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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!
波濤に立つ
しおりを挟むゼレクトロンとガルンシュタエン ティアザは、上空のバドキャプタン柱目掛けて進む琥珀神艦の威容を前に固まってしまっていた。
〔すっげぇ!デケぇ···!〕
〔!···ゴライゴ殿か···?〕
ユーラティスがほぼ全方位に発射しているオレンジ色のレーザー光線、太陽光集中収束砲。
その無数の光芒はユーラティスから遠く離れたにじがね周辺で活動する敵にも直撃し、水蒸気爆発による派手な水柱が所々で上がる。
「おいおい!、大丈夫なのか?」
にじがねのクルーが、顔半分を輝きに染めながら心配する。
その時、ユーラティスが所持していると思われる鬼磯目の識別通信アイコンがオンになり、SOUND ONLYとスピーカーアイコンが表示されたバンドが通信担当官のディスプレイにスラスラと流れる。
〔···もし?このコード、そちらの旗艦でよろしかったかのぉ?〕
にじがねのブリッジに木霊したのは、渋み、凄み、深み、そして柔らかい雄大感を持ち合わせた老紳士の声、ユーラティスの怪獣艦長、ゴライゴの声だった。
「ゴライゴ殿!?!」
晶叉は通信担当官席の間に素早く割り込み、空いていたマイクを手に取り返答する。
〔おお!アキサ殿!いきなりこんなムサい爺の声で悪いの?あのコの声じゃなくて?見ての通りこっちはみんなしてちょっと忙しいもんでのぉ?〕
にじがねのクルー、晶叉の仲間達は顔を見合わせる。あのコ、というのがコティアーシュだという事をすぐに理解したからだ。
「いぃえ、そちらこそ!お元気そうで!丁度、彼女の休暇も昨日までだった所です!」
〔わははは!それはそれは!···っと、それはともかく、こちらは巨獣群御来護獣合隊所属?超琥珀神艦ユーラティスじゃ!!以後お見知り置きをぉ!まぁ?ひょっとしたら?義によって助太刀いたさん事もないんじゃが?···例えばこんな風に?〕
バシュム!
ユーラティスが放った太陽光集中収束砲の一筋がにじがねに迫る。一瞬の出来事に、どの隊員も反応出来ない。
そしてその輝きはあろう事か、にじがねの直前で向かって右方向に直角し、丁度水中から頭を出したディープトゥースを即座に破壊してみせた。
「ま、曲がった?!!」「ほ、ホーミングレーザー?」
愕然とするにじがねクルー達。晶叉だけがニコリと微笑み、ユーラティスの攻撃特性を理解した。
「なるほど···」
〔驚かせてスマン!···というわけで、お互いの流れ弾の心配は要らん!そちらでも思い切り戦うといい。ではアキサ殿、この通信は非公式にオープンのままにさせてもらおうかの?···一生懸命にやっとるあのコの為にも、必ず生き残って下されよぃ?では後程!〕
ユーラティス メインブリッジ。
ゴライゴ艦長がにじがねに挨拶をしている間に、レミレタがメインブリッジにやって来た。
頭にはバンダナを巻き、タンクトップを着こなしたその姿はまるで女海賊を思わせる。
「お待たせ致しましたゴライゴ艦長?だいぶ敵が纏わりついてきたようですわよ?」
巨大な琥珀のインカムを片手で調整しながら、ゴライゴ艦長は次の指示を出す。
「···よっしゃ!炎天下の琥珀だけに!飛んで火に入るナンチャラじゃワイ!···ランディングギア総展開、大地じゃのぉて海じゃがの?着水スタンバイ!」
「アィムアム!全艦!ランディングギア展開モード!海に降りるぞ!アメンボの勉強思い出せヴィブァ!」
オーウ!
クガァァン!ゴンッッッッッ···!
ハグスファンの操作によって、ユーラティスの艦体中央下部に折り畳まれていた三対計六本ある虫の足のようなランディングギアが開いてゆく。
それに伴いユーラティスの飛行高度は下がり、その足の内側にあるダクトからは光の排気が噴き出して展開を加速させた。尖った爪先はランディングギアそのものの質量と相まって大気摩擦を起こし発光、高熱を帯びている。
そんな状態のユーラティスの直下に飛び込んでしまった量産型エガスデライガ達。ある機体はそのモーションに巻き込まれ大破、ある機体は潰されながら爆散し、蒸発していった。
ヂュシャァァァア!!!
六本足の爪先が海面に触れ、衝撃と水蒸気の保護膜が爪先を包む。その一瞬の隙を狙い、宝甲の極細毛が水中に突出。その毛先は琥珀巨神特有の浮遊波動を発して、海上に器用な足掛かりを掴んだ。
「着水完了!続いて競役二獣結合開始、操舵獣のモーション接続を切り替え!」
「よぉし!暴れたれぃ!皆の衆!!」
「アィムアム!がおおおおおおおお!!!」
オーゥロォォォォ!!!
ゴライゴ艦長の号令により、巨大な琥珀の中で叫ぶコティアーシュ。そしてドライヴブリッジのヴィブァ。
着水の衝撃を間接を曲げる事で逃がしたユーラティスは、相変わらず太陽光集中収束砲を周囲に撒き散らしながら、琥珀のマストを後方へと倒しつつ、末広がりになっていた背部の推進用琥珀柱を内側にすぼめてゆく。
するとユーラティスの艦体は継ぎ目で左舷内側にくねって曲がり、一度艦首が馬の首のように下を向く。
ォガオオオオオオオオオオオ····!!!!!
コティアーシュの叫びと共に、艦首勾玉型宝甲の下に隠れた眼のような琥珀を輝かせながら、ユーラティスが怪獣のようにバドキャプタン柱を見上げて吠える。
そこに降り注ぐように、ユーラティスへと殺到するアルオスゴロノ帝国の大軍団。
御来護獣合隊の戦いが今、ここに幕を開けた。
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