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絢爛!思いの丈!
ジェット·ジャック·ジョイント
しおりを挟む〔おれたちも、か···〕
シュドッ!
マネージャーが呟き終えると同時に、アンバニティの周囲が波動で溢れ返った。
キュボッ!
同じく、NOI Zとの合体形態である黒い増加装甲のアンバーニオン。モード-ジェット·ジャック·ジョイントもそれに続く。
周囲の大気を掻き混ぜながら、互いの突撃開始を制しているのはマネージャーと宇留のゴーサイン、ただそれひとつ。そしてアンバーニオンもアンバニティも、同時に左足を引いてタイミングを見計らう。
やがて大気の撹拌は大きな渦となり、ゴライゴ·コロシアムの隅々まで巻き込み駆け巡った。
『須舞 宇留、勘違いするな?この結合は思重合想とか言うこっ恥ずかしいものじゃない!』
アンバーニオンの操玉に、何処かに居る現の声が響く。だがその生意気な言葉とは裏腹に、ワクワクを隠せないかのような震えた口調がイントネーションに混ざっている。宇留はニコッと笑みを浮かべ、操玉を見回しながら答える。
「···うん、俺も今は同じ気分。なんか気が合ったね?」
『···フフフ、相変わらず気に入らんヤツだ···』
「クックックッ!」
『フ、フフ!』
『「···あはハハハハハハハ···!」』
「!」
ドドン!
宇留と現があどけなく笑い合うのを合図に、アンバーニオンとアンバニティを抑えていた楔は取り払われた。
背中で大気が弾ける音を聴きながら、瞬時に肉薄する二体。タッチしようと再び貫手を伸ばしたアンバーニオンの目の前で、アンバニティが再び消える。
〔また輪に潜った!?〕
そして次の瞬間、多数のリングがアンバーニオンの周囲に浮いていた。
『9!』
一瞬で数えたリングの数を告げる現の声。宇留も丁度数え終わった所だったが声には出さず、アンバニティの襲撃に備える。
!ーーーガカカカガシャ!ガカシュン!
リングの合間を貫いては消える琥珀色の残像。
アンバニティはリングからリングへの超高速移動をランダムに繰り返し、リング群の中心に捕らえたアンバーニオンに対してヒット&ワープとも呼べるラッシュを繰り出した。
〔ナインズゲイター···ハリーランラウンドッ!〕
アンバニティの技、アサルトブラッシュによる乱打を浴びたアンバーニオンの全身。宝甲が亀裂に塗れる。
引き寄せまで押して96···引いてあと94······
アンバーニオンは防御の体勢を保ったまま、全身の亀裂を癒着させる。重篤なダメージ部分にはまたもや疑似黒宝甲が結集し、黒い鎧が増えていく。
シュンッッ!
〔くッーーーーー!〕
閃光と共に再出現したアンバニティ。そして手に持った二振りのアサルトブラッシュの先端部分は、疑似黒宝甲で紡がれた黒い紐によってリボン結びで固定されていた。
〔クラゲめ···ゲートの【空間】まで追って来たか!?面白い!〕
パギャン!
停止信号を打ち込まれた黒い紐が砕け散る。
引き寄せまで押して91···引いてあと89······
〔!〕
いきなりアンバニティの背後に浮かぶ影。
アンバニティが右手のアサルトブラッシュで影を払うのと、左手のアサルトブラッシュでアンバーニオンの一撃を受け止めたのは同時だった。
〔···〕
ザラッ!
ストトトトッ!
〔ぐぁ!〕
アサルトブラッシュの毛先に突っ込んだアンバーニオンの貫手が霧散して崩壊し、抜けたアサルトブラッシュの宝甲毛材が数本、針のようにアンバーニオンの顔面に突き刺さる。
左手で顔を覆って後退ったアンバーニオンの頭部に、先程まで影を構築していた疑似黒宝甲の生き残りが結集する。
〔が!ぁがッッ!〕
うつむくアンバーニオンの頭部が黒く変色し、その後全身に渡ってガクガクと原因不明の痙攣を引き起こす。
痙攣はすぐに治まったものの、明らかに無茶な結合によると見て取れる不具合。その様子を窺っていたマネージャーは冷静な口調で警告する。
〔!、疑似黒宝甲をロンダリングもせず取り込むからだ。今すぐ解除しろ!〕
宇留は操玉内部でニヤリと微笑んだ。
引き寄せまで押して85···引いてあと81······
宇留は偶然を待っている訳ではなかった。
勝利条件。アンバニティ本体へのタッチ。
宇留は目的を果たす為、自身の直感にアンバーニオンとNOI Zの複合計算能力を裏付けとして設定し、自身と相手の行動の筋道、辻褄を無駄なく一直線上に重ねようとしていた。
重ねた先にある“必然„の招き寄せ。
その為の押し引き。駆け引き。行動。攻撃。演技。完全なる正解への追及。
現実そのものとの交渉をこちらの有利になるよう進め、まるであり得ない願いを叶えるかのような状況を可能な限り導くべく、アンバーニオンとNOI Zの中で凄まじい数の未来予測戦略が議論され組み上げられていく。
だが問題はアンバニティの予測能力だった。どこまでもこちらの上を行く最新鋭にして指揮官機とも呼べるアンバニティの能力を、現状ある力だけで乗り越え、上回れるか?それだけが賭けだった。
だが宇留は自分を、アンバーニオンを誇張なく信じきっていた。
無駄に動き、零れ落ちる可能性が少なければ少ない程、達成は成る。そうでなくても、なんかイイ感じであるからだ。
いいぞ?宇留。乗ってやるか。
だがマネージャーも簡単にそれを許すような存在ではない。
彼は既に、宇留の出方を粗方予想してしまっていた。
引き寄せまで押して80···引いてあと73······
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