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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!
船神童子
しおりを挟むぼくたちはうごかなくなったあと
このぼしょにずっといることにな
ったんだ
でもきがついたらとてもやすらか
になっていてこのおふねでおしご
とをしてた
ぼくたちをみちびいてくれたちから
はぼくたちをこのおふねのとちがみ
さまにしてくれていたの
それからずっとぼくたちはたびだつ
たましいをみまもったりなかまに
したりこのおふねをいじしたりして
た
そしてこのおふねはふたたびやくに
たつことになった
だからおしえてほしいの
まもるためにたたかうゆうきを
あんばーにおん げるないど
ごらいごさま こてぃあーしゅ
そしてみんな
ぼくたち わたしたちに
このゆーらてぃすに
もういちど
ゆうきをおしえて
琥珀神艦発掘現場の外れ。
資材保管スペース。
荷受け場に到着した新たなコンテナを整理していた二体の怪獣は、すぐに運び出す資材の吟味を終え、コンテナで山盛りになった急拵えの巨大ソリを眺めながら一息ついていた。
「···ふぅ!あの坂上がるかなコレ?」
「そりゃオメェ!腕の見せ所ってモンよ!」
「ウシ!ガンバルか!あのアンバーニオンのボーズにゃウメェもん食ってもらわんとなっ!···」
ガヴォン!
「!」「!」
いきなり彼らの背後で、鉄板が倒れるような音がした。
シパァ!パァァン!
驚き振り返った彼らの顔面を、紅くしなる何かが襲う。
更にその鞭のようなものは一瞬にして気絶し倒れる彼らを抱き止め、静かにその場に横たえる。
遠退く意識の奥で彼らが認識したもの。
鉄板が倒れる音はコンテナの外装が壊れ飛び散った音。
そして内部から現れたエビ頭の怪獣は、たちまち筋骨隆々な胴体を頭部の下に膨れ上がらせていた。
鮮やかな銀朱の恵体。だがその形状は悪名高きベデヘムシリーズの特徴。
彼らがしまったと感じたのも後の祭り。その頃にはもう既に、エビ頭、ショトの口角から爆速で伸びた図太い二本の触覚が苛烈に踊った後であった。
ギャグォォーン!!
「ふりゃぁあっ!」
「ぐっっっぬっ!」
琥珀神艦のエンジンルームで取っ組み合うアンバーニオンとNOI Z。
ズドォ!
互いに踏み込む力は機体の浮遊能力寸前まで高まり、周囲に散らばる黒い残骸を吹き飛ばした。
エンジンルームの壁沿いで、その爆風に身動ぎ一つせず佇む怪獣の子供達。
だがその眼差しは期待に浮かれ、そして興奮に煌めいている。
やがて舞い上がった残骸は幾つかの黒いつむじ風に変化し、それらは全てNOI Zを模した動くダミー人形へと変わった。
NOI Zのダミー人形は一斉にアンバーニオンの背後目掛けて飛び掛かる。
「!、ざ!残骸でかさ増ししたRENOI Z?!」
背後を振り返り、アンバーニオンは愕然とした。
背後から迫るダミー人形の内一体が、本物のNOI Zの姿をしている。宇留はアンバーニオンの後頭部宝甲に意識を集中して今組んでいるNOI Zの様子を見た。
NOI Zはいつの間にか、顔の無い歪な造形のRENOI Zへと置き換わっている。驚いた宇留は思わずがむしゃらな声で吠えた。
「ッッんがあああぁ!!」
ッッガウォォオオオオォッ!!
「!!」
咆哮したアンバーニオンは腰を軸に上半身を深く捻る。そしてその反動で全身を高速回転させて、全てのRENOI Zをバキャバキャと弾き飛ばす。
その内の一体がオリジナルのNOI Zの片手に受け止められ、その瞬間ブワッと黒く霧散する。
疑似黒宝甲の黒い霧の向こうで、回転を停止して構えと見栄を極める琥珀の竜巻。
NOI Zこと現が、その時目にしたアンバーニオンの姿。
救道の護パートツーによって強化された両腕に、先程まで両膝に装備されていた三日月型宝甲を手に持ち、それを鋏のようにシャキカシュと重ねて擦り合わせている。
〔···コティアーシュ直伝!グラップルクロー!〕
宇留の声でそう告げたアンバーニオンは、鋏の構えを解き、三日月型宝甲の切っ先を両方ともNOI Zに向ける。
〔···ほゥ、面白い!アンバーニオン!お前が本当にコティアーシュ姉ちゃん程かどうか!弟分であるこの俺が見極めてやる!〕
〔ノイズッ!そうこなくっちゃあ!〕
語尾に熱血を込めたNOI Zは、両腕を両サイドに広げた。
NOI Zの頭角に紫電が纏わり付き、その明滅に導かれるようにして迅速に形成されていくRENOI Z軍団。
だがその形状は、オリジナルのNOI Zの造形を精緻に模倣している。
宇留はアンバーニオンの首を動かさないまま、操玉の中だけで周囲を見渡した。
「くっ!味方を欺くのにも識別は必要無いって事スか···?」
〔〔さぁ!どれが本物か分かるかな?〕〕
宇留がそんな事を言っている間にも、RENOI Z軍団は月並みなセリフと共にアンバーニオンを取り囲んでいく。
須舞 宇留。
今の内にこの感覚に慣れておくんだ!
俺の予想が正しければ、お前の見た三匹の怪獣···そしてその主の能力は···!
琥珀神艦 艦橋内部。
ほぼ真っ暗闇の中に、一部灯るコンソールの輝き。
その座席に備わった疑似黒宝甲製ディスプレイに群がり、アンバーニオン vs NOIZの対決に見入る三人の男達。
巨漢の老紳士、ゴライゴ人型中枢活動体。
中折れ帽にコートの人型クラゲ、ローケン活動分体。
そしてヘッドランプを額に括り付けたアルオスゴロノ帝国の裏切り者の青年、ハグスファンの三人である。
「おお!良いぞ!面白くなってきおったワィ!」
「···ゴライゴ様···お気付きですか、艦の外で···」
ローケンはゴライゴの耳元で囁いた。ハグスファンは頬に脂汗を流しながら、寄り目でディスプレイのカメラワークを整えている。
「わかっとるわい!まるで壁を伝う虫を見付けた時のような些細な気配じゃが、なにかが···なにかが来たらしいの?じゃがなにもこんな面白い時にせんでものぉ?」
「印象はとても弱い。しかしここに至るまで我々に気付かせないとは···まさか手練れ?!あの【花】を喰った者かも知れませぬ。この私でさえ名前の印象までもが思い出せぬあの気配消しの【花】を···」
「で、あれば恐らく···」
「コティアーシュの人間体最終調整、そしてゴライゴ様の、リパレギレム体の生命維持装置換装手術中でもあります。大事になる前に···」
ローケンは少し震えているハグスファンに気付き、言葉を止めた。
相変わらずディスプレイの中では、アンバーニオン vs NOI Zの激しい戦闘がくりひろげられている。
「ハグスファン!お主にも分かるのか?侵入者の気配が?」
ゴライゴはごつい手に似つかわしくない仕草で、優しくハグスファンの肩を叩く。
「は!その!···この感じは···?」
「まぁそん時には、中途半端な体でも出向くしかあるまい···ローケン!今日にでもコレを起こす事になるやもしれん!仮にでも飛び立てるよう、皆に伝えよ!侵入者に対しても無茶は禁物じゃ!」
「かしこまりました」
ローケンは伝令の為、ディスプレイのある席から距離を置いた。再び宇留達の対決映像に視線を戻したゴライゴは、深みのある決意的な口調でボヤく。
「···今度は、今度こそは、あの子達の邪魔はさせんぞ!?」
覚醒したショトベデヘムは、資材置場の巨獣用端末を操作して、情報収集を行っていた。先程気絶させた怪獣達は資材を利用して簡易的に拘束され動かない。
一通り検索を終えたショトベデヘムは押し黙り、意識を一点に集中させる。
脳裏に響く耳鳴りのような音。しかし手応えが無かったのか、すぐに顔を上げた。
「···小僧の巨獣体深部にアクセス出来ん···そうだ!···やはりローケン博士め!疑似黒宝甲のプログラムを書き換えたか?···あるいはゴライゴがなにやら仕込んだのか···?」
資材置場の天井を見上げるショトベデヘム。
すると先程二体の怪獣を叩き伏せた長い触覚が、ダウジングロッドのようにある方向を向いた。
「ほう!この覇気···興味深い···」
このショトベデヘム。
その声はショト本来のものでも、その主であるシヅメの声でもなかった。
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