174 / 201
発(掘)進(行)!超琥珀神艦!
白 無 貌
しおりを挟む耳を塞がれたような気がした。
弾んだ心拍が血を通して感覚を一瞬圧迫したのだ。
ガルンシュタエン ティアザの操珀。
薄い琥珀色のメインモニターは、仄暗いヴェスフィンプの格納庫内で孤独に佇む白い巨人の姿を、サーチパラメーターと共にズームしている。
そのシルエットはエシュタガにとって馴染みのある姿であった。
かつてエブブゲガが用い、現在はアルオスゴロノ帝国皇帝、エグジガンが自身の躯としている白い巨人体と良く似た姿。
だがその頭部には顔が無い。ただ姿勢を保つ為だけに揺れているのみであるだけの似て非なるもの。
睨み合っている間、ヴェスフィンプの船外で響く戦闘の轟音がやけに遠くで聞こえる錯覚が続く···。
「···エグジガン?···いや違う···?」
エシュタガの否定に反応するように、無貌の巨人の胸板が淡く光った。
こっちを見ている?
当たり前ではあるが、顔の無い巨人から表情を読み解く事は出来ない。だがエシュタガがそう直感したのは、以前にも似たような経験があったからである。それを裏付けるように、ガルンが機体の状態異常を報告する。
「エシュタガ!関心流出保護場に若干の異常!平均で4.7パーセント機能が低下してる!」
「!?、···まさか?」
巨人の胸板が再び内側から淡く光る。今度は煽るように、巨人は頭を斜めに傾けてガルンシュタエン ティアザの気を引いた。
「···繋ぎ喰ったな?この戦場に満ちる戦士達の意気を···俺達の衝動を!」
シャリィィン!
もう一度錫杖の音が格納庫内を通り抜けた。上を向いた巨人は頭部をガタガタと細かく震わせながら、無い口で吠える。
「ンンンンンンンンンンンン!」
「!」
エシュタガの背筋が根拠不明に総毛立つ。少々迎撃を迷ったガルンシュタエン ティアザの視線の先で、巨人が僅かな時間の内に消えた。消えたというよりは躯の内側に向かって絞られるように、巻き込まれ折り畳まれて消えた。そして間髪入れずに前方からの衝撃。押された?とエシュタガが認識した瞬間。巨人はもう既にガルンシュタエン ティアザの懐に“出現„していた。
〔ぉあたあああああああっっく!〕
キュヴォアアアアッッンン!!
ヴェスフィンプの内側から飛び蹴りで現れたゼレクトロンは、そのまま撃破したヴェスフィンプの大爆発を背中で受け止めた。
〔よっしゃあ!こっちは片が付いたぜ!兄ちゃんはまだ闘ってんのか!?〕
藍罠はゼレクトロンで決めポーズをとりながら、ガルンシュタエン ティアザが突入した方のやけに静かなヴェスフィンプを眺めた。
「!?藍罠!おかしいぞ?この反応は!?」
「どしたんスか?椎さん?!」
その時、ゼレクトロンが見つめるヴェスフィンプの後部艦体を破り、ガルンシュタエン ティアザと絡むもう一体の何者かが飛び出して来た。
〔!?、なんだアイツぁ!?〕
ガルンシュタエン ティアザに掴み掛かる白い巨人。しかし巨人には右腕が無い。藍罠も椎山も、それがガルンシュタエン ティアザとの戦闘で損なわれたもの···そう思っていた。
しかし巨人の右腕はまるで空間に湧くかのように、一瞬にして復元する。
「なにぃ!!!?」
「!!」
驚いた藍罠のその声が聞こえたのか、巨人はガルンシュタエン ティアザからいとも簡単に無い眼の視線を反らしてゼレクトロンの方に無い顔を向けた。
「···ンンンンンンンンンンンン!!」
ゾッッッッ!!
藍罠と椎山の脊髄を通り抜ける悪寒。
デュバッ!
次の瞬間、白い巨人はゼレクトロンの目前に出現した。
空中で両膝を折り曲げ、頭上では両手を組んだハンマーが振り落とされようとしている。
〔ぬがぁ!〕
ペギンッッ!!
ゼレクトロンも両腕をクロスに組んでそのハンマーを防ぐ。腕表面の宝甲が割れたかと思う程の衝撃と、通常ではあり得ない動き。
シャリィィン!
錫杖の音。
頭角でカウンター突きを狙ったゼレクトロンの虚を突き、巨人は再び瞬間移動した。
「な!?!?」
藍罠達が呆気に取られていると、白い巨人は背を丸め、まるで見当違いの空中に浮かんでいた。
(気を付けろゼレクトロン!···強山!、奴はゲートシードの技術を応用した空間経由移動が出来るのかもしれない!)
(んぬぅなぁんだってぇ!?)
(関心の力をその場で即用している可能性がある!注意しろ!)
元帝国サイドの人間同士。帝国の技術について話が直ぐに通ると思ったであろうエシュタガは、椎山へ想文を送った。そして藍罠の方はというと、間近で見た白い巨人の存在感に愕然としている。
し、シロ···ガタ??!
「本命が出おった!!」
バドキャプタン柱を噛み砕いたユーラティスは、飛行機雲のように空中に残った白い爆煙からその牙を離し、やや下降気味に後進して水平を保ちつつあった。誇示された攻撃力は易々と相手の戦意を奪い、この巨艦に挑もうとする劣弱な敵はもはや居ない。
そんな中でゴライゴ艦長が注目した敵の巨人、白き無貌。巨人は大きく仰け反ってユーラティスを···アンバーニオンを見ていた。
「総員!!基本迎撃以外の全攻撃をあの白無貌に集中!最優先で撃破せよ!」
「ウリュ!来るよ!?」
「ちょっ、待って!アラワルくんがまだ···!」
未だ再起動しないNOI Zバレルの保全に躍起になるアンバーニオン。
すると案の定、アンバーニオンの目前を影が覆う。
〔!!!〕
ド!ォォォォッッッンン!!
いきなりアンバーニオンの前に現れた白い巨人。宇留がその姿を認識した瞬間。多くの琥珀の拳が息を合わせて白い巨人を殴り飛ばした。
〔うわぁ?!、みんな!!〕
琥珀の拳達。
コハクジュウケン部隊が琥珀のタイヤをギュララと掻き鳴らし、アンバーニオン護衛の為に天獣像広場に集った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)
あおっち
SF
脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。
その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。
その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。
そして紛争の火種は地球へ。
その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。
近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。
第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。
ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。
第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。
ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。
本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~
阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。
転生した先は俺がやっていたゲームの世界。
前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。
だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……!
そんなとき、街が魔獣に襲撃される。
迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。
だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。
平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。
だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。
隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。
神樹のアンバーニオン
芋多可 石行
SF
不登校から立ち直りつつある少年、須舞 宇留は、旅行で訪れた祖父の住む街で琥珀の中に眠る小人の少女、ヒメナと出会う。
彼女を狙う謎の勢力からヒメナを守る為に、太陽から飛来した全身琥珀の巨神、アンバーニオンの操縦者に選ばれた宇留の普通の日々は、非日常へと変わって行く···
今、少年の非日常が、琥珀色に輝き始める。

タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる