神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!

ガルンシュタエンの牙

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 活動を停止したメカベデヘムの皮膜ぬけがらが多数浮かぶ孤島にある湾口。

 その中心では、膝まで海水に浸かったガルンシュタエン ティアザと、残り二体のメカベデヘムが殴り合っていた。
〔ハハフフッ···〕
 メカベデヘムの一体がシヅメの声で笑いながら、キレのある動きでガルンシュタエン ティアザを翻弄する。
 だが、あえて打撃を受ける事で隙を狙っていたガルンシュタエン ティアザは、手首を一瞬ガシュンと伸縮させ、笑うメカベデヘムの胴体に拳を叩き込む。
〔······!〕
 背後へと弾き飛ばされたそのメカベデヘムから離れたシヅメの意識は次の瞬間、ガルンシュタエン ティアザの背部ユニットを掴み押さえ込むメカベデヘムに宿っていた。
〔こっちこっち!めんどくさいねぇ?〕
「!」
 背後のメカベデヘムはガルンシュタエン ティアザの両膝裏を足の爪先を使い交互に素早く蹴りつけ、バランスを崩したガルンシュタエン ティアザはその場に片膝を着いて踞る。
 そして追い討ちをかけるように、空を飛ぶエビ頭、ショツとショツォが何度も頭部に突撃して、まるで殴られているかのようにガルンシュタエン ティアザの頭を左右に振らせた。

〔きぃえああああ!ハハハ!〕
 海中に隠れていた白いメカベデヘムに意識を戻したシヅメが、奇声を上げながら前のめりで猛進して来る。その手には、先程腹部を殴られて沈黙したメカベデヘムの両足首が握られていた。恐らくそのメカベデヘムを武器として、ガルンシュタエン ティアザに叩き付けるつもりなのだろう。

〔······〕
 キャラララララララ···!
〔!!〕
 バツヴツブツボフビツッ···!
 透明感のある連発音が響き、背後のメカベデヘムが穴だらけになる。
 ガルンシュタエン ティアザの背部ユニットに搭載された劣化宝甲弾機関砲ギノダラスバルカンが火を吹き、蜂の巣にされたメカベデヘムは体内から溢れ出る圧力によって、踊るように手足をバタつかせながら爆散した。

〔なにィ!〕
 劣化宝甲弾機関砲ギノダラスバルカンは銃身を旋回させて弾道を変えながら、再び空から迫るショツとショツォをそのまま牽制する。
 そして海中に隠していた神霧剣ミストランサーを手に取ったガルンシュタエン ティアザは、白いメカベデヘムシヅメが頭上から振り下ろしたメカベデヘムを、下から斬り上げるようにして防いだ。
〔!!〕
 攻撃を弾き返された勢いで、腕を大きく振って仰け反る白いメカベデヘム。そして爆風のように再び周囲に満ちる濃厚な神霧。

〔また神霧キリか!っっっっだぁが!〕

 しぼんだメカベデヘムを手放した白いメカベデヘムは、すぐ近くに揺れたガルンシュタエン ティアザのシルエットに手を伸ばし爪を立てる。だがその時、シヅメの経験と勘が微かにザワついた。

 神霧キリに抵抗が無い!まさか···!誘われ···!?···

 目前のシルエットはユラリと純白の中に溶けて消え、それと入れ替わるように霧の中から現れたのは、上下からの凄まじい圧迫と、その力の合間に突き立つ琥珀色の牙だった。

 ーガヴュッッッ!!!

〔グアアアアアッ!!〕

 ガルンファイターとギノダラスに一度分離セパレーションしたガルンシュタエン ティアザは、白いメカベデヘムを接合基部ジョイントに挟み込んだまま、再合体を試みていた。


〔ぐっふうホホ!さ、さすがだねぇ?〕
 徐々に力が抜けて行く白いメカベデヘムから、苦し気なシヅメの声が響く。ガルンシュタエン ティアザ。エシュタガとガルンは、胴体のあぎとで蠢く獲物の声を、ノーリアクションで聴いている。
 だが苦しいのなら何故、意識を他所に移さない?
 そんなガルンの疑問を遮り、シヅメは言葉を続ける。
〔く、ひ、ヒントは、美味しければ美味しい程、敵の一角を誘い出す絶好のエサになるからなぁ?〕
〔ヒントだと?〕
〔まーいいさ、次に行くぜ?後ハタノム······〕
「!」

 白いメカベデヘムの力が一瞬抜けた後、両腕がガッとガルンシュタエン ティアザの上半身と下半身を掴む。
 白いメカベデヘムの中には、もうシヅメは居ない。そして白いメカベデヘムのカメラアイは、全て漏れ無く、赤い警告色で点滅していた。

「自爆?!」

 白いメカベデヘムの体内に満ちていたエネルギーは一度内部で圧縮され、再び膨張した。膨張は局所的な爆発となって周囲を巻き込み、ガルンシュタエン ティアザごと海面を圧力で抉った。


 キュボ!ーォォォ······ン!!!



 だが、その爆煙の中から、何事も無かったかのように飛び出して来る大小二機の琥珀の戦闘機。ガルンファイターとギノダラス。
 二機は爆心地から離れた海上で再び合体し人型形態ガルンシュタエンになると、湾内に着水した。
 島の避難民は高台から遠巻きにガルンシュタエン ティアザに声援を送っているようだったが、操玉コックピット内のエシュタガは、シヅメの言葉の意味を考えていた。

「ヒント···?···ガルン、この海域一体の情報、なんでもいい、検索をかけてくれ!奴らがこのエリアに何を見出だしていたのか知りたい」
「オーケぇ!エシュタガ!【·····】」

 僅な沈黙の後、眉をひそめるエシュタガの前に羅列されていく検索結果の立体映像サムネイル
「!?」
 エシュタガはその情報の中から一つの情報に注目し、指先でピックアップした。

「まさか···?」


 そのページに並ぶ過去の悲劇の記録と、この区域周辺を結ぶ情報。


 太平洋超震災 震源地。


「···ガルン!共上さんロウズレオウ広域想文れんらくだ!南洋の宇留達も危ない!···もしかすれば、バドキャプタンの群れの行き先は···」

 そのまま遥か水平線上を睨むガルンシュタエン ティアザ。
 水平線の上にある雲の合間には、日本を目指して進む無数のパドキャプタンの姿が、粒のように浮かんでいた。
 


 





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