神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!

白 無 貌

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 耳を塞がれたような気がした。
 弾んだ心拍が血を通して感覚を一瞬圧迫したのだ。

 ガルンシュタエン ティアザの操珀コックピット
 薄い琥珀色のメインモニターは、仄暗いヴェスフィンプの格納庫内で孤独に佇む白い巨人の姿を、サーチパラメーターと共にズームしている。
 そのシルエットはエシュタガにとって馴染みのある姿であった。
 かつてエブブゲガが用い、現在はアルオスゴロノ帝国皇帝、エグジガンが自身のからだとしている白い巨人体と良く似た姿。
 だがその頭部には顔が無い。ただ姿勢を保つ為だけに揺れているのみであるだけの似て非なるもの。
 睨み合っている間、ヴェスフィンプの船外で響く戦闘の轟音がやけに遠くで聞こえる錯覚が続く···。

「···エグジガン?···いや違う···?」

 エシュタガの否定に反応するように、無貌の巨人の胸板が淡く光った。
 こっちを見ている?
 当たり前ではあるが、顔の無い巨人から表情を読み解く事は出来ない。だがエシュタガがそう直感したのは、以前にも似たような経験があったからである。それを裏付けるように、ガルンが機体の状態異常を報告する。
「エシュタガ!関心流出保護場エモプロテクションに若干の異常!平均で4.7パーセント機能が低下してる!」
「!?、···まさか?」
 巨人の胸板が再び内側から淡く光る。今度は煽るように、巨人は頭を斜めに傾けてガルンシュタエン ティアザの気を引いた。
「···繋ぎ喰ったな?この戦場に満ちる戦士達の意気を···俺達の衝動を!」

 シャリィィン!

 もう一度錫杖の音が格納庫内を通り抜けた。上を向いた巨人は頭部をガタガタと細かく震わせながら、無い口で吠える。

「ンンンンンンンンンンンン!」

「!」
 エシュタガの背筋が根拠不明に総毛立つ。少々迎撃を迷ったガルンシュタエン ティアザの視線の先で、巨人が僅かな時間の内に消えた。消えたというよりは躯の内側に向かって絞られるように、巻き込まれ折り畳まれて消えた。そして間髪入れずに前方からの衝撃。押された?とエシュタガが認識した瞬間。巨人はもう既にガルンシュタエン ティアザの懐に“出現„していた。




〔ぉあたあああああああっっく!〕

 キュヴォアアアアッッンン!!

 ヴェスフィンプの内側から飛び蹴りで現れたゼレクトロンは、そのまま撃破したヴェスフィンプの大爆発を背中で受け止めた。
〔よっしゃあ!こっちは片が付いたぜ!あんちゃんはまだってんのか!?〕
 藍罠はゼレクトロンで決めポーズをとりながら、ガルンシュタエン ティアザが突入した方のやけに静かなヴェスフィンプを眺めた。

「!?藍罠!おかしいぞ?この反応は!?」
「どしたんスか?椎さん?!」

 その時、ゼレクトロンが見つめるヴェスフィンプの後部艦体を破り、ガルンシュタエン ティアザと絡むもう一体の何者かが飛び出して来た。
〔!?、なんだアイツぁ!?〕
 ガルンシュタエン ティアザに掴み掛かる白い巨人。しかし巨人には右腕が無い。藍罠も椎山も、それがガルンシュタエン ティアザとの戦闘で損なわれたもの···そう思っていた。
 しかし巨人の右腕はまるで空間に湧くかのように、一瞬にして復元する。

「なにぃ!!!?」

「!!」
 驚いた藍罠のその声が聞こえたのか、巨人はガルンシュタエン ティアザからいとも簡単に無い眼の視線を反らしてゼレクトロンの方に無い顔を向けた。

「···ンンンンンンンンンンンン!!」

 ゾッッッッ!!

 藍罠と椎山の脊髄を通り抜ける悪寒。

 デュバッ!

 次の瞬間、白い巨人はゼレクトロンの目前に出現した。
 空中で両膝を折り曲げ、頭上では両手を組んだハンマーが振り落とされようとしている。
〔ぬがぁ!〕
 ペギンッッ!!
 ゼレクトロンも両腕をクロスに組んでそのハンマーを防ぐ。腕表面の宝甲こはくが割れたかと思う程の衝撃と、通常ではあり得ない動き。

 シャリィィン!

 錫杖の音。
 頭角でカウンター突きを狙ったゼレクトロンの虚を突き、巨人は再び瞬間移動した。
「な!?!?」
 藍罠達が呆気に取られていると、白い巨人は背を丸め、まるで見当違いの空中に浮かんでいた。

(気を付けろゼレクトロン!···強山ごうやま!、奴はゲートシードの技術を応用した空間経由移動が出来るのかもしれない!)

(んぬぅなぁんだってぇ!?)

(関心の力をその場で即用している可能性がある!注意しろ!)

 元帝国サイドの人間同士。帝国の技術ゲートシードについて話が直ぐに通ると思ったであろうエシュタガは、椎山へ想文を送った。そして藍罠の方はというと、間近で見た白い巨人の存在感に愕然としている。


 し、シロ···ガタ??!


 

「本命が出おった!!」
 バドキャプタン柱を噛み砕いたユーラティスは、飛行機雲のように空中に残った白い爆煙からその牙を離し、やや下降気味に後進して水平を保ちつつあった。誇示された攻撃力は易々やすやすと相手の戦意を奪い、この巨艦に挑もうとする劣弱な敵はもはや居ない。
 そんな中でゴライゴ艦長が注目した敵の巨人、白き無貌のっぺらぼう。巨人は大きく仰け反ってユーラティスを···アンバーニオンを見ていた。

「総員!!基本迎撃以外の全攻撃をあの白無貌のっぺらぼうに集中!最優先で撃破せよ!」




「ウリュ!来るよ!?」
「ちょっ、待って!アラワルくんがまだ···!」
 未だ再起動しないNOI Zバレルの保全に躍起になるアンバーニオン。
 すると案の定、アンバーニオンの目前を影が覆う。
〔!!!〕

 ド!ォォォォッッッンン!!

 いきなりアンバーニオンの前に現れた白い巨人。宇留がその姿を認識した瞬間。多くの琥珀の拳が息を合わせて白い巨人を殴り飛ばした。

〔うわぁ?!、みんな!!〕

 琥珀の拳達。
 コハクジュウケン部隊が琥珀のタイヤをギュララと掻き鳴らし、アンバーニオン護衛の為に天獣像フィギュアヘッド広場に集った。

 
 






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