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絢爛!思いの丈!
チェイス!JIKUIZUMI!
しおりを挟む古代の森管理棟までやって来たアンバーニオン軍の少年少女達。
夢令と最が我先にと正面出入口に駆け寄り、扉を開けようとした。
しかし···
「!、鍵閉まってる!」
「でも照明は点いてるよ?」
「すいませーーん!」
続けてやって来たマユミコ委員長が閉じた玄関扉にすがり付いて叫ぶ。それに合わせ、最が軽めに扉のアルミフレームをドンドンと叩く。
「···」
マユミコ委員長の背中で服のアップリケに擬態していたクラゲ型ビットは、しょうがないな?と何らかのアクションを起こそうとした。するとその時、管理棟前の前にある道路、彼らから向かって左方向から羽音のような音と、何者かが走る足音が聞こえてきた。
「ん?」
ヴ──────────ン······!
羽音に気付いた夢令が振り返るとほぼ同時に、前のめりに飛ぶドローンが彼らの前を通り過ぎた。
「なにイマノ?」
「ええ?!」
ラーヤ。とトノハルが驚くのも束の間。ドローンを追っているであろう足音の主の奇声が周囲にこだまする。
「────ぃぇあえええォォ─────!待て───────!」
「ひゃああ!ナニアレ!」
「ひっ!ひいいい!」
驚いた最が宿里の袖にしがみつき、宿里は皆と同じく驚きながらも即それを振りほどく。
道路の向こうから走って来たのは護ノ森諸店女性エージェント、パン屋ケ丘 わんちィ。
わんちィは巨大な虫取網を両手で持ち上げて上段に構え、いつにも増してその怪獣系の眼差しを吊り上げ奇声を放ち猛ダッシュしている。頭上に掲げた虫取網は、明らかに今彼らの前を通り過ぎたドローンを捕獲する為のもののようだ。
「あっ!みんな!無事?!ちょ!ちょっと待っててねぇ?待てコラ──────······!」
マユミコ委員長達が出入口付近に居る事に気付いたわんちィは、その時だけ眉間の緊張を解いて声を掛けた。しかしすぐに前に向き直りドローンの追跡を再開した。
「な?なに···やってるんだろう?」
「あ、あのヒトここのヒトだよね?」
「スッ、ッッアレ?あの人どっかで?会ったような···」
口々にわんちィの奇妙な印象を述べ、闇に消え行く彼女を若干引き気味に目で追うアンバーニオン軍の面々。
「追いかけよう!」
「「えええ!」」
「ちょっと!マユミコ!」
マユミコ委員長は薪梨の静止も聞かず、わんちィの声がする方へと走り出した。残された全員は、仕方なしに後に続くしかなかった。
キャタン·キャタン·キャタタン···キャタン!······
専用の駆動輪が軌道の継ぎ目を跨ぐ度、琥珀号を構成する全てのパーツに音が浸透して擦れ合い、心地いい金属音を奏でる。
結構普通の電車みたいな音がするんだな~?などと思っている暇は無い。
大変質者ことベデヘム3中枢活動体は暗い中でも正確に枕木だけを踏み締めて走り、宇留と倉岸が操るレールバイクに迫っていた。
中学生男子の二馬力にしてはかなりのスピードが出ているにも関わらず、ベデヘム3との距離は付かず離れず、中々引き離すには至らない。
宇留が一瞬ブレーキを引き絞るように握る。制動感の後、レールバイクの両舷に備わったヘッドランプが、侵入したばかりのカーブを照らす。
途端に照らされた視界の先がブレて見え、若干減速している筈なのに先程の体感スピードよりも速く見える。
もしこのスピードで障害物があったりでもしたら···?
倉岸は、コーナーリングでも特に減速しようともしなかった宇留を恨んだ。だがそんな倉岸の尾骶骨を、ヒュッとした中々の浮遊感が襲う。
「うわ!」
カーブへの侵入速度が速すぎて、倉岸サイドの車輪が浮いていた。
「!」
「ごめんよ!」
宇留は身をスッと屈め重心を低くしつつ、倉岸の体を片足で外側にグイッと押し出し始めた。
「うわ!うわわ!何をする!」
ガタンッッ!
だが倉岸が中途半端に外側へ身を追いやった事で、車輪は再びレールに接地した。その振動で倉岸の体も一度内側に振り戻り、通常運転が再開する。
「お!前ッッなああ!」
ガンッ!
「ひ!」
ベデヘム3が戯れに蹴った石がレールバイクの一部にヒットした。カーブを抜け、比較的ストレート区画に差し掛かり再び距離は離れ始めていたが、スピードを殺していたら追い付かれていたかも知れない程近い距離。宇留に文句を述べようとした倉岸の背筋に汗が滲む。
「く···!」
「ぶおおおん!」
キャシーン!という音と共に宇留が叫ぶ。一瞬のギアの火花。レールバイクは加速してベデヘム3との距離が更に数メートル開く。
「ああ~!一キロ···いや五百メートル離れられれば御の字だと思ったんだけどな~!」
宇留の独り言。答えを探す倉岸との沈黙の間を埋めたのは先程と同じく、二人がジャカジャカと漕ぐ二馬力ペダルの音だけだった。
「···何故助ける?」
「!?」
「俺は···お前達を···」
急にしんみりとした口調になった倉岸に宇留は違和感を抱いた。この雰囲気には覚えがあったからだ。だが今力を抜いてもらう訳にはいかない。だからあえて宇留は言葉から感情を抜き、少し底冷えのする口調を選んで応えた。
「倉岸の体は関係なかったんだろ?だからオマエじゃなくて、倉岸の本当の言葉を聞く。···倉岸の体は、倉岸に返してもらう!」
「······」
倉岸はその言葉を、ただ黙って前を向いてペダルを漕ぎながら聞いていた。
次のコーナーが迫る。
宇留が先程同様のコーナーリングアプローチを仕掛けようとしていると、倉岸はボソリと何かを呟いた。
「心配いらねぇ、もうすぐ俺は···」
「···?」
レールと駆動輪が擦れ、金属音の悲鳴が響く。宇留にはその言葉が聞こえた通りだったのかどうか?もう一度後で訊ねようと決めた。
視界の先でカーブに吸い込まれていくレールバイクを追うベデヘム3は、線路の数メートル上に覆い被さる枝から垂れ下がるピンク色のリボンを確認した。減速するのも構わずに、その場でジャンプしてそのリボンを掴み着地するベデヘム3。
走るベデヘム3に引かれたリボンはゴムのように伸びてしなり、複数の別れ枝の合間で交差し引っ掛けている【その先のもの】に動作を加えた。
「!───────」
「うぉお!」
その時、宇留達が進む線路の先。
メゴメゴと汚い音を立てながら、枯れ木が倒れ線路を塞ぐ。
急ブレーキを掛ける宇留と倉岸。
しかしレールバイクの先端は倒木に接触し、衝撃の後に後輪が浮き上がって脱輪する。
偶然か計算通りか?レールバイクは枯れて軽くなった倒木を若干脱輪したままでやや前に押し出す形になり、町道を跨ぐ陸橋の端ギリギリで傾きながらやっと停車した。
「ぬぉ!ぅお!」
「エブ!」
倉岸は傾いたレールバイクの上でバランスを失い、道路に落ちそうになっている。だが落ちるまいとハンドルにしがみついた事で、益々レールバイクは傾き宇留も姿勢を保てなくなる。
橋上から道路まで四メートル程。···耐えられるか?
「っ···くあっ!」
「!」
倉岸が掴まりきれず落下した瞬間。
落下方向に飛び出した宇留は、倉岸の頭部を後ろから抱え込んで背中から落ちた。
ドシャッ!!!
「ぬああっっ!」
衝撃で宇留の腕の中から放り出された倉岸は仰向けでアスファルトの上に叩き付けられる。
一瞬の静寂。虫の声。
「はっ!!」
周囲を見渡して探す程でもなく、陸橋下の照明に照らされた宇留が視界に入る。
横向きに倒れて動かない。
そして頭上からジャリッ!っという足音。「はっっっ!」認識するまでもない。倉岸が陸橋の上を見上げると、ベデヘム3の黒い影が、丁度レールバイクを頭上に持ち上げている所だった。
すまい···!!!
「!」
倉岸の体が勝手に動いた。
宇留に駆け寄り、両襟を持って引き摺る。
ガガシャァアッン!
「!!」
次の瞬間、レールバイクが彼らの前に降って来た。ごく僅かの差で、宇留への直撃が免れる。
騰!···お前···!
エブブゲガは完全に支配したと思っていた自分の体、騰の行動に驚いていた。だが危機が去った訳ではない。
そして宇留の襟を掴んだままの手が開かない。宇留を見捨てて逃げようとするエブブゲガの算段はあっても、体もその場を離れようとしない。
それが騰から逆流してきた意思なのか、自分自身の判断なのか?エブブゲガは混乱する。
ドッゴッッ!!
すると約束通り、ベデヘム3が陸橋下の道路へと飛び降りて来た。
振り返り倉岸と宇留を睨むベデヘム3。レールバイクの残骸越しに、嫌な沈黙が流れる。
「倉岸 騰。エブブゲガ様···ですね?」
「!」
怪物的威圧感とは非対称な、礼儀正しくソフトでハスキーなベデヘム3の美声。だがそれがかえって倉岸に狼狽えをもたらす。
それを見て、微笑もうと口元を歪めたベデヘム3の表情が再び無表情に戻る。
「進攻できぬ分、トラップの仕込みに時間を費やせた。後は巣から出た所を追い込むまで···そこが土地神の盲点よ」
「は!」
倉岸は背中を抱いている宇留の目が開いている事に気付いた。後頭部や背中の傷が、髪や服越しにオレンジ色に光っている。宇留の体内の宝甲の治癒反応だ。
「てて、参ったなぁ?」
「喚ばないのか?アンバーニオンを?」
「そちらこそ怪獣の体持って来てないでしょ?それにもう怪獣とは滅多にケンカしないよ?そういう約束だし···ぃてて!」
ベデヘム3は宇留のフェアな部分に眼差しを細めたが、宇留の約束という言葉に注目した。
「···約束?まさか!ゴライゴ様が我々と袂を別ったのは?」
「···ん?さてね?」
宇留はとぼけながら、倉岸の肩を支えに立ち上がった。そして倉岸の表情も宇留に対する驚愕に変わっている。
ま!まさか!コイツ!あの巨獣どもを···あの準帝を···手懐けたってのか?!や、やはりコイツは···!
倉岸の中のエブブゲガが宇留に一目置かざるを得ないでいると、ベデヘム3は片方の口角を上げて笑みを浮かべた。
「意気や良し!だが配慮など無用!我々は皇帝の血より生まれし眷属ベデヘム!ゴライゴ様の寄せ集め一族とは格が違う!···さぁ来るがいいアンバーニオンよ。貴様自身が琥珀の神と成りつつある事は我が君もお見通しだ!」
「ふっ···それはどうかな?」
宇留はフラつきながらもベデヘム3のファイティングポーズに応えて構える。傷は完全に癒えていた。
「須舞······」
宇留の名を倉岸が呼んだ時、陸橋の下を車のハイビームが煌々と照らした。宇留と倉岸は思わず手で光を遮る。
「ぬ!」
ベデヘム3の背筋が震える。振り返ったベデヘム3の視線の先。大型の四駆車から背の高い人物が降り立った。
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