神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

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絢爛!思いの丈!

もっとも!ミステリアスファイル ③

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 なんか、口笛っぽい不気味なBGMが欲しくなるKIMODAMESI的状況にある我らアンバーニオン軍は現在、須舞 宇留を探索中であります。あれ···?

 どーも、2ーBのオカルトマニア、モットモくんです。
 なんかまだまだ続くみたいですヨ?何故かってと作者がね?ジゴクダーとか最終回よりつらいとか僕らにはナンノ事だかサッパリ訳分かんない事言ってるようですが?もう少しお付き合いの程を宜しくお願い致します···。



 現時点でウチらの目的は人探しではあるんだけども、イマイチ緊張感が足りないのはコイツ、九尾炭くおすみ 夢令のせいである。

 さっきからガイドさんの周りを懐いているかのようにペタペタピトピトリとつきまとい、スキスキアピールを漂わせては女子メンバーから放たれる冷たい視線もナンノソノ。タイヘンおおらかそうな人柄に思えたガイドさんさえ、少々困った雰囲気を時折醸し出しているのを俺は見逃さなかったんだ。
 このままだと更にエスカレートするだろうと業を煮やしたマユミコ委員長は、遂に彼に指令を出したのだろうか?。
 マユミコ委員長が指差す道路の上、なんか黒くて丸くて小さいヤツがなんか動いてる気がする···。

「アッ!九尾炭隊員!あれはなんでやんショウ!充分気を付けて偵察に行くべし!アンバーニオン軍!出動!」
「む!ラジャー!」
 そのハキハキささえ、ガイドさんに対する元気アピールである。半分はしゃぐように未知の物体にテヒョテヒョと駆け寄る夢令。マユミコ委員長と女子数名が、一時凌ぎを得て安堵したようにため息をつく。するとガイドさんの背後に、行軍の最後尾で殿しんがりを勤めていたスタッフのお姉わんちィさんが、ビタリとステップを踏んで背後へにじり寄ったみたいだ。

「!」
「···バラスなよ?」
「···ナ?何が?」
「···何がって!アンタの正体が化け猫のオッサンだと知れた日にゃアノ少年のいたいけな純情はどうなる!」
「···ぬ!!気付いておったか!?」
「···わかってるな?キュンキュンな思い出を持ったまま最後まで楽しく帰ってもらうんだよ!いいな!ガタゴンベェ!」
「···プフ!wwwキュンキュンって!オメェ何歳だwww!」
「···なっ!ウルセぇ!化け猫のオッサンのクセに女装してるヤツに言われタカねぇ!わかったか!もう!」
「···はいのハイヨ!」

 
 ···あの、なんかトンデモネェ事言ってんですけど?!俺ガイドさんの前歩いてるからヒソヒソ話でも聞こえてくるんですけど?でも夢令の為にも口をつぐむ他無く······コレはいつか、お酒でも呑めるようになったら語ろうと思うよ?
 なんて事をしてると、薄暗闇の向こうで夢令が声を上げた。

「委員長ー!ガイドさーん!見失ったー!なんだったんだろねー?ネズミ?」

 するとすぐ脇にあったトウモロコシ畑から、ガサガサと葉が擦れる音が響いた。
「うわっ!」
「気を付けて!クマかもよ!」
「ひえええ!」
 スタッフのお姉さんがペンライトを乱雑にかざしながら夢令に駆け寄る。そしてその音の主は、大きく伸びたトウモロコシの茎と茎の間からすぐに姿を現した!
"ッ!」
 スタッフのお姉さんが向けたペンライトに照らし出され、間の抜けた声を上げたのは痩せたスキンヘッドのオッサンだった。だけどなんでだろう?恐怖と一緒に違和感が俺の中を駆け抜ける!
「ドゥへェッ!」
「またオメェかー!オラァ!待ちやがれー!」
「キヒェェェェ!」
 両脇に大きなトウモロコシを抱え、キモい掛け声を吐いて道路に飛び出し逃げて行くオッサンを追いかけるスタッフのお姉さん。夢令はその光景を呆然と見ている事しか出来ないようだ。

「あら~また行っちゃったよ?」
 五雄が呆れていると、火加ほたしが俺の中に流れる違和感を払拭してくれた。
「見た?あのバカみたいなトウモロコシドロボーの顔!なんでマジックペンで二重まぶた描いてんの?!」
「えーウソー!?なにそれー!よく見てたねー?」
「アレが例の変質者?」
 ···郡川の反応を見ると、彼女をはじめ女子達のショックは然程さほどでもないようで安心した。だが今度は夢令が、···である。
「あーん!怖かったよー!ガイドさぁん!」
「にゃひ!」
 夢令が甘える子猫のようにガイドさんの懐に飛び込む。ガイドさんは、ものスゴーク微妙な表情をしていたので、またもやマユミコ委員長が夢令の首根っこを掴んで引き剥がす。
「んにェ!」
「まだまだ!スタッフさんのプラン続行!このライト持って更に偵察にイケ!クマには充分注意!」
「···ンンンンッッィイエッすァー!」
 姿勢を正した夢令は、マユミコ委員長とガイドさんにわざとらしい敬礼をすると、マユミコ委員長から受け取った黒い変なデザインの懐中電灯を持って再び先陣を切った。あれで大丈夫なのかな?

 それからしばらく歩いてみたけど、一本道にも関わらず、宇留もスタッフのお姉さんもドロボーも夢令も···?、居ない。どうなってるんだ一体?かと思えばいきなり、「シッ!」と菖蒲摘ショーブがみんなに静かにするように、ヒソヒソとけしかけた。

「···なんか聞こえる!」
「···え?!」

 ············ ······ ······

 本当に何処かから会話が聞こえる。なんか遠くで男女が話し合うような声。時折か細く笑い合う声もする。全員がその場に立ち止まり、困惑しながら周囲を見渡していると、ガイドさんが森側の開けた場所にライトを向けた。
「誰だ?!」
「!!!」
 その開けた場所は元公園のような小さな広場だった。
 中央にあるベンチには、夏用学生服を着たカップルが背を向けて座っている。
「!!」
全員の背中が、もれなくビクンと弾んだ瞬間だった。

「あっ···ごめんナッ···」「あ!ごめんなさい」「ごめんッ!」「ごめんなさいごゆっくり!」「ごめんね!」「ごめんなさいごめん」「ンゴメ!」「ごめーん!」「ゴメネー?!」

 ガイドさんはすぐにライトを反らし、全員が気まずそうに謝りながらそそくさと先を目指す。そのカップルは自分達を照らす光が遠ざかる瞬間まで、こちらを一切振り向かなかった。だがちょっと待ってくれみんな!お邪魔しちゃイカンという気持ちは分かる。分かるけどさ?なんだろうこの違和感。生存者って言い方はおかしいけど、数少ない寝てないウチの生徒がこっそりデートしてたのかも知れないじゃん?それになんであの二人振り向かなかったんだろう?なんかおかしくね?あんな感じの奴らってウチに居たっけ?地元のヒトにしたってなんで無灯火?ねぇ?みんな······

          ギャアアアアアア!!

 俺の背筋が冷え冷えしていると、道路の向こうから絶叫が聞こえてきた。
「え?!イヤ今度は何?」
「夢令の声じゃね?」
「ああっ!」
 ガイドさんが道の先をライトで照らす。やっぱり絶叫の大元は叫びながらこちらに向かって全力疾走してくる夢令だった。

「く、熊だ──────────!!」

「ギャああ!」「ヒ!ヒィィ!」
「あのおバカ!事前のレクチャーであれ程野生動物に背を向けるなと!」
「助けて────!ガイドさーん」
 街灯の下をマジ走りで駆け抜ける夢令と、適度な距離を開けてドッポドッポとステップを踏む熊の表情は、犬のように笑っていた。夢令に文句を言う女子ばかりではなく、俺も含めた男子までもがマユミコ委員長の背後に殺到する。それに驚き戸惑ったマユミコ委員長は、いつもの三倍のトーンで引き笑いした。
「うええ!ヒっ!!ヒぃ─────────!」

「こ!こっちくんな!」
 熊 · バオオオオ!!

「夢令!オメェもこっちくんな!」

「そんなー!?」

 まるで熊ボーリングのピンと化した俺達。全員が目をギュッと閉じて身をすくめ、もうダメかと思った瞬間。ドサァ!という音と同時に周りが静かになる。
「??」
 全員が恐る恐る目を開ける。
 そこには、マユミコ委員長のすぐ目の前で倒れている大きなツキノワグマの姿があった。熊の姿は、ガイドさんのライトによってスポットライトのように道路の上に浮かび上がっている。成る程、これは立派な熊だ!首筋に妙にツヤツヤした大きめの黒いオデキがあるのが特徴的なツキノワグマは、未だに道路の上でうつ伏せで倒れ動かない。そして夢令。なんでお前はまたガイドさんにしがみついてんだコノヤロー!
「すげぇ!委員長が熊倒した!」
「え!えええ!!?」
「クマゴロシ!」
「ちょ!ち、違うってば!」
「クマゴロシ!」「クマゴロシすげぇ!!」「ありがとー!」

 クーマゴーロシ!クーマゴーロシ!
 
 パン!パン!パチパチパチパチ···
 全員が拍手をしながらマユミコ委員長を称える。
「も~~!」

 ガバッ!

「!」
 拍手の音が気付けになったのだろうか?熊は急に起き上がった。多分熊もみんなも何が起こったのか分からないといった表情をしてたと思う。
 そして全員が叫び声を上げようかという瞬間。俺は偶然見てしまった。
 熊に注目している全員の背後に立つガイドさんの顔が、明らかに化け猫を彷彿とさせる恐ろしい顔に変化していた。
 当の熊も、ガイドさんの大きな目と大きく裂けた口から目が離せなくなっている。

 熊 · ヴぉ!ヴァオオーー!

 訳 · 「ア!アッカさんんん!?ヒィィ!サーセンしたぁああ!」

 熊は親にイタズラを見られた悪ガキのように身をバタつかせ、来た道を逃げ帰って行く。みんなが呆気にとられている間に、俺は勇気を出して偶然を装おい、ガイドさんの顔をもう一度チラ見してみる。
 手に持ったライトの照り返しに浮かび上がったその顔は、普通の美人バスガイドさんのたおやかな表情に戻っていた。

「た、助かった?」「なんだったんだ!」

 過ぎ去った一難。
 その場でほぼ全員が胸を撫で下ろし、呼吸を整え、ガイドさんは「あらまぁ···」と言いながらまだお腹にしがみついている夢令の頭を優しく撫でている。
 チリンチリン!
「!」
 だがその安堵も束の間。今度は俺達の背後から、自転車のベル?が二回、みんなを驚かせた。

「こんばんわー!」
「!」
 そのアイドル声優のようなボイスに、トノハルがいち早く反応した。
 自転車。それも、レンタサイクルによくあるマーキングが施された自転車に乗った女の子が、挨拶をしながら俺達のすぐ横を通りすがった。
 女の子の自転車のライトが道の先で消えて見えなくなるまで、再びフリーズする俺達。
 だけどその沈黙を破った宿里の言葉が、個人的にこのKIMODAMESIミッションで一番怖かったんだ···。

「あれれ~?緑のスカート?あの娘、こないだの不審他校生徒じゃねぇ?」


「「「「「「ヒッ!ヒィィェェェ!!」」」」」」

 もう本当、なんでこんな所に?ってみんな思ったんだろうね?絶叫までみんなハモっちゃったんだよ。



        最









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