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絢爛!思いの丈!
鋼の人魚姫
しおりを挟む「ようこそ」
アンバーニオンとNOI Zに両脇を抱えられ、水中を猛進する鬼磯目。
コティアーシュの視界に一瞬、宇宙、太陽、巨大な樹、というイメージ画像が連続してフラッシュバックするように映り、声とも文字ともつかない歓迎の挨拶がそれに続いた。
「!」
そして、今まで覚えていたかのように、いつの間にかメモリーの底に急に現れた宝甲に関する膨大なデータ。
マーティアが驚いていると、NOI Zが再び彼女を呼んだ。
〔コティアーシュ姉ちゃん!?〕
·ゲルナイド!
〔姉ちゃんよく聞いて?ゴライゴ様は正気じゃない。原因は見当がついてる。このまま逃げ切る事も出来るけど、俺達はふたりとも助けたい!〕
(·····ァ···!)
アンバーニオンも鬼磯目の赤熱化した装甲に浮かぶ、琥珀色の泡立つ赤い目を見て頷く。
ふと、そんなアンバーニオンからの想文を感じたマーティアは、理解してしまった。
そんな、こんなに想文が不安定だったなんて···!
鬼磯目とマーティア。その出自はあくまで人工のものであり、たとえ怪獣由来の生体部品が機体に使用され、いくらAIに前世生体の記憶が宿り、僅かな宝甲の力をもってして奇跡的に想文能力の一端が発現してもなお、所詮はゴライゴの言う通り、自分は自分の紛い物なのだ。
それを思えばこそ、自身の存在意義について辛い思いをすると分かっている筈なのに···。
まだ先がある。まだ先があると何かが心を導く。
そして琥珀のオーラを纏う度、普段よりも何倍も改善点に気付かされる。
そして思えば思う程
思われれば、思われる程···
〔やっぱり、コティアーシュ!〕
「!」
マーティアは、アンバーニオンから直接響く友人の声で我に帰った。
〔コティアーシュ?やっぱり絆創膏を貼った時と違う。想文が不安定ね?···繋がるヒト、繋がりづらいヒト、繋がらないヒトって極端だったんじゃない?〕
·アンバーニオン!···ヒメチャン!私も丁度同じ事を···
「姉ちゃん、だって···?!」
晶叉は次々と現れるマーティアの知り合い達に軽く驚いていた。
アンバーニオンにゲルナイド。鬼磯目の各両サイドに居るのは琥珀の巨人ともう一体。マーティアの寝言に登場すると束瀬が言っていた存在。
それが今、アンバーニオンと共に鬼磯目の救援に訪れたという事実。
そしてゲルナイドこと漆黒の琥珀の巨人、NOI Zは再びマーティアに対して説明を続ける。
〔今ゴライゴ様は寄想の書に取り憑かれている。ガーファル達が戻って来る前に、“俺達„で寄想の書を出来るだけ潰して回る!〕
·ゲルナイド!その体は···?
〔俺の事は後!アンバーニオン!、姉ちゃんを頼む!〕
〔うん!任して!〕
〔ああ!〕
鬼磯目から離れたNOI Zが一度、機体を捻ると同時に三体に分裂した。
体高十五メートルほどのNOI Zが三体。現の乗ったNOI Zだけがアンバーニオンに良く似た顔で、残りの二機は鋭角的な装甲版を張り付けただけの無個性な顔だった。
〔行くぞ、相手はゴライゴ様だ油断するな!〕
〔〔了解!〕〕
分裂したNOI Zこと、RENOI Zを制御する統合AI達が気合い充分に返答する。そして三機はもと来た航跡を辿るように、ゴライゴの居る方へと戻って行った。
·ゲルナイド···あんなに強くなって···ありがとうアンバーニオン。ゲルナイドとお友達になってくれたんだね?
〔うん、まぁ···そんなトコかな?···コティアーシュ、ちょっとあっちで待ってて?おっちゃんは俺達が止めてみせる!〕
·待って?ウルチャン!
「ど、どうしたの?」
アンバーニオンは鬼磯目の方を向いた。目のように赤熱化していた箇所の加熱が収まり、沸騰する琥珀色の泡涙が少なくなっていく。
·私は、大切な中間達に私の本当の声を届けたい!こんな私の為に、強く、強く思ってくれるみんなの為に!だからお願いアンバーニオン!思い合う力の方法を教えてほしい!
〔コティアーシュ···あなた、宝甲の力を···!〕
「コティアーシュ···」
「マーティア···君は···」
マーティア、ヒメナ、宇留、晶叉の思いに反応したアンバーニオンの宝甲と、鬼磯目に使用されている宝甲が磁石のようにフッと引き合う感覚。
今ならアレが出来る。
確信を得た宇留はニコッと微笑んでマーティアの願いに答える。
〔よーし!、わかった!···コティアーシュ!取り敢えず!合体だぁ!〕
·ガッタィ!?!?
〔コティアーシュ!私達の···アンバーニオンのウエストに後ろからベルトのように噛み付いてみて?!〕
·えええーーそんな!?
マーティアが狼狽えている間にも、アンバーニオンは鬼磯目を離して前方に回り込む。そして背部スタビライザーを背後に向かってシュランとしならせると、それは合体用ガイドの様相を呈していた。
「行こうマーティア···彼の言う通りにするんだ!」
「アキサ!?危険かもしれませんよ?もしアキサに何かあったら···私···」
「大丈夫!俺も君の本気に心から答えよう!彼らも···君のトモダチも一緒だ!」
「アキサ······うう!···はいっ!ありがとうございます!」
「鬼磯目!捕獲爪全展開!」
「りょーかいです!!」
晶叉は操縦桿を握って前方を睨む。
二機は互いに水中を進み加速しながら、ゆっくりと距離を縮めてゆく。
·ウルチャーーン!ちょい小蕎麦湯ィですよーー?
「うあーー!それ言っちゃう?本当は俺が···」
「思重、合想ォ!」
「ヒメナもダミ声止めてーーーーうわあああー!!」
鬼磯目がアンバーニオンのウエストにガジャンと噛み付いた。
その途端、アンバーニオンの宝甲の鎧が凄まじい膨張を始めた。
ゴライゴの超巨大な外骨格の表面を超高速で泳ぎ回り、指先にスパークさせた紫電で虱潰しに寄想の書を破壊しているNOI ZとRENOI Z。
だがゴライゴはそれを意に介す事もなく悠然と進んでいる。
「すごい数だ、これでは···」
あまりの寄想の書の多さに現がうんざりしていると、進行方向の先から光が差した。
「············!」
今まで暗く落ち窪んで真っ暗になっていたゴライゴの目元に、一瞬光が灯る。
シュパーーー!!
ゴライゴの僅か数百メートル脇を、巨大な光の矢のようなものが一筋通り抜けた。
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