神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!

対 談

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 その映像は各国の中枢に直接送られたものでも、誰でも直ぐに理解出来る情報を伴ったものでもなかった。
 
 暗闇に整列し、天井からの僅かな灯りに頭頂部を照らされる同一種の怪獣の大群。そして、うつむき立ち尽くすその彼らの背後で前衛的なダンスを披露するザリガニのような華奢な怪獣。途中から挿入された野太い声のナレーションは、現代の人類には未知の言語で決意的な何事かを語り、ほぼ効果音のようだったEDMがようやくリズムらしさを刻み始めると、明らかに現代のセンスには当てはまらない見知らぬ街の画像がスライドショーで始まった。
 スライドショーがナレーションと共に終わる頃、舞っていた怪獣のダンスも最高潮に達し、ザリガニのような怪獣が目に見えて自己陶酔に陥っているかのように天を仰ぐと、それまで黙っていた怪獣の群れは一斉に上を向く。
 
 怪獣、一部でベデヘムと呼ばれている怪獣達の顔面には機械ロボットの顔が埋め込まれていた。

 その後、映像には大々的にアルオスゴロノ帝国のロゴマークが一瞬だけ写し出され、三分以上の暗転を経て、謎の意味不明な動画は終了した。





 軸泉港。


 晶叉が海上のゴライゴに向かって岸壁に歩み寄っていると、やや強い波が一度だけ、ダパン!と打ち寄せ船着き場を叩く。
 それはゴライゴが、既に海上で動きを止めていた合図だった。

「どれ、この辺にしとこうかの?」

「お見事!」

 その波頭をさらった海風の飛沫に太陽光が差し込み、ゴライゴの妙技を絶賛した晶叉の頬を虹色のミストが撫でる。

 政府や国防隊の各所では、晶叉のモニター越しにエリート達がこの会談に聞き入り、ある者は直接軸泉市内で、ある者はマスメディアを通し注目した。
 ゴライゴに親しみを覚えた少数の市民は避難を取り止め、彼が良く見える場所まで戻り、地元のマスコミはプロアマ問わず安全距離での取材を開始し始める。港周辺の市内では要人アキサを狙ったと思われる二名程の不審人物が警備中の警察によって拘束され、その側を護ノ森諸店の車列が通り抜けて行く。その車内には護森だけではなく、宇留の祖父である須舞 頼一郎の姿もあった。
「やれやれ、厄介ですねぇ?」
 護森は暴れる不審人物と警察の取っ組み合いを車内リアシートから流し見しながら呟いた。その様子を見ていた隣に据わる頼一郎が不安げに訊ねる。
「···あの、護森さん?こんな時に紹介したいお友達って、どういう方なんですか?」
「ダイジョブです。須舞さんもきっと気に入りますよ?」
 その時パッと建物が車窓から消え、車内からもゴライゴの顔が遠くに見える。

 そして丁度その頃、軸泉のアンバーニオンの基地である【泉】から、その主も出撃していた。




「改めましてゴライゴ殿!環巣 晶叉!副長···官?、代理のぉ、臨時特の務のぉ、代行の···?えっと?」

「ほぉ···ふむ···ほむ···うむ···」

 凛々しい喋り出しから一転、自身のややこしい肩書きを把握しきれていなかった晶叉は指を折りながら言い淀む。ゴライゴはそれに応え、僅かな頷きをコクンコクンと繰り返した。

「んにゃ!まぁまぁ!なんでもいいわいいいわい!アキサ殿はアキサ殿じゃ!たまには向こうで見とるお偉いさんの会議室も笑わせといて、肩の力抜かんとの?···ふむ、所で晶叉殿も皆も、例の映像を見たか?」

 晶叉は困った顔を再び強張らせ、ゴライゴに向き直る。

「昨日いきなり公開されたアルオスゴロノ帝国由来と思われる映像の事ですね?」 

「どう思う?」


「···宣戦布告、ですか?」

「ふむ、やはり分かるモンにはバレバレじゃな?」

 晶叉には予感があった。
 今自分をモニターしている人達は、一部を除きドヨめいているだろうという予感。あちらの音声は拾えないが、身に付けた機械がワシャワシャする。そんな感覚。

「有識者···アノ帝国の記憶を持つ異記憶症者でありながら、アノ帝国への帰参を良しとせず、我々に御協力頂いている皆様の意見も参考にしています。しかし我が首脳部はこれまで同様、先攻防衛のスタンスを崩さず、特にコレといった反応を返す予定は今の所ありません」

「ホォ、奴らは何気に古臭い所があるでな?逆に挑発とも取られんリスクを掴むとてか?」

 晶叉は集音マイクの先端をわざとガサガサ撫でながら応える。
「まぁなにぶん、昨今のビックリ兵器群を軽々と認可されるような方々ですので?」

「ふはは!成る程!かくもありなんという訳じゃな?···お?来たか?」


      おっちーゃん!


「?」
 晶叉が振り返ると、港湾道路から逸れた数台の四駆車が岸壁の作業エリアに侵入して来て停車した。そして先に降車したスタッフ達に囲まれるように、護森とパニぃ、頼一部が車から降り立った。
「護森社長、?、あの方は?」
 初対面の頼一部を気に掛ける晶叉の足下に、一瞬だけ影が落ちた。ゴライゴを始め、その場の全員と市民達も空を見上げる。柔らかい重低音で港の空気を練り上げながら空から降りて来たのは、琥珀の巨神、アンバーニオンだった。

「アンバーニオン!」

 アンバーニオンは晶叉が乗って来たヘリの向こうの広場を選び、砂利や土煙をほぼ巻き上げる事も無く着地した。

 !···キョイィィイン!

 着地の際に周囲に響いた宝甲製こはくのショックアブソーバーの音は、その場に居た者の粋に良い意味で響いた。
 機体に掛かる全ての衝撃を逃がしたアンバーニオンは胸を張って姿勢を正し、ゴライゴを見据える。
「いらっしゃい!おっちゃん!」
 そして胸元にある琥珀の操玉コックピットから当然のように抜け出て機体外に現れたのは、琥珀のヘルメットを被ったアンバーニオンの操珀パイロット、須舞 宇留。
 その登場を双眼鏡や望遠レンズで見ていた市民達はドッと色めき立つ。

「ほぉ!良い音じゃ!アンバーニオン宇留よ!。全く、ぅ度に新品感が増すのぉ?···どれ!では粗方メンバーが揃った所で、手短だが始めようか?ナツ!」

 ゴライゴのその言葉にニコニコと微笑みながら晶叉の元へ歩み寄る護森と、恐る恐る付き従う頼一部。簡単に晶叉と挨拶も交わした護森はアンバーニオンと宇留にも視線を泳がせ、世間話たいだんは始まった。























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