156 / 201
発(掘)進(行)!超琥珀神艦!
船神童子
しおりを挟むぼくたちはうごかなくなったあと
このぼしょにずっといることにな
ったんだ
でもきがついたらとてもやすらか
になっていてこのおふねでおしご
とをしてた
ぼくたちをみちびいてくれたちから
はぼくたちをこのおふねのとちがみ
さまにしてくれていたの
それからずっとぼくたちはたびだつ
たましいをみまもったりなかまに
したりこのおふねをいじしたりして
た
そしてこのおふねはふたたびやくに
たつことになった
だからおしえてほしいの
まもるためにたたかうゆうきを
あんばーにおん げるないど
ごらいごさま こてぃあーしゅ
そしてみんな
ぼくたち わたしたちに
このゆーらてぃすに
もういちど
ゆうきをおしえて
琥珀神艦発掘現場の外れ。
資材保管スペース。
荷受け場に到着した新たなコンテナを整理していた二体の怪獣は、すぐに運び出す資材の吟味を終え、コンテナで山盛りになった急拵えの巨大ソリを眺めながら一息ついていた。
「···ふぅ!あの坂上がるかなコレ?」
「そりゃオメェ!腕の見せ所ってモンよ!」
「ウシ!ガンバルか!あのアンバーニオンのボーズにゃウメェもん食ってもらわんとなっ!···」
ガヴォン!
「!」「!」
いきなり彼らの背後で、鉄板が倒れるような音がした。
シパァ!パァァン!
驚き振り返った彼らの顔面を、紅くしなる何かが襲う。
更にその鞭のようなものは一瞬にして気絶し倒れる彼らを抱き止め、静かにその場に横たえる。
遠退く意識の奥で彼らが認識したもの。
鉄板が倒れる音はコンテナの外装が壊れ飛び散った音。
そして内部から現れたエビ頭の怪獣は、たちまち筋骨隆々な胴体を頭部の下に膨れ上がらせていた。
鮮やかな銀朱の恵体。だがその形状は悪名高きベデヘムシリーズの特徴。
彼らがしまったと感じたのも後の祭り。その頃にはもう既に、エビ頭、ショトの口角から爆速で伸びた図太い二本の触覚が苛烈に踊った後であった。
ギャグォォーン!!
「ふりゃぁあっ!」
「ぐっっっぬっ!」
琥珀神艦のエンジンルームで取っ組み合うアンバーニオンとNOI Z。
ズドォ!
互いに踏み込む力は機体の浮遊能力寸前まで高まり、周囲に散らばる黒い残骸を吹き飛ばした。
エンジンルームの壁沿いで、その爆風に身動ぎ一つせず佇む怪獣の子供達。
だがその眼差しは期待に浮かれ、そして興奮に煌めいている。
やがて舞い上がった残骸は幾つかの黒いつむじ風に変化し、それらは全てNOI Zを模した動くダミー人形へと変わった。
NOI Zのダミー人形は一斉にアンバーニオンの背後目掛けて飛び掛かる。
「!、ざ!残骸でかさ増ししたRENOI Z?!」
背後を振り返り、アンバーニオンは愕然とした。
背後から迫るダミー人形の内一体が、本物のNOI Zの姿をしている。宇留はアンバーニオンの後頭部宝甲に意識を集中して今組んでいるNOI Zの様子を見た。
NOI Zはいつの間にか、顔の無い歪な造形のRENOI Zへと置き換わっている。驚いた宇留は思わずがむしゃらな声で吠えた。
「ッッんがあああぁ!!」
ッッガウォォオオオオォッ!!
「!!」
咆哮したアンバーニオンは腰を軸に上半身を深く捻る。そしてその反動で全身を高速回転させて、全てのRENOI Zをバキャバキャと弾き飛ばす。
その内の一体がオリジナルのNOI Zの片手に受け止められ、その瞬間ブワッと黒く霧散する。
疑似黒宝甲の黒い霧の向こうで、回転を停止して構えと見栄を極める琥珀の竜巻。
NOI Zこと現が、その時目にしたアンバーニオンの姿。
救道の護パートツーによって強化された両腕に、先程まで両膝に装備されていた三日月型宝甲を手に持ち、それを鋏のようにシャキカシュと重ねて擦り合わせている。
〔···コティアーシュ直伝!グラップルクロー!〕
宇留の声でそう告げたアンバーニオンは、鋏の構えを解き、三日月型宝甲の切っ先を両方ともNOI Zに向ける。
〔···ほゥ、面白い!アンバーニオン!お前が本当にコティアーシュ姉ちゃん程かどうか!弟分であるこの俺が見極めてやる!〕
〔ノイズッ!そうこなくっちゃあ!〕
語尾に熱血を込めたNOI Zは、両腕を両サイドに広げた。
NOI Zの頭角に紫電が纏わり付き、その明滅に導かれるようにして迅速に形成されていくRENOI Z軍団。
だがその形状は、オリジナルのNOI Zの造形を精緻に模倣している。
宇留はアンバーニオンの首を動かさないまま、操玉の中だけで周囲を見渡した。
「くっ!味方を欺くのにも識別は必要無いって事スか···?」
〔〔さぁ!どれが本物か分かるかな?〕〕
宇留がそんな事を言っている間にも、RENOI Z軍団は月並みなセリフと共にアンバーニオンを取り囲んでいく。
須舞 宇留。
今の内にこの感覚に慣れておくんだ!
俺の予想が正しければ、お前の見た三匹の怪獣···そしてその主の能力は···!
琥珀神艦 艦橋内部。
ほぼ真っ暗闇の中に、一部灯るコンソールの輝き。
その座席に備わった疑似黒宝甲製ディスプレイに群がり、アンバーニオン vs NOIZの対決に見入る三人の男達。
巨漢の老紳士、ゴライゴ人型中枢活動体。
中折れ帽にコートの人型クラゲ、ローケン活動分体。
そしてヘッドランプを額に括り付けたアルオスゴロノ帝国の裏切り者の青年、ハグスファンの三人である。
「おお!良いぞ!面白くなってきおったワィ!」
「···ゴライゴ様···お気付きですか、艦の外で···」
ローケンはゴライゴの耳元で囁いた。ハグスファンは頬に脂汗を流しながら、寄り目でディスプレイのカメラワークを整えている。
「わかっとるわい!まるで壁を伝う虫を見付けた時のような些細な気配じゃが、なにかが···なにかが来たらしいの?じゃがなにもこんな面白い時にせんでものぉ?」
「印象はとても弱い。しかしここに至るまで我々に気付かせないとは···まさか手練れ?!あの【花】を喰った者かも知れませぬ。この私でさえ名前の印象までもが思い出せぬあの気配消しの【花】を···」
「で、あれば恐らく···」
「コティアーシュの人間体最終調整、そしてゴライゴ様の、リパレギレム体の生命維持装置換装手術中でもあります。大事になる前に···」
ローケンは少し震えているハグスファンに気付き、言葉を止めた。
相変わらずディスプレイの中では、アンバーニオン vs NOI Zの激しい戦闘がくりひろげられている。
「ハグスファン!お主にも分かるのか?侵入者の気配が?」
ゴライゴはごつい手に似つかわしくない仕草で、優しくハグスファンの肩を叩く。
「は!その!···この感じは···?」
「まぁそん時には、中途半端な体でも出向くしかあるまい···ローケン!今日にでもコレを起こす事になるやもしれん!仮にでも飛び立てるよう、皆に伝えよ!侵入者に対しても無茶は禁物じゃ!」
「かしこまりました」
ローケンは伝令の為、ディスプレイのある席から距離を置いた。再び宇留達の対決映像に視線を戻したゴライゴは、深みのある決意的な口調でボヤく。
「···今度は、今度こそは、あの子達の邪魔はさせんぞ!?」
覚醒したショトベデヘムは、資材置場の巨獣用端末を操作して、情報収集を行っていた。先程気絶させた怪獣達は資材を利用して簡易的に拘束され動かない。
一通り検索を終えたショトベデヘムは押し黙り、意識を一点に集中させる。
脳裏に響く耳鳴りのような音。しかし手応えが無かったのか、すぐに顔を上げた。
「···小僧の巨獣体深部にアクセス出来ん···そうだ!···やはりローケン博士め!疑似黒宝甲のプログラムを書き換えたか?···あるいはゴライゴがなにやら仕込んだのか···?」
資材置場の天井を見上げるショトベデヘム。
すると先程二体の怪獣を叩き伏せた長い触覚が、ダウジングロッドのようにある方向を向いた。
「ほう!この覇気···興味深い···」
このショトベデヘム。
その声はショト本来のものでも、その主であるシヅメの声でもなかった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)
あおっち
SF
脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。
その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。
その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。
そして紛争の火種は地球へ。
その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。
近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。
第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。
ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。
第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。
ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。
本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~
阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。
転生した先は俺がやっていたゲームの世界。
前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。
だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……!
そんなとき、街が魔獣に襲撃される。
迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。
だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。
平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。
だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。
隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。
神樹のアンバーニオン
芋多可 石行
SF
不登校から立ち直りつつある少年、須舞 宇留は、旅行で訪れた祖父の住む街で琥珀の中に眠る小人の少女、ヒメナと出会う。
彼女を狙う謎の勢力からヒメナを守る為に、太陽から飛来した全身琥珀の巨神、アンバーニオンの操縦者に選ばれた宇留の普通の日々は、非日常へと変わって行く···
今、少年の非日常が、琥珀色に輝き始める。

タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!
『星屑の狭間で』(対話・交流・対戦編)
トーマス・ライカー
SF
国際総合商社サラリーマンのアドル・エルクは、ゲーム大会『サバイバル・スペースバトルシップ』の一部として、ネット配信メディア・カンパニー『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』に於ける、軽巡宙艦艦長役としての出演者募集に応募して、凄まじい倍率を突破して当選した。
艦長役としての出演者男女20名のひとりとして選ばれた彼はそれ以降、様々な艦長と出会い、知り合い、対話し交流もしながら、時として戦う事にもなっていく。
本作では、アドル・エルク氏を含む様々な艦長がどのように出会い、知り合い、対話し交流もしながら、時として戦い合いもしながら、その関係と関係性がどのように変遷していくのかを追って描く、スピンオフ・オムニバス・シリーズです。
『特別解説…1…』
この物語は三人称一元視点で綴られます。一元視点は主人公アドル・エルクのものであるが、主人公のいない場面に於いては、それぞれの場面に登場する人物の視点に遷移します。
まず主人公アドル・エルクは一般人のサラリーマンであるが、本人も自覚しない優れた先見性・強い洞察力・強い先読みの力・素晴らしい集中力・暖かい包容力を持ち、それによって確信した事案に於ける行動は早く・速く、的確で適切です。本人にも聴こえているあだ名は『先読みのアドル・エルク』
追記
以下に列挙しますものらの基本原則動作原理に付きましては『ゲーム内一般技術基本原則動作原理設定』と言う事で、ブラックボックスとさせて頂きます。
ご了承下さい。
インパルス・パワードライブ
パッシブセンサー
アクティブセンサー
光学迷彩
アンチ・センサージェル
ミラージュ・コロイド
ディフレクター・シールド
フォース・フィールド
では、これより物語が始まります。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる