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絢爛!思いの丈!
琥珀のような
しおりを挟む「ふぅ···とっくの昔に···回避されていたとはな?···」
ボヤきながらやっと立ち上がったアンバニティの背後で、アサルトブラッシュとバインダーユニットが同時にブワッと浮き上がった。
「!」
アンバニティが手首のスナップを利かせながら、ピンと右手の人差し指をアンバーニオンの方に向けると、双振りのアサルトブラッシュとバインダーユニットはオレンジ色の閃光に包まれてアンバーニオンへと迫る。
〔うわっ!〕
突然の事に思わずガードするしかなかった宇留。しかしその閃光はアンバーニオンの体表面で滑らかに宝甲と溶け合っていく。やがて全身が一際凄まじく輝いたかと思うと、アンバーニオンは琥珀柱や全身の装飾も含め、機体は完全に修復されていた。
「??···」
恐る恐る目を開けた宇留の目の前には、薄いクリアオレンジ色の栞が一つ浮かんでいた。···怪訝な表情で栞をゆっくりと手に取る宇留。
【宇留!取り敢えず、いやゴライゴ殿のお墨付き貰ったから満点合格だ!···ヒメナ!···ごめんなさい·········ぅむあと!バインダーウイングのインストもそこにある!···アサルトブラッシュを使う時だけは私に認証許可求めてくれよ?】
ばつの悪そうなマネージャーのメッセージを聞き終えると同時に、宇留の脳内に新機能、バインダーウイング+アサルトブラッシュののマニュアルが着想完了した。
イメージに浮かんだのは背中から羽根が生えるビジュアル、そして体感的には肩甲骨周りに纏わり付くカシャカシャとした感覚。
「バインダー?···ウイング!···ふ!!」
ジャカカカッ···
宇留が意識を集中すると、新たにアンバーニオンの背中に出現した新規ディテールからパネルが飛び出し、そこから折り畳まれていたパーツがパタパタと飛び出しては組み合わされ、巨大なバインダーに変形していく。アンバニティに装備されていた際には腰部両サイドに備わっていたバインダーは全く同じデザインで背中から迅速に生え揃い、まるでアンバーニオンの羽根の様相を呈していた。
〔おお···〕
アンバーニオンは首だけ振り返り、NOI Zと共に羽根の様子を繁々と見ている。アンバニティは彼らの目線の高さまで浮き上がると、振り返ってゴライゴ·リパレギレムの方と宇留達の方を交互に見渡す。
「ではゴライゴ殿、今後とも彼らをよろしくお願い致します。ヒメナ、宇留、少年、色々ふっかけてすまなかったな?」
「マネージャー!」
「むぅ···!」
「···」
「よー言うわい、ムスアウの声で」
ゴライゴ·リパレギレムは胴体の傷痕をグシグシと撫でながらマネージャーに返答する。
「ご生憎ですゴライゴ殿、どうも彼以上の人間のデータが手元に無くてですね?···」
その時だった。
〔あ!ちょ!ヒメ···わ!··········!
ドシュウウウウウウ!!!
宇留の微かな一声を残し、アンバーニオンはバインダーウイングから凄まじい衝撃波を発してその場から飛び去った。
〔アンバーニオン!〕
驚き、既に遠い空中で光点になったアンバーニオンに視線を向けるNOI Z。
「まぁ待てゲルナイド、今日は仕切り直しじゃ!今は、あやつらを二人ッきりにしといたれぃ!」
〔ぁ···須舞···宇留···〕
ゴライゴ·リパレギレムに諭されるNOI Z。彼らと共にアンバーニオンの光点を見つめているアンバニティは少しずつ上昇しながら宇留達を見送った。
ヒメナ···私の口から宇留に伝えるのは我慢したぞ?ちゃんと伝えろよ?
「は!いまほハンバーヒオンじゃへ?」
海上に仰向けで浮かぶゼレクトロン、ガルンシュタエン ティアザ、ロウズレオウ。
ゼレクトロンの分厚い琥珀の胸板の上で双眼鏡を構えている藍罠の顔は、何故かボコボコに腫れ上がっていた。
「ホンロラ!スットンデったへどほ!」
そして同じく共上の顔もボコボコに腫れ上がっている。
「!」
そして何故かエシュタガの顔にはキズひとつ無く、いつも通り綺麗なものだった。
「ぐはっ!」
咳き込んだエシュタガの口から僅かに血飛沫が飛び、彼は口を押さえてその場に踞る。わざとらしく病弱薄幸美青年を演じたエシュタガだったがその血飛沫は決して重病などではなく、ちょっとだけ口内を切ってしまっただけのものであった。
「···」
「···いや、どんなに格好つけても小説だから、わかんねーよ!」
やけに煌めいているその光景を、遠くから呆れた顔で見つめる共上と藍罠。その時共上にスフィから通信が入った。
〔全くナにやってんのカねぇ!イイトシこいて!〕
「スフィさーん、修行スよ修行!宇留くんだけにやらすワケ無いでしょ?しかしみなさん!どうやら王子様も終わったようだぜ?」
「宇留!」
しばらくゴライゴの影を見ていた最終局面省チームだったが、共上がエシュタガに声をかける。
「エシュタガさんさ?何で俺ら来たか分かる?」
「?」
「このまま怪獣さんにプライベートで挨拶したいのは俺もヤマヤマだけどさぁ?一応最局も社会人として!人類代表として!、段取りとかを取ってるワケね?礼節も要るし、なによりせっかく手順踏んでくれた疾風川が怒っちゃうよ!というワケでこっそり帰るぜ?な?」
「むぅ···な、なるほど···?」
「あ!」
「!」「!」
藍罠がゴライゴのシルエットから急上昇していく光点に気付き、声を上げた。共上とエシュタガもその光に注目する。
「頼んだぜ?みんな。あとはアイツと一緒にヒメナを待つだけ“くらい„かな?」
アンバニティはNOI Z、ロウズレオウ、ガルンシュタエン ティアザ、ゼレクトロンに目配せしながら、太陽航路発動可能高度を目指して昇っていった。
時の樹液にその魂を閉じ込め無限を進む···ムスアウシリーズ···さしずめ琥珀が如き男よ···今度宇留が挫けようものなら、今度はワシが···というのは野暮かの?
ゴライゴ·リパレギレムは昇っていくアンバニティの光を目で追いながら、とっくの昔に悟り切った競いの愉悦を、宇留が操る“今„のアンバーニオンへと一瞬求めていた。
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