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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!
ファイナル アムアム
しおりを挟む〔なにっ!!〕
ス!シャンッ!!
〔!カ!ァあっッ!〕
背中を押す程の圧迫感に気を取られるクイスランのエネスジュイガ。
その隙を抜き胴一閃で縫ったのは、ロウズレオウの剣先だった。
〔ク!フ!フフフ···〕
ガクガクと誤作動を起こしながらロウズレオウの背中に向き直るエネスジュイガ。しかしクイスランはその背中を嘲笑う。
〔ちぃ!ハズレだヨウ!?〕
〔!···また偽物か!?〕
ズヴォァアアアン!!
エネスジュイガの爆発を背で受けるロウズレオウの目下、傾き始めたバドキャプタン柱の頂上には、エネスジュイガの錫杖が突き刺さっていた。
ゴコォォォ···ンォォォォ!!
天空に響いた断末魔。
岩と岩がぶつかり合うようなその音は、アンバーニオンが放ったアルティメットレイデンによってへし折られたバドキャプタン柱の怨み節。
「弾道観測データ統計終了!モニターに出します!」
ユーラティスブリッジの巨大な琥珀の中でコティアーシュがメインモニターに目配せすると、先程の突貫攻撃に関するあらゆるデータが表示される。
その目眩くスライド表示のスクロール速度は中々迅速なものであったが、表示されるファイルの片隅にあるQRコードのようなマークはクルー体内の宝甲と完全に同期しており、クルーがマークと共に一目見たあらゆる情報は想文として宝甲が変換、記憶の中にバックアップとして直接二重定着し、個人差は若干あれどユーラティスの運用に必要な情報は即座に、そして確実にメンバー内で共有された。
「···どぅおお!ねじまがっとるの!オーバードの約1.2倍の威力、そしてオーバードもよく見えんかったが、最早生きモンには視認出来ん程の弾速!、よくぞ曲げた、ゲルナイド!」
サブモニターに映し出されたアルティメットレイデンの弾道。
実時間では一瞬の欠片ですらなかった弾速で駆け抜けた韋駄天の様子が、3D映像で明らかになる。
ユーラティスの天獣像から正面に向けて発射された雷電轟弾は周回から軽めの螺旋を描き、絶妙なタイミングで最下層のバドキャプタン砲口へ侵入、一気に柱の中程まで駆け上がる。だが···。
「···破壊率68%!!上部健在!!」
ハグスファンの報告を聴くまでも無く、雷電轟弾はバドキャプタン柱の傾きの影響を受け、途中で内部から突き抜けてしまっていた。
〔ごめん艦長!全部いけなかった!〕
ブリッジに響く宇留の声。
「!、構わんよ宇留!そっちは大丈夫か?」
〔疑似黒宝甲は再起動中!けど、なんか気持ち回復が遅いような···?〕
「心配はいらん!目標のダメージも、半分獲れればイイ意味で想定外!連結したバドキャプタンの特性を考えれば神の領域の命中率じゃわい!···ハグスファン!柱の様子は?!」
「七割付近で折れたバドキャプタン柱が傾斜!落ちて来ます!!」
「ぬぅ···やはりの!連結を維持したまま質量兵器と化しおったわ!残り三割と言えど長さはキロ単位、海に堕ちればそれだけでも大波は必至······総員良く聞けぃ!本艦はこれより目標の喉笛に喰らい付く!全艦!全宝甲内ヒモロギング ドライヴ出力最大値で総リンク!飛び上がるぞコティアーシュ!···ファイナル アムアムじゃあ!!」
「······アィムアム!···アムアムしてあげますっ!!」
ォガオオオオオオオオ!!
コティアーシュが決意に満ちた表情でゴライゴ艦長の要請に応えるのに伴い、ユーラティスも同調して勇壮な雄叫びを上げる。
そして全ての宝甲が出力を上げた事により、艦全体が一瞬眩い程に輝いた。
ズシャアアアアアッ!
爆ぜる海水の水柱。
ユーラティスはランディングギアを海上で一度屈伸させると太陽光集中収束砲を撒き散らしたまま上空に跳ね上がり、艦体をバドキャプタン柱が落ちて来る方向にグルリと捻って向ける。そのまま折り畳まれつつあった跳ね足の回転は複数のクロヴァウタン小隊を巻き込み、盛大に白い爆煙の列が空中に並んだ。
「うおぉっ!スゲー!戦艦が回し蹴りするトコ初めて見た!」
「いいから行くぞ藍罠!エッさん方に先越されてる!」
「あっッっ!サぁセン!押忍!」
多数の護衛機を蹴散らし、丁度ヴェスフィンプのダメージ箇所に飛び付いたゼレクトロンを駆る藍罠達が、その視線をユーラティスに留める。
ランディング ギアを畳み終え、背部の推進用琥珀柱を全開まで開いたユーラティスが天を向く。
更に巨大感が増した青空の支配者たる威容は、纏わり付く夏雲の上をステップするように蹴散らし、その大きさからは予想も出来ない速度で上昇が始まった。そして艦体質量が受ける全ての空気抵抗の斬り込み役を引き受ける艦首衝角には、大気のリングまでもが現れている。
「しっかり掴まっておれよ宇留ぅ!アンバーニオンは砲台としての場所が割れておるから敵の攻撃に警戒を怠るな!?」
〔···あ、アィムアム!?〕
「ビィヴァ!バドキャプタン柱と顎の軸合わせだ!」
ォウローォォォン!!
キュドッッッッッッッ!!
ある程度海面から離れるまで上昇したユーラティスは、本格的に推進波動を背部に向けて放出する。
操舵手のビィヴァはハグスファンの指示に従い、高空から降って来るバドキャプタン柱の動きに合わせ、ユーラティスの艦体をゆっくりと回しながら予想攻撃軸を合わせてゆく。
「ビィヴァ!噛み付く瞬間に相対速度合わせ!サイズはこっちが上だがダメージは最小限に押さえたい!」
ォーウ!
次第にモニターの中で大きくなるバドキャプタン柱。コティアーシュは眉間が千切れそうになる程にモニターを睨んでいる。
「···アキサやみんなの居る海には、落とさせない!!」
途端に輝き始める艦首両サイドの勾玉型宝甲。そしてその顎は、宇留達アンバーニオンが掴まっている天獣像の両脇で、ガシュンと同時に開いた。
「勾玉型宝甲に双雷電轟チャージ完了!エネルギー流入量!現状の1/3!ネーサン!今です!」
「アィムアム!ファイナル アムアム!アムアム始めェェ!!」
「「「アィムアムッ!!オリャアアアアアアアアア!」」」
グゴバグッッッッッッッッ!!
ビャギギギギギギギギィィィ!!
最初の噛み付き攻撃と同じく、落下して来たバドキャプタン柱のほぼ中央に喰らい付いたユーラティス。
落下速度が穏やかになる中、噛み付きと同時に閉じられた輝く上顎からバドキャプタン柱に向かって、雷電轟のエネルギーが容赦無く流れ込む。
雷電轟の輝きは雷紋のようにバドキャプタン柱の表面から内部へと侵食し、それぞれ機体の圧潰、爆発が始まる。すでに全体に流れた高圧電流によって作動不良が起き、既にバドキャプタン達は分離もままならないようだ。
ドン!ヴォン!ズン···ヴァン···シュヴァァァ······
やがて輝く雷紋の侵食はバドキャプタン柱全体に行き渡り、小規模な爆発も静寂に転じていく。そして思いの外静かに、バドキャプタン柱はユーラティスに咥えられたまま蒸発を始めた。
······
〔?···やった?〕
天獣像に掴まっていたアンバーニオン ナインウィング+NOI Zバレルは、徐々に消滅していくバドキャプタン柱の様子を伺いながら機体を乗り出した。
(ウルちゃん!ヒメちゃん!油断しないで!)
(コティアーシュ!?)
(どうしたのコティアーシュ!?)
コティアーシュから宇留とヒメナに届いた想文。ただそれは、勝利の一報とはかけ離れた雰囲気を纏っていた。
(土地神様勘!アルティメットレイデンの弾道に影響を与えた敵の存在!!気を付けて!!まだ何か居る!)
「「えぇえ!!?」」
ゼレクトロンとは別のヴェスフィンプ内部に突入したガルンシュタエン ティアザ。
だが、暴風が吹き込む格納庫内には戦闘中の活気はおろか、機影やクルーの姿も無く、艦内は埃っぽく荒れ放題だった。
「···誰も居ない···なんだコレは?まるで廃艦処分寸前といった様相だな?何か分かるか?ガルン···?」
「解析中···直近で出撃した艦載機の痕跡も無し···けどなんだろうねもう!エシュタガをこんな埃っぽい所に招くなんて!」
「フフ··今の俺にはふさわしい帰省先かもな···?」
シャリィィン!
「「!」」
シャリィィン!
「······」
突如ガラクタの奥から響く錫杖の音。そこにはいつの間にか、全身白ずくめの無貌巨人が一体、静かに立ち尽くしていた。
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