神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!

来 場

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 I県、軸泉市。

 地元が誇る古社こしゃ、龍剣山神社周辺の裏手にある公園。
 その裏山、みすみ山に登る遊歩道を進み、フェンスで囲まれた配水場、通称おばけタンクを周り込むと現れる急勾配の長い木製階段。
 その階段を息も切れ切れに登る三人の男子小学生しょうねん達は、市内に流れる警報サイレンを遠くに聞きながら、市内を海まで見渡せる展望台に向かっていた。

 階段を見事登りきった少年達は、息を整える事も忘れ肩を大きく弾ませつつ、更に展望台の二階に続く短い階段までも勢いだけで登り詰め、ほぼ三人同時に手摺にすがり付いた。
 呼吸が落ち着くと共に、海の異変を見出だす余裕が生まれてくる。

「あぁ!アレ?」

 一番小柄な少年が気道をヒューヒュー鳴らしながら指差す先、うっすら霧のかかる海上でその影は、“半島が千切れて移動した„、かのように見えた。

 夏気に霞む半島の向こうからゆっくりと進む動く島のような超巨大物体、巨獣の長ゴライゴは、今まさに軸泉湾に侵入しようとしていた。

 その時、沿岸部には奇妙な避難指示が出されていた。
 
 念のため焦らずゆっくりと高台へ。

 通常の災害緊急警報とは異なる避難指示。
 だが、ゴライゴの威容を目にした住民の殆どが慌てふためき、軸泉市としては久々の怪獣襲来対応モンスターシフトに戦々恐々としていた。
 だが人々のそんな慌て振りをなぎ払うように、ゴライゴの日本語おおごえが軸泉市中を駆け抜けた。


「···いやぁ!こーゆー湾内で波立てないように移動するの、中々コツがいるのよね~?ァ!よぃさァ!」




「!」「!」「!」「!」

 慌てて高台へ向かっていた人々や沿岸から離れようとする人々、ほぼ全ての人々が立ち止まって振り返り、ゴライゴの声に反応した。
 豪快かつ荒々しくも、ユーモアの混じった柔らかで老紳士な声。
 それだけでゴライゴという巨大生物に親しみを抱き立ち止る人、念のため焦らずゆっくりの意味を理解する若者、そのスターボイスにときめきを揺さぶられる淑女、お座りをして口角を上げる大型犬、など、ゴライゴはこの時点で多くの避難民の心を掴んでいた。
 そしてそのゴライゴの来場を歓迎するように、軸泉湾を高波から守っていたケーソンがハの字に開いていく。そのギミックについても市民からは驚きの声が上がる。

「ぉお!すまんな?ちょいとな?ちょいとお邪魔するわい!ゴメンナすってよ?」

 ゴライゴが親しげに喋る度、避難を取り止めた人々の間に心からの笑顔が溢れる。すでに【怪獣のお客様】ゴライゴは、市民の心を掴もうとしていた。




 既に湾内に大きく見えるようになったゴライゴ。その時、軸泉港の上空に内陸側から一機の大型輸送ヘリが飛来した。
 サングラスとヘッドホン付きインカムを掛け、肩章付きの白い夏用儀礼服を着た国防隊幹部、環巣 晶叉 副長官代理臨時特務代行官は、キャビンの窓の中からじっとゴライゴだけを見つめている。
「?!」
 ゴライゴを黙視したコックピットのパイロット達から動揺が伝わって来た。晶叉はインカムを口に当て、パイロットに話し掛けた。
「リーダー、予定通り、御協力頂いている企業様の港湾エリア埋め立て地、テトラポッド仮置き場に私を下ろして下さい!」
〔!、ですが代々殿!あんなものが接岸したら高波も心配です!もしあなたになにかあれば···!〕
「リーダー、「彼」の周囲を見て下さい。あのような巨体でありながら、身体を囲う波頭はまるで水鏡に落ちた木の葉のような滑らかな波紋、只の大怪獣と思わず、熟練の達士たっしと認めるべきです」
〔!、はっ!畏まりました!私とした事が···〕

 輸送ヘリは、まるでゴライゴに礼を示すようにやや前のめりに下降し、出来立てのテトラポッドが保管されている敷地の空きスペースにゆっくりと着陸した。
 晶叉はキャビンのハッチが降り終わるまで少し迷っていたが、サングラスはポケットに仕舞い、正帽は座席に置いて行く事にした。
 ハッチの操作を担当したロードマスターと軽い敬礼を交わし合い、ローターブレードが浜風を掻き回す外に出る。整えた髪型がその風圧で崩れないよう、晶叉は頭と腰の鞘を押さえる。


「おお!!アキサ殿!早かったな?···ぬォ!見違えたぞ!」

「···ゴライゴ殿!」


 その大声に晶叉は視線を沖合いに向ける。晶叉からゴライゴまで、まだ一キロ以上の距離があったが、ゴライゴは既に輸送ヘリから降りた晶叉を認識しているようだった。

「ん?今時礼装に帯刀かの?良いのぉ?うーむ、よく似合っとるゾ?」

 晶叉は距離的に通じるかどうか分からなかったが、一度普通の声量で応える。
「いえ···ひょっとしたら今日は日差しが強いかもしれない!これは日傘です!」
 晶叉は持ち手が日本刀風の日傘を鞘から引き抜き、ガフォッと広げて見せた。


「な、なんだぁ?、あぁ、そうなの···」

 ゴライゴの拍子抜けした声が晶叉のドヤ顔を撫でた。




「いやはやスキンケアを怠ると、マーティア···コティアーシュに怒られますからね···?」















 
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