神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

文字の大きさ
上 下
78 / 201
絢爛!思いの丈!

ゴライゴ·コロシアム

しおりを挟む


 夜明けの海上に、まだ暗い海水みずの中から浮上した鬼磯目マーティアは、しばし黄昏を堪能しつつ目的地へと猛進していた。

 !

 周囲に無数の気配が群がる。
 しかし周囲に集った気配達は鬼磯目に近づいても尚、統率のとれた動きを維持したまま襲撃の意思を示さない。
 コティアーシュマーティアは警戒を解除し、並泳するガーファル軍団を指揮する者のコンタクトを待った。

「おはようぉ!本当にコティアーシュなのね~?」

 鬼磯目の左舷側に浮かび上がって泳ぐ一体の小柄なガーファルが、日本語で彼女に話し掛けてきた。
 前頭部にある冠のようなセンサー器官の付け根にある鼻腔が器用に動き、時折そこに被る波をプワプワと吹き飛ばしながら器用に喋っている。

·その声まさか!レミレタ?!
「ウェーイ!おひさーー!」
 驚くマーティア。彼女と旧知の仲であろう小柄なガーファルこと、先程まで胡桃下と激闘?を繰り広げていたガーファル隊長レミレタは、鬼磯目が警戒を緩めたのを見計らって更に鬼磯目に近寄った。
 ?
 鬼磯目が纏った宝甲のセンサーの側にくゆった違和感。マーティアはその予感に確約性を持たせる為、艦橋上のガスセンサーを一瞬だけ作動させる。

· ···ちょっと!お酒くさ!
「でへへへ~酔っ払いでしゅよ~」
 レミレタはわざと体をくねくねとさせながら泳ぐ。
·もー!立派になったねって言おうとしたけどやーメタ!
「さっきは仲間が色々ごめんねー?私の方は少し勝負でさ!···でね!コティアーシュ!ゴライゴ様の命により!我々ガーファル軍団第12部隊はこれよりあなたの護衛任務に入ります!ッウィッく!」
·ぬぅ!ありがとう!でも···

 マーティアがそう言い終わるや否や、鬼磯目は航行速度を上げた。それに焦ったレミレタも急いで鬼磯目に並ぼうと速度を上げて追い付く。

「ちょちょっと!お、怒ってるの?」
·ううう!違うのレミレタ!貴団の加勢は大いに感謝します!けどなんか今は燃えてるっていうかなんというか···!
「う!」

 レミレタは鬼磯目から伝わる熱血オーラにたじろぎ、僅かにスピードが落ちる。

·レミレタ!ちょっとわかんなくてもいいから黙って愚痴聞いて?!私、当たり前なんだけど色々あった上に娘扱い···娘扱いされてたの!なんかちょっとくやしい!こーなったら!どんな手を使ってでも意地でも振り向かせちゃったりする!好みのタイプはすこーしづつリサーチしてよーく知ってるんだぞぉ!ふふふ···


「ん?···「恋?」」

「!!!」
 ガーファル隊長レミレタのその一言でガーファル軍団の統率は乱れ、真剣に泳いでいた筈の全員がカクンと一瞬横倒しにコケて軍団全体の泳速が僅かに落ちる。
 その時、呆気に取られているレミレタより一回り大きいガーファルが一頭彼女達に近付き、ほぼ唸り声のような巨獣語でレミレタにそっと耳打ちする。

 以下一部翻訳。

 隊長!ドーナーバが持ち直したそうです!記憶も引キ継ギであると!

 !おお、良かったな!

 隊長は、お休みになられなくて本当に大丈夫ですか?

 泳いでる方が気持ちいいの、「それよりコティアーシュ?そういう事なら···」
「?」
 今度はレミレタが鬼磯目に耳打ちするように、顔を船体に近付けて何やらゴニョゴニョと話し掛けていた。




 

 宙に浮かび、ゴライゴを見下ろしているアンバーニオンとNOI Z。

 彼らの視線の先、ゴライゴの背負った巨大亀甲型外骨格がブロックごと豪快に移動を繰り返し、みるみるスペースが形成されていく。

「···」
 現はゴライゴの変形完了を待つ間に、NOI Zのコックピットでマーティアからのメールを再度チェックしていた。


   ゲルナイドへ

   もし嫌じゃなかったら
   ゲルナイドの能力で
   アキサを何処かへ
   運んでくれると嬉しいな?


   PS
   後で中枢活動体のコツ教えて?


 そのメールを見ながら脂汗をかく現。
「ね、姉ちゃんまさかっ!!」
 その間にも変化するゴライゴの背中。

 闘技場コロシアム

 宇留の脳裏にそんなイメージが浮かぶ。
 そのイメージの通り、海上に浮かぶゴライゴの背に直径千メートルを優に超える巨大な円形の闘技場が完成した。

「もうよいゾぃ!降りとくれ!」

 ゴライゴの申し出に従い、闘技場の中心に舞い降りて向き合うアンバーニオンとNOI Z。

 するとゴライゴの後頭部側、闘技場を見下ろす場所にある外骨格がゴソッと動いて表面が前倒しに開き、内部から巨大な何者かが現れた。
「!」「!」



「よ~ぅ!!皆、改めましてぇ!」
 高い所から二騎の琥珀の巨神に語り掛ける龍人のような人型怪獣。
 その声は老人口調のゴライゴそのものでありながら、その体幹はスラッと伸びて一切老いを感じさせない佇まいだった。
 体格はアンバーニオンより一回り大きく、先端が鋭角的に伸びた外骨格はファンタジーに登場するハイクラスの鎧を思わせる。
 そして何故か、黙っていても相手が勝手に戦慄する程の威圧感を伴っていた。

「これがワシの戦闘中枢活動体、ゴライゴ·リパレギレムじゃ!」

 その場で一歩踏み出し片足を段差に乗せるゴライゴ·リパレギレム。
 背面腰部から引き出され伸びた尾のような太い管は、どうやら本体に直結しているようだ。

「!ーーーーー」

 もしこのゴライゴおっちゃんと戦う事になったら···
 
 宇留はわかっていても、あり得ない想像を巡らせ、たじろぎそうになった。
 だがそんな宇留の想いを知ってか知らずか、ゴライゴ·リパレギレムは相変わらず緊張感の無いセリフで宇留に語り掛ける。

「宇留よ!こりゃあれじゃよ!昔のゲームとかでボスを倒すと中から出てくるコアボスいるじゃろ?あれじゃよ!アレアレ!」
「···あっ!あ~~!なるほどー!アレ!あはは!」

 たったそれだけの例えで、宇留の肩から力が抜けた。
 ヒメナはロルトノクの琥珀アンバーの中で合点がいったようにポンと拳を手酌に受け止め、現は呆れたように目元を覆う。

 緊張感がほどけた所で、ゴライゴ·リパレギレムはスパーリングの条件を提示する。
「二人共、全力は出しても手加減も忘れぬ事。勝ち負け以外に先に修羅場った方も負けとする。何事かあればワシが間に入る以外は戦闘スタイルは自由!よいか?」
 
「「はい!」」

 一切のタイムラグ無く、同時に答える宇留と現。
 構えて向かい合うNOI Zと片柱のアンバーニオン。

 宇留はポケットから龍剣山神社のお守りを取り出し、お守りを握った手を眉間に当てて想いを込める。





 アンバーニオンが残った片方の琥珀柱を掴んで外し、上空へ放り投げると同時に駆け出した。
「!ーー」
 それに合わせてNOI Zも間合いを詰める。
「ーー!」

 ギャキィィィン!!

 琥珀の巨神達は両手を組み合い力比べをしながら、お互いの顔をごく至近距離で突き合わせてその場で睨み合った。











 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち
SF
  脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。  その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。  その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。  そして紛争の火種は地球へ。  その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。  近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。  第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。  ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。  第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。  ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~

阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。 転生した先は俺がやっていたゲームの世界。 前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。 だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……! そんなとき、街が魔獣に襲撃される。 迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。 だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。 平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。 だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。 隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。

神樹のアンバーニオン

芋多可 石行
SF
 不登校から立ち直りつつある少年、須舞 宇留は、旅行で訪れた祖父の住む街で琥珀の中に眠る小人の少女、ヒメナと出会う。  彼女を狙う謎の勢力からヒメナを守る為に、太陽から飛来した全身琥珀の巨神、アンバーニオンの操縦者に選ばれた宇留の普通の日々は、非日常へと変わって行く···  今、少年の非日常が、琥珀色に輝き始める。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...