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絢爛!思いの丈!
華麗なる悲劇
しおりを挟む「ごめん!ご···めんっ!俺は!俺はとんでもない間違いをしてた!まさか!ちょっとのすれ違いのせいでこんな悲しみがあるなんてッッ!」
皆さんおはようございます、五雄です。それはカレー大会当日の早朝の事でした。
宇留がバンガローの玄関に正座していて、物音で起きてきた俺達に向かってサセシタ!と土下座したんだ。
宇留の傍らにはシルバーの大きい保冷バッグと、値段の割に味は普通と評判のコンビニブランドカレールーの入ったレジ袋。
俺達は変な夢【スットボケ】から目覚めたのと、どうして宇留とあろう者がそんな行動を取っていたのか理解出来ず混乱して、その場にボーッと立ち尽くしていたんだ。
この件については本来、俺達の班は宇留の姉ちゃん特製のブレンドカレールーを極秘裏に回収···イヤ、お裾分けしてもらって今日のカレー勝負に挑む作戦だったのが前提なんだけど、話はそこから始まる。
「ウル達がカレイ食べたいって言うから、お店の魚介部門の人達とも手分けしてカレイ集めてもらったよ!クラス人数分しかないけど持ってってぇ?ヒメちゃんにもよろしくね?!」
「···ごめんよぉ、姉ちゃんなんかカレーと魚のカレイ超勘違いしてたみたいで、でもせっかく用意して貰ったし、カレイと信じて疑わない真っ直ぐな眼差しを見てたら言い出せなくてぇ、ごめん!朝早いのに笑顔がなんか輝いててもう!やっぱ今、幸せなんだろうな?って···」
うん、宇留の姉ちゃんが笑顔でも笑顔じゃなくても可愛いのはわかるよ。でも幸せ?シアワセ?しあわせってなんだ?え?えぇ?えー?!···
「ぬぉー!コレ、コンビニで1760円する奴じゃん!スゲーリッチ!」
夢令が勝手にコンビニのレジ袋を漁る。そして俺とみんなで反省する宇留を抱き起こすと「あいじぇ!足痺れたァ!」と宇留は変な声で苦しんだ。君は一体いつからそこで正座していたんだい?
結局カレー勝負の結果は、例のカレールーの味を知った夢令の表情と同じく可もなく不可もなく。
素揚げ野菜の評判だけど、言い出しっぺの夢令も含め俺達中学生の舌はまだまだオコチャマだったらしく、評価の加算には思ったよりも貢献しなかった。
俺は揚げパプリィカは全然アリだったと思うけどね?
カレイについては、ゴノモリゾートの人達が急遽サンマ焼き用の大金網と木炭をスタンバイしてくれたんだけど、夏が旬のナントカってカレイだったらしくて、これがまた旨かったんだ!他のクラスからは白い目で見られてたけどね?
そして何より社長の護森さんが教えてくれた裏技!焼きカレイの食べて残った頭とか骨とか皮とかのアラ!それをお椀に入れて熱湯とネギをぶち込んで、醤油をちょっと垂らせば、カレイ出汁が仄かに効いた絶品お吸い物の完成!
ワイルドかつ意外と上品な香りの大人の味はみんな唸ってたな?!先生に至っては呑んだ後にコレトライしてぇって言って喜んでた!他のクラスからは白い目で見られてたけど。
でも宇留?宇留の姉ちゃんの幸せってなんだね?
どうもこんちわ夢令です。
ミッションフェイルドと林間学校の気疲れ、そして何よりガイドのお姉さんが違うバスの担当になって落ち込んでる帰りのバス車内のぼくらは···
「いや、最初のは俺だけ!最後のは多分夢令だけ!」
ああ、そうか、考え事なのに何故か五雄からツッコミが入りましたね?そうでしたね···
···改めて、ぼくらは研修で作った琥珀か貝殻のアクセサリー等をバス車内で見せ合いながら、出発までのダルい時間を潰していました。
さっきから須舞は、バスの側で見送り待機してるゴノモリリゾートの社長さんと偉そうに直で何か話し込んでるし、手句藤先生は担任伝統のリアクションをするし、結局みんなで見たKIMODAMESIの夢の謎もハッキリしないしで一体絶対なんなんだって感じですけども。
そして今はなんと言っても朝七時前だぜ?三日目もなんか予定があった気がするんだけども、てっきりゆっくり帰れると思ってたんだけど気のせいかな?やっぱりKIMODAMESIナイトの日はなんか問題でもあったのかなぁ?
あ!A組のバスの中からガイドさんがこっち見てる!俺を見てるのかなぁ?うおおお!これで俺は後三年は闘える!···ん?アイツとアイツ距離近いな?···もしか付き合っちゃったかコレ?
どうも、2ーB担任の手句藤です。
衣懐学園の担任教諭には、どうも意味不明でケシカラン伝統がありまして。
林間学校や修学旅行でバスの点呼を行う際、生徒間で行事中の明らかなカップル成立してるよオーラを探知した場合、バスに乗り込んで全員の様子を見る時には、あからさまに驚いてやれ、という悪しき伝統があるのです。
例えばバスに乗り込んで···
「みんな揃ってるかー?···うぉおっ!」
みたいな、生徒達の恋愛観を恐れ奉るかの如く、明らかに野暮な事をせねばならないそうです。
これは学園創設者の方々の意向らしく、大人になってもいいんだよ?という迷いを払拭、助長させる目的があるというのですが、サッパリ私には意味が分かりません!
ですがその意向に則るならば、男子一位の子は今ココの社長と肩を向け合い堂々と直に話をしていますし、バス車内で友人達と話す女子一位の子は以前より大きな口を開けて笑うようになりました。
どんな形にせよ、親御さん方とは違う視点で、子供達がこうして成長していくのを見るのが、この仕事の大きな醍醐味であります。つきましては···
「んにゃ?スマイまだ乗っトラんのかナ?」
「ガイドすわーん!こっち向いてー!カモーーーン!」
「す···寿司司司寿司ッッ!し!しあわせってナニカネェエエ!宇留ゥゥゥ!」
〔く!想念がくどい!出発前から車酔いしそうだッッッ!〕
マユミコ委員長のポケットにその身を隠している黒いクラゲ型ビット。
NOI Zこと月井度 現の分想体はどうもバス車内の雰囲気に辟易していた。
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