうやってここまで移動したのかも不明。落ち着きはしないが、もう驚くのも慣れた。後はやってみせるだけである。多分······。
ユーラティスの周囲では多数の爆発閃光が明滅している。鈴蘭は驚きと集中を意識の中で入れ換えた。
するとコックピットの中を、音出の不思議な声が駆け抜ける。
追佐和さーん!五秒後にロックオンされます。
「ぬあ!」
航路を変更。巨大な機体が急旋回する。
イイ意味でゲテモノ中のゲテモノ機になった裂断。合体してますます軽くなった横Gの少なさが相変わらず逆に気持ち悪い。女神様に感謝である。
シャリュァーァァァァ···!
「何か通った!?何か見えないのが!」
「追佐和くん、HMDにイメージスクリーン出しときますねぇ?」
まるで医師のような丹理田のサポート。突如鈴蘭の視界に被るフィルター。赤オレンジ色のフレームでイメージアップされた飛行物体が多数、大裂断の周りを飛んでいる。
「?」
等和田はイメージアップのサンプルデータを、自分のコンソールディスプレイに表示させた。
「錫杖?」
等和田の眉間が歪んだ。
一方、大裂断のコンテナルーム内。
アンティークのテーブルの上で、アイス甘茶の氷がキャランと滑る。
先程凄まじい急旋回があったばかりであるにも関わらず。コンテナルームは整然としている。
テーブルと嗜好を合わせた椅子に腰かけているのは土地神、丘越 折子。
そしてその傍らには巨大茶トラ猫のアッカ。
そして重翼隊の制服を着たフクロウ仮面の美女、音出 深侑里は、真剣な佇まいで大裂断をサポート中だった。
「これね?」
「にゃあ、コレだナ?」
「あざますあざますぅ!」
音出は二人に礼を言うとコンテナルームをゴツコツと歩き、参謀役に回っている。どうやら空飛ぶ錫杖の秘密に踏み込むようだ。
「···しかしあにょ琥珀神艦に居るノか?ギガミネンスピリッツ···」
「ええ、私達に心を開いてくれればいいのだけれど···」
折子はそう呟くと、アイス甘茶のグラスをキュッと一気に飲み干した。
アッカはそれが珍しかったのか、口を半開きにしてそれを見つめていた。
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