神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!

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我ら、愛しき陽火を以てウェラーラ イキソイト ヤクォウ ヲティモテ

滅火伏せる流れとならんケマット ウルェシエラ ガンヲトナンラ



「ワー!」「ヒャアア!」「ミャワア!」「ホー!!」
 意地と祈りを尽くしたアンバーニオンとNOI Z。そして、それぞれの機体から降り立ってまで向かい合った宇留と現。
 最後の一撃を見届けた怪獣の子供達から、ようやく歓声らしい歓声が上がった。

 宇留は現の繰り出したジャンケンのパーを、自身が繰り出したチョキで挟み込んでいた。

「···っ勝ったぞおおお!」
「ぅあああああっ!」

 宇留はチョキグーに変えて天空に突きかざす。
 現はまるで手首から先が無くなったかのように拳を抱いてしゃがみ込み、盛大に悔しがった。
 二人から大いに溢れる意気に感化された怪獣の子供達は、その場ではしゃぎながら輝き始め、金色の粒子になって壁面に融けて混ざってゆく。
 粒子が壁面の芯にまで染み入る頃、子供達のはしゃぎぶりが乗り移ったかのように、琥珀神艦が鼓動する。
 





 ···キュヴィィィィンンンン······!

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ······!

 エンジンルーム壁面のパズルパターンのモールドをオレンジ色の光が駆け馳せ、地震のような振動が琥珀神艦の全てを繰り返し揺るがした。
 船体を構成するほぼ全ての宝甲結晶構造体が内包する無数の極小エンジン。それらが連結して編み出した凄まじいエネルギーが、止めどなく艦全体に溢れて満ちる。
 エネルギーの輝きは踞るアンバーニオンとNOI Zの体躯をも駆け抜け、浸透したのち床面に流れ戻る頃には、両機のダメージは全回復していた。

 ギゥォオォォォウンンン!!

 そして機体の全てを駆け巡ったエネルギーの輝きに呼応するかのように、アンバーニオンのメインエンジンであるヒモロギング ドライヴが胸中で甲高く吼える。
 その音はエンジンルームで反響しながら、琥珀神艦の何処かを目指して遠退いていった。




 ブリッジの暗がりでアンバーニオン達の様子を窺っていたゴライゴ達を、黄金の閃光が穿つ。
 それはブリッジの照明やモニター、機器類が同時に起動した為に起こった錯覚だった。
「ぬ!おお···!」
 ゴライゴはあらゆる内装、機器類が細工付きの琥珀で出来ているという豪華絢爛な内装を改めて目撃し、感嘆の声を上げた。ローケンとハグスファンもそれは同じで、周囲を見渡す首の筋肉が中々に忙しそうである。
「これはっっっ!」
「うおお!こいつァ!ライトで照らすのとはまた違ったオモムキっすねぇ!」
「うむ!!宇留、そしてゲルナイド!二人共に見事じゃ!よくやってくれたぞぃ!落ち着いたらば褒めてやらねば!」
「ゴライゴさま!あれを!」
「む?!」

 ローケンが視線で指し示しているのは、現在、焦げ茶色に染まっているメインモニターである。
 自動で左右二分割モードになっている右側の方。表示された琥珀神艦の概略図には、様々な場所の様々な起動情報が踊っている。
 その中でゴライゴとローケンが注目したのは、艦内探索の際に気掛かりだったある場所の情報が微弱に反応していた事だった。
 
「開かずの第9チャンバーも反応している···!ゴライゴさま!これは···!」
「······むぅ?もしやこれも琥珀の巨神の···アンバーニオンに呼ばれたから···?なのかのう?···それはそうとて···レミレタ、バコナ、コティアーシュ!そっちはどうじゃ?」

 通信が切り替わると同時にブリッジをつんざいたのは、ラジオのチューニングのような騒音だった。



「コティアーシュ!!!」
 メディカルルームにあるコティアーシュの水槽を見て、ヒメナが叫んだ。水槽の中身は眩い輝きに満ちている。
 電子機器のディスプレイや照明は、暴走したかのように明滅やバグを繰り返し、メディカルルームを異様な空間に変えていた。


 光の中で、コティアーシュの魂を八つの白い影が取り囲んでいる。
 シルエットから察するに、白い影は怪獣の子供達のようである。
 彼らの光を浴びたコティアーシュは、全身から急成長の苦痛が取り払われている事に気が付いた。

「···ありがとう、ありがとうみんな!···あとはこの私が、この、マーティア ユラ コティアーシュが!九番目の守り人としてこの船を!···超琥珀神艦ユーラティスを護ります!!」

 宣言を聞いた八つの白い影が、コティアーシュの周囲を嬉しそうに飛び回る。
 白い影達は混ざり合い、そして琥珀色に輝く二つの光になった。


 ヴァシャアアアアアアアアン!!

 水槽が盛大に割れ、濃い水蒸気が光と共に弾けて散る。
「!、コティアーシュ!」「コティアーシュ!」
 一瞬守った我が身を後回しにして、我先にとコティアーシュの元へ駆けるレミレタとバコナ。
 レミレタの手の中のヒメナも、漂う水蒸気の隙間からコティアーシュを探した。割れた水槽の琥珀ガラスの破片をなるべく踏まないように、調整成分の添加物に由来する花の芳香の中を進む三人。
「···なんてこと!あと二回はまゆらないといけないのに···」
「あっ!!バコナ!アレ!」

 レミレタが指摘する水槽の中心部だった場所で、誰かが倒れていた。
 顔も含め、足の爪先よりも長く伸ばした金髪のドレスで全身を覆い眠る若い女性。
 その水艶を湛えた金髪ブロンドは不思議な質感を持っており、見る角度によってはコーラルブルーのハイライトを纏う。

「コティ···アーシュよね?」
「は、早い···もう生まれた?···?」

「······」
 意識を失い倒れている女性、コティアーシュ人型中枢活動体が唯一身に付けている物は、前髪の両サイドに目のように留められた二つの琥珀アクセサリーだけだった。











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