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絢爛!思いの丈!
かえりみち?
しおりを挟む林間学校を終えた衣懐学園二年生一行を乗せたバスは、地方特有の地味に混雑する一般道の朝ラッシュからようやく解き放たれ、スムーズに高速道路に合流した。
出発直後はテンションが高かった生徒達も、早起きと合宿の気疲れと微妙な渋滞とダラダラ連載が影響したせいなのか、彼らの両瞼は一人、また一人とその重みを徐々に増してゆき、どのバスの中でも数人の生徒を残して短い惰眠の園へと沈んでいった。
そしてそれは二つの琥珀のペンダント、宇留の懐の中で眠るヒメナ、磨瑠香の懐の中で眠るエスイも同じである。
(ごめんね~?私ってば今朝オレンジジュース飲んじゃったら、ヒメナちゃん酔っ払っちゃって···?)
(ぅおぅ!想文!)
宇留は突然届いた磨瑠香からの生体通信、想文に驚きを隠せなかった。
宇留は座席の中程からその姿を探した。海をやや遠くに望む座席でパシャカシャと写真を撮る生徒達の向こう、磨瑠香は少し前の席でマユミコ委員長達と談笑している。
(へへー!ヒメナちゃんとずっといたら習得したったもんねー!)
普通に会話をしながら想文を送って来る所を見ると、どうやら磨瑠香はロルトノクの琥珀からごく僅かに摂取した宝甲を取り込み、恐らく可逆的に想文をマスターしているようである。
宇留は一度隣の席に目配せした。隣には訳あって、まるで気絶したように眠る五雄が居る。それから宇留は平静を装い、磨瑠香に想文を返信した。
(よろしくお願いしましゅっしゅ!普通のメール感覚で使うといいと思うよ?)
(すごーい!脳にメールのアプリ入ってる感じ?)
宇留はジロジロ見過ぎないように磨瑠香の様子を窺っている。相変わらず女子グループの中で笑い合う磨瑠香の姿からは、想文を送り合う自分への心向きは感じられなかったが、どちらかをないがしろにして心ここにあらずといった趣も同時に読み取れはしなかった。
(それでね?宇留くん!酔いどれのヒメナちゃんから聞いてるかどうか分かんないけど一応教えとくね?あの可愛い女の子、私達と居たじゃん? カクカクシカジカ なんだって!)
(え?)
カクカクシカジカという単語をかいつまみ、そして言葉に染み込んだ添付イメージを解放する。宇留の脳裏には、すぐその姿と内約が滲んだ。
あの晩、謎の駄菓子屋前で一度だけ自分に声を掛けたあの少女の正体。
学園の敷地にみんなで植えた桜の苗木の生まれ変わりであり、宇留達の盟友、ジェム オン ノサニアの来世体にして、学園に不法侵入してまで過去世の苗木に会いに来た不審者他校生徒。
そして、その女の子は幼い宇留と一度だけ交流している。
「はー···!」
宇留は、時空を越えた宿縁とも言うべきその友情にうち震えた。
昔も昨日も全てを語る事なく、言葉少なげだった事が尚更彼女の印象を大きく誇張し、宇留の胸が高鳴る。
だが、そんな宇留の感激を他所に、宇留を巡る二人の少女は容赦が無い。
想文の途中から狸寝入りを決め込んでいたヒメナが、目を覚ましていたのである。
(···んぬなーっ!へべらい!んにゃなに!ウリュちょっとドキドキしてんらりょー!!)
(ぅえ!ちょ!ヒメナ!)
(はぁ───────?!)
(まぁたくこのきょはこのゴに及んで!ねぇ!マルカ!)
(ねぇ?ヒメナちゃん!)
(ま!磨瑠香さんまで···)
ヒメナは両腕で琥珀越しの内側から宇留の胸元をポコポコと叩いている。
磨瑠香は物凄い速さで宇留に向かって振り返り、口は「あー!」と大きく開いていた。
その表情はどうも強く輝いているように見えて、二人の嫉妬に挟まれながらも、宇留は少しだけときめいてしまっていた。
「···はい!はい!分かりました!···一度失礼しますぅー」
いつの間にか電話を掛けていた担任のアルキ先生は、一度スマホの通話を切った。
「ごめんみんな!ちょっと次のSA寄るよ!」
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