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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!
ごにんのきこり
しおりを挟む昔昔。
ある村のある山頂には巨木があった。
その木陰は山合の農地を冷やし、麓の人々を悩ませていた。
実害を経て意を決した人々は、名のある腕利きの木こり五人を呼び寄せ、巨木の伐倒を依頼した。
しかし巨木の根元は太く、五人がかりをもってしても一日では倒しきれず、初日の作業は終了した。
翌日、木こり達は目を疑う事になる。
五人が丸一日かけてようやく切り欠いた巨木の根元は、まるで何事も無かったかのように再生していたのだ。
この巨木は物の怪か神仏の加護を受けた木に違いない。
木こり達は職人の誇りにかけて、身命を賭す決意を固めた。
彼らは新たなる作戦を立てる。これまでは交代で一方からのみ振るっていた斧を、五方から五人で同時に叩き込もうというのだ。
そうして木こり達の尽力により巨木は傾き倒れ、山の斜面を滑り落ちて川を流れ、海の入り江にまで辿り着いた。
そして翌日、切り株にはもう若芽が生えていたと言われ、今ではその若芽だった木は村の神木として奉られている。
昨今でもその入り江にある小島は、かつて倒された巨木の幹であったという。
某地方の郷土史より。
〔居た!!〕
ユーラティス艦首の天獣像広場。
白無貌の再出現を警戒する琥珀の巨神達、アンバーニオン、NOI Z、ガルンシュタエン ティアザ、ゼレクトロン、ロウズレオウとコハクジュウケン部隊。
目標発見の一報を上げたのはNOI Zこと現だった。
白無貌は超高速で海の上を走っている。ユーラティスの太陽光集中収束砲がその足跡の波紋を辿りながら直撃を目指すも、相変わらずの瞬間移動を駆使した動きでユーラティスを翻弄する。
「くぅ!当たらない!アイツの姿!あれはまるで···!」
ハグスファンが琥珀のタッチパネルを凝視しながら焦る。
〔来るぞ!〕
!!
水蒸気爆発を起こした海面の白い爆風。白無貌がその中から駆け出て来る様子は無い。
共上が予期したのは、一瞬にして敵が間合いを詰めて来るという事。
再出現への対応は全員がそう理解出来る。だが問題は、現れた白無貌の腕がメカニカルなエネルギー砲に変化していた事だった。
「なにっっ!!?」
〔伏せて!!〕
ガルンシュタエン ティアザは、そのエネルギー砲がエガスデライガタイプの使用するエネルギー奔流砲と同一の物であると気付いた。と同時に宇留、アンバーニオンからのリクエスト。やや膝を屈めた琥珀の巨神達の頭上で、一回転した琥珀柱のヌンチャクが白無貌の腕目掛けて飛ぶ。
ガッ!!!
ギャビィィィ···!!
琥珀柱のヌンチャクに弾かれた白無貌の片腕。
その先端から吐き出されたエネルギー奔流が天高く吹き上がる。
だが白無貌はその状態で無謀にも瞬間移動した。同時にエネルギーの奔流もフッと停止する。
ズンンンン!!!
「うぉ!!」
ユーラティスが震えた。
艦体下方からの鈍い衝撃。
艦底部に瞬間移動した白無貌は、直上のユーラティスにエネルギー奔流を当てていた。
「救道の護貫通!損耗軽微!宝甲、修復中警報です!」
「なんじゃ?!今のは!」
「エガスデライガタイプのエネルギー奔流砲とデータ近似!ですがこの出力は!?」
「ありゃ自壊ギリギリの欠陥砲だったはずじゃろうの?いや待てよ···?」
ゴライゴ艦長はサブモニターに映る白無貌を睨む。
艦底下の微妙な暗がりの中で宙に浮かび、バズーカのような形に変化していた片腕を不満そうにブランと下げる白無貌の姿。
エグジガンめ···もうキネイアニマの量産運用法を確立したのか?
ゴライゴがキネイアニマと呼んだ白無貌は、修復を始めたユーラティスの艦低部を無い眼で見つめながら姿を消した。
それと同時にアンバーニオン達の目前に出現する白無貌。
!!!!!
琥珀の巨神達は背中合わせの円陣を解き、横並びになって白無貌を警戒する。
腕は既に通常の人型に近しい形に戻っていた。だが気迫が先程までとは違う。琥珀の巨神五体を前に余裕の構え無し、かつ戸惑いの気配は消え失せ、まるで爬虫類のような殺気。
〔ん?···コイツ成長してんな?さしずめ経験値泥棒って所か?〕
〔ご明察、関心喰い夢の反芻でござい!急いで仕上げるぞみんな!〕
五体の中では、比較的体格のいいゼレクトロンとロウズレオウが壁役として先に前に出る。
アンバーニオン、ガルンシュタエン ティアザ、NOI Zもその後に続き、コハクジュウケンと共に白無貌を取り囲む。
そして全機の足並みが揃ったその瞬間。五体全てが機体背部からの推進波動を全開にして白無貌に踏み込んだ。
ギュバババっッ!!
「!!」
白無貌の上半身が五芒星型に変貌し、その先端全てからエネルギー奔流砲の砲口が急速形成される。
ギヴィィィィィィィ!!
咄嗟にアンバーニオン達の前に割り込んだコハクジュウケン達は、エネルギー奔流をその掌で受け止めた。
「お、お前ら···!」
凄まじい閃光の中、琥珀の指の隙間からエネルギー奔流を受け流すコハクジュウケン。ゼレクトロンの中で、藍罠は彼らの身を案ずる。
その時、操珀全員が腕に一体感を感じた。
コハクジュウケン達は琥珀の巨神達の腕と直接合体した訳では無いが、今あるリンク感は思重合想に近しいもの。
気が付けば五台のコハクジュウケン部隊は全て腕の形に変化して宙に浮き、アンバーニオン達の腕の動きと完全に同調していた。
「「「「「っでやあああっっ!!」」」」」
五体の琥珀の巨神はコハクジュウケンの腕を使い、エネルギー奔流を同時に掻い潜って白無貌を押し潰すかのように拳を五方から重ねる。
〔まだだ!〕
エシュタガが叫ぶ。重なった拳の隙間からシュルシュルと超高速で巻き上がる白い紐の束。それは彼らの頭上で迅速に再集合し、白無貌の姿に戻る。しかし右足の先だけが戻らず、それが不思議なのか白無貌は首を傾けて困る···フリをした。その時···。
宇留達は目を疑った。
頭上から、ユーラティスを余裕で包み込む程の超巨大物体が降って来ていた。
「あ、足?」
「!?」
人間のものとは多少異なるが、クリーチャー然とした造形の巨大で白い足の裏。白無貌がそれを意に介す事なくアンバーニオン達を見下ろしているのは、この攻撃が確実に白無貌によるものだという事。
ドゥショオオオオオ!!
「ああ!みんな!」
コハクジュウケン部隊は一方的にアンバーニオン達とのリンクを解除すると、まるでロケットのように足の裏に向かって急上昇してゆく。悲痛な声を上げる宇留。今からあれだけの質量に対応出来るカロリーを引き出す攻撃は準備出来ない。しかし即応力だけであれば彼らが飛び出す理由も納得せざるを得ない。だが無駄だと言わんばかりに、白無貌は何のリアクションも突撃するコハクジュウケン達に向けなかった。
ビシュルルルルルルルル!
ヴァシュルルルルルルル !
!!
ユーラティスの周囲を縦横無尽に縫って飛ぶ琥珀色の帯が二つ。
その尾はどこまでも伸びていて実像がブレている。凄まじい速度なのだ。
そしてその先端は二つ同時に、巨大な足の裏に突き刺さった。
〔〔カムイッ!!スパァァァァァァァァクッ!!〕〕
「!!、環巣さん?!コティアーシュ!?」
琥珀色の帯の正体。女神柱と男神柱。
宇留は二柱から聞こえたコティアーシュと晶叉の声を聞いて驚きながら、凄絶な電光石火に包まれる巨大な足を見上げていた。
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