神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!

大 主 砲 ~アルティメットレイデン~

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 ギガミネンスピリッツ

 園護えんごかいな コハクジュウケン

 その琥珀の腕は後に、重合隊が運用する重拳タイプの完成形とも例えられる事になる。




 凄まじい攻撃の中を駆け抜け、ユーラティスの表面にようやく辿り着いた量産型エガスデライガ達。
 しかし彼らを待っていたのは、琥珀の巨腕軍団による熾烈な迎撃だった。

 見た目は弾丸型の戦闘車両らしいコハクジュウケンだが、その車体自体はまるで人の腕一本のようであり、車体各部の間接は自由自在に可動している。加えて、ユーラティスの艦体と接している琥珀のタイヤは、ほぼ垂直はおろか逆さまの宝甲側面であっても自由自在に走り回る事が可能で、たとえユーラティスがどんなに暴れようとその挙動にブレが無い。
 エガスデライガ達も幾分かは垂直の壁などでの活動が可能のようではあるが、コハクジュウケンとの機動力の差は正に雲と泥であった。
 ミサイルポッドから直接放たれたコハクジュウケンのノーズが激突し、ある一機のエガスデライガの上半身が砕けた。散らばる部品と白煙の中、そのコハクジュウケンは通り抜けざまに車体後部のアームでエガスデライガの残骸を掴むと、たまたま近くに居たエガスデライガの僚機に残骸を投げ付けた。その二機は束になって海へ落ちて行く。また違う場所ではドリフトの遠心力を用いたパンチや、掌を艦体に立てたのち屈伸からバク転に至り、回転数を上乗せした張り手でそのまま叩き潰すなど、多彩な攻撃が行われている。また、車体後部をサソリかハネカクシムシのように突き上げた状態で爆走する機体の五本の指先からは、ユーラティスの太陽光集中収束砲と良く似たレーザー光線が放たれ、エガスデライガ達との撃ち合いになっていた。
 
 


 キンッッッッッ!!
 
 ロウズレオウの妖刀、毒恋丸ぶすれんまると、エネスジュイガの錫杖が鍔競り合う。

 ギギッ…!グヅッッ…! ヅヴ…!

 その刃の狭間で互いの毒が混ざり合い、その混沌は対消滅して増えては消えを繰り返す。
 
 おかしい···天辺てっぺんのヤツに緊張感が無い···

 ロウズレオウを操る共上は、エネスジュイガ越しに見つめたバドキャプタン達に疑問を持った。




 ヒィィイン···

「!」
 ユーラティスブリッジのコティアーシュは、薄い耳鳴りを伴い着想ちゃくしんした想文の内容にハッとする。
「···ゴライゴ艦長!土地神様勘!問題可能性濃度上昇報告。目標、バドキャプタン柱の次弾が別の場所で用意されている可能性!」

「!?···ぬ!」
 ゴライゴ艦長は顎の外骨格に指先を添えながら、再結集完了寸前のバドキャプタン柱を睨んだ。
「···次の連結完了はフェイクか?なんにせよ、タイミングを遅らせる気じゃな?こっちがナントカの一つ覚えみたくエネルギー弾頭を撃ち抜くだけじゃと思ぉたら大間違いじゃわクイスラン!···宇留!ゲルナイド!」




「タイミングが早い?」
 アンバーニオンの操珀コックピット
 宇留は操珀コックピットに響いたゴライゴ艦長の声に反応した。
〔そうじゃ宇留、奴は最上段のバドキャプタンが丸々一機エネルギー弾頭に転換され、ツナガリ柱内部で自由落下加速と圧縮をされる事でその威力を生む。だがもしそのプロセスを柱の途中で行うとしたら?···という訳で、主砲組の皆!アルティメットレイデン、最大出力準備じゃ!〕
〔ラジャーキャプテン!アィムアム!〕
「!」
 高らかに響く現の声。宇留は少し驚いて肩を竦める。

 (···ねぇヒメナ?···嫌な訳じゃ無いんだけどね?やっぱりこれちょっと恥ずかしいよ···?)

 (そぉ?ボクはイイと思うけどなぁ?)

「···」
 そんな想文をヒメナとやりとりしながらも、宇留は一瞬にして真剣な表情に戻る。
 


「···大主砲、最終光珀迷彩解除!アルティメット雷電轟レイデン!最大出力!!」

 ユーラティスの艦首甲板にある天獣像フィギュアヘッドの上。
 光珀迷彩の解除によって、その上に立つ異形のアンバーニオンの姿が明らかになってゆく。
 NOI Zが変形したコの字型のユニット、疑似黒宝甲超圧縮加速銃身ジェッティオンフルバレルがアンバーニオンの両脇から前方へ伸び、アンバーニオンの肩部琥珀柱が両方共に前傾している。その内部では琥珀の勾玉が暴れる程に輝き、今正に解き放たれようとしているのはアンバーニオンが必殺の技、虎魂龍血雷電轟ココンケテュールレイデンを明らかに超えるもの。

「最大出力了解、ユーラティスとのエネルギーライン連結を解除」

 ヴァリン···!

 ヒメナの報告と共に、NOI Z銃身バレルを装備したアンバーニオンの足裏が天獣像フィギュアヘッドから剥がれ、フワッと浮かび上がる。
「···バインダーウイング最大数具現化、ゴッデス ブンドド クラフトの枝、及びユーラティスの超静電気を圧縮開始、バインダーウイングファン輪転はじめ、チャンバーフィールドを疑似形成」
〔NOI Z了解、全機能補助開始、ターゲットロックランダム推定値全数固定!発射準備完了待機!〕

 バシャ!バシャシャシャシャシャシャシャシャ!

 浮遊するアンバーニオンの背後に一枚だけ出現したバインダーウイング。
 バインダーウイングは九枚に分裂しながら時計回りに沿って円形に並び、そして徐々に回転数を増す。
 その光輪に導かれ、周囲に満ちるユーラティスのエネルギーがアンバーニオンに集い始めると、琥珀柱の合間に小さな光点がポッと灯った。
 



「やっぱりだ!バドキャプタン柱各所で急激な温度上昇です!」
 ハグスファンはサーモグラフィのデータが映ったモニターを凝視しながら、振り返らずにゴライゴ艦長に報告した。その間にも相変わらず、ヴェスフィンプによる砲撃がブリッジのシールドになっている宝甲ドームへとぶつかって爆発している。
「各所じゃと?!やはりと言えばやはりじゃが分散となると?!どこが本命のエネルギー供給ゲートじゃ?」

艦長おっちゃん!!〕

 ユーラティスブリッジに響く宇留の通信こえ
「どうした!宇留よ?!」

雷電轟弾レイデンを無理矢理曲げて下から上に向かって全部貫く!〕

「!!最大出力だぞ!そんな無茶をすれば次は無いぞ?!」

〔俺達なら出来る!!ね?アラワルくん!〕
ゴライゴ艦長キャプテン、俺からもお願いします!!〕

「···んんんぬむむむ!よぉし分かった!ちょっと待ってぉれぃ!···第1主砲塔太陽光集中収束主砲二連!ヴェスフィンプを足留めじゃ!黙らせろ!」



 ディビシュゥゥゥ!!

 ユーラティスの第1主砲塔レンズから伸びた極大レーザー光線が二筋、ヴェスフィンプ二艦の胴体を同時に貫いた。
 両艦は艦底はらを見せて仰け反り、攻撃が止む。
「アンバーニオン、収束臨界マックスチャージまで24パーセント!」
 レミレタの報告が終わるや否や、ユーラティスのブリッジにイケボが響いた。そして何故かムッとするコティアーシュ。そしてメインモニターの片隅には、想文変換中とのバナーが流れた。
〔こちらガルンシュタエン、及びゼレクトロン、琥珀戦艦、聞こえるか?〕
「おお!お主は!!」


 ガルンシュタエン ティアザとゼレクトロンは、ユーラティスの一部に着艦していた。
 琥珀の壁に手を当ててブリッジと通信するガルンシュタエン ティアザと、その背後で群がるメカベデヘム飛行タイプをバッタバッタと薙ぎ倒すゼレクトロン。

〔援護を感謝する。今の砲撃でヴェスフィンプに空いた穴から我々がそれぞれ突入し、内部から破壊しようと思うのですが?〕

「おお!やってくれるか?これならバドキャプタンどもに注力出来るわい!」

〔だぁあああ!大将!あいつらもう一回超震災起こそうなんてゼえってぇ!許さねー!待っていやがれアノ帝国!俺達がマグニチュードだァ!!〕

 ヴァキャアアアア!!

 ゼレクトロンが角を横に振ると、発生した衝撃波でその場のメカベデヘムが全て弾け飛ぶ。

〔?··もう行けるか?〕
〔おう!〕


「······」
 ヴェスフィンプに向かって鬼加速していくゼレクトロン達を見送ったゴライゴ艦長に、アルティメットレイデン、準備完了の報告が届く。
「アンバーニオン大主砲、チャージ完了、ゴライゴ艦長!?」
 相変わらず揺れる外の景色、ハグスファンをはじめ、全てのクルーがゴライゴ艦長に注目する。

「···よいな?コティアーシュ?」
「アィムアム!」

「艦長、操珀、同時承認!トリガーをアンバーニオン操珀へ!」




「来たよ!ウリュ!」
「操珀了解!···ごめんアラワルくん、無理させちゃって···」
「当然だ」

 アンバーニオンが見上げた先でバドキャプタン柱全体が明滅する。予想通り、まだ全てのバドキャプタン達が全て直列しているとは言い難い。
 宇留は雷電轟弾レイデン球の軌道を強くイメージする。それはアンバーニオンと繋がっている銃身バレルモードのNOI Zともリンクし、両サイドから琥珀柱の光球を電磁的に挟み込んでいる黒い腕の角度がギチリと軋んだ。
「みんな!撃つよ?!」
「「おお!」」
 バドキャプタン柱の一部がチチン!と弾けた瞬間を狙い、宇留達は叫ぶ。

「「「アルティメットレイデン、ウ ゴータ!!」」」








 ミ“!ッッッッギンッッッ!!


 金属板を一瞬にして引き千切るような音。
 発射した瞬間の雷電轟レイデンの光球は、その軌道も見せず、一瞬にして天空まで駆け上がった。


 ズ!ゴパァァァァ···ン!

 ゴキンッッ!

 遅れて来た落雷の音、壊れるNOI Z銃身バレルの間接。
 そしてバドキャプタン柱は意外にも静かに、下から上に向かってホロホロと崩れ始めた。

















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