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絢爛!思いの丈!
発 掘
しおりを挟む目映い閃光と共にアンバニティがアサルトブラッシュを振り下ろす。
アンバニティは瞬間移動を繰り返すように移動し、攻撃の時にのみ一瞬しか姿を現さないので、避ける自分もギリギリ防戦一方だ。
角の先端、胸板、手の甲、脇腹、脛。
宇宙はアサルトブラッシュがアンバーニオンの機体に触れる度に意識を過度に集中させ、部位ごとに宝甲の崩壊を防ぐ。
だがそればかりに神経を研ぎ澄ませば回避に支障が生じ、益々修復箇所が赤字のように増えていく。
まるで逆瞬きで自転車に乗り障害物だらけの道を走れと強制されているような不条理感。
自分が悔しかった。
いかに鍛練の序盤で現状に満足し、今までアンバーニオンやヒメナの力に頼った戦いをしてきたのかを宇宙は思い知らされる。
アンバニティのスピードはかつて宇留達が経験した超高速の思重合想、二つの太陽の状態を彷彿とさせる。だがアンバニティにそれらの特殊能力が発動している気配は見られない。恒常的に思重合想レベルの力を有しているとでもいうのだろうか?
尚且つ、今避ける事が出来ているのは宇宙の感覚をアンバーニオンが増幅しているに過ぎないからなのだ。
だが、そんな宇宙の些細な嘆きの合間を縫ってさえ、数ヶ所の細かい傷が破裂し焦りに拍車をかける。
と、その時······
「!ーー」
カギャキッッ!
アンバーニオンに向かって降って来たアサルトブラッシュの一撃。
宇宙は無意識の内に武器を取り、その攻撃を受け止めていた。その武器はアサルトブラッシュの圧力でキシキシとしなる。
先程までのたうち回り、エラー変性の為に放置されていた筈の琥珀柱をアンバーニオンは引き寄せて手に持っていた。
しかし、適当に練って伸ばしたような歪な形の琥珀剣に密着したアサルトブラッシュの毛先は振動を停め、能力も停止しているのか崩壊だけは免れている。
「!?」
その一瞬の隙を突き、アンバーニオンはアンバニティとの距離を置いて後退する。
アンバニティの中で、ムスアウの顔をしたマネージャーは微笑んでいた。
「宇宙、このアサルト ブラッシュは対琥珀巨神用鎮圧兵器だ。毛先から短周期超振動プログラムを直接宝甲に打ち込み、宝甲同士の結合切離を促進する」
シュンーーーーー ヒュバッ!
フッ!
「!!」
アンバニティはアンバーニオンの至近距離に一瞬で移動し、再び消えると何故か元の位置に再出現した。
「あ!」
宇宙はすぐにお互いの武器の異変に気が付く。
アンバニティの片手には歪な琥珀の剣。
そしてアンバーニオンの手にはアサルトブラッシュが一振だけ握られている。
武器はまるでマジックのように交換されているように見えた。
更にアンバニティは、もう一振のアサルトブラッシュと琥珀の剣を用いて簡単な二刀流剣舞を披露する。その舞が終わり再び構え直したアンバニティの片手には、華美かつ端正に整えられたディテールへと創り変えられた琥珀剣が握られ、キィンと鋭い音を立ててアンバーニオンにその切っ先を向けていた。
「こうしようか?宇留、アンバーニオンが今から一度でもこのアンバニティのボディにタッチ出来たら、お前の勝ちだ!たまには相手のルールで勝って誇ってみせようか?」
「う···!」
攻撃は止まっている。
試験のルールは示され、多少なりとも体を休める事が出来る筈のその時間は、ひどく圧迫感のあるものだった。
宇留は先程まで攻撃を躱していた時を懐かしむ。その時の方がまだ、比較的気楽だったからだ。
そしてアンバニティが現在使用している武器は二種類。今度相手が攻めて来た場合、武器に応じて一瞬一瞬で対応を変化させなければならない。
だがマネージャーは宇留のそんな心配を他所に、次の問題を彼の思考に被せてきた。
「宇留、人間の経験値が満タンになった時、どうなると思う?」
「?!」
「···意見でも回答でもいい、次の攻撃が止まった時まで動いていられたら、答えてくれ···〔せいぜいこいつに磨き落とされて、お前がアンバーニオンから発掘されないようにな?〕
「!」
アンバニティの気迫が変化する。
突撃の為の瞬間移動をする際の、独特な雰囲気の変化。
宇留はもう既にアンバニティのスピードパターンを読み始めていた。
宇留はアサルトブラッシュに起動を強く望む。か細い振動だが鳥肌が立つような感覚が宇留の体表を駆け巡る。
アンバーニオンの宝甲がアサルトブラッシュの能力に拒否感を催し、それが宇留にフィードバックされたのだ。
どうやらこの武器の実力は確かなものらしい。
そして予測通り、しかし宇留には対応しきれない恐るべき踏み込み速度で、アンバニティはアンバーニオンに再度迫った。
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