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絢爛!思いの丈!
波の下の逃避行 ③
しおりを挟むゴライゴの気配を追うNOI Zに追随し、日没が迫る海上を低空飛行で飛ぶアンバーニオン。
新たな動力源であるヒモロギング ドライブは快調。
機体を包む浮遊空間が時折海面を水切り石のように叩き、二機が加速するための一躍を担っている。
「···あ!、ウリュ!」
〔避けろ!〕
「!?」
その時、ヒメナとNOI Zがほぼ同時に警告する。
そして宇留もアンバーニオンのセンサーを通して、前方の海中に何かが集結するのを確認した。
その気配の中心。いきなり海中から現れた黒い巨大な両腕が、アンバーニオンの両足付近の浮遊空間に干渉する。
「うわっ!」
バランスを崩したアンバーニオンは、海面にビシャンと叩き付けられながら水中に没した。
〔く!あいつら!〕
NOI Zは身を翻し、空中でドリフトするように振り返ってアンバーニオンの没したであろう場所の波紋を眺めた。
アンバーニオンは海中で体勢を整えながら敵の姿を確認する。
全身が黒い巨大な人魚が三体。
下半身は魚類のようで、上半身は人型。しかし人型は人型でも、決して美女などの姿ではなく、ボコボコとした節々がかろうじて人型を保っているようなどす黒い怪物が、周囲を見渡すアンバーニオンを取り囲み睨んでいた。
更にその背後にも、決して小さくはないヒルのような生物が何匹も蠢いて泳ぎ回っている。
〔アンバーニオン!〕
「!」
アンバーニオンの頭上から湧き降りて来た泡の柱の中から、海中へと飛び込んだNOI Zが姿を現した。
〔アラワルくん!こいつらは?〕
〔ゴライゴ様の親衛隊、ガーファル達だ!こんなナリだが、頭も良くて真面目な奴らだ!戦うなら打撃が有効だが軟体故に生半可な攻撃では通らない〕
〔仲間なんでしょ?大丈夫?〕
アンバーニオンとNOI Zは背中合わせになってガーファルの群れを警戒する。
〔···大物同士であれば手加減する方が無礼さ、どっかの誰かさんみたいにな?それにもし仮に体が千切れても、一番強い細胞片から再生するから大丈夫だ〕
〔うぬぅ···怪獣の大丈夫はわからん!〕
〔······まだ俺を怪獣だと思ってくれるのか···〕
〔え?〕
〔!、来るぞ!〕
NOI Zは大きめのクラゲ型ビットを両手に呼び寄せ掴んだ。
左右二体づつ。触手同士をがっちりと組んだクラゲ型ヨーヨーは、NOI Zの指の根元と紫電の糸で結ばれ、ガーファル達に見せつけるように何度かスローダウンを繰り返す。
アンバーニオンは両肩の琥珀柱を取り外し、胸の前で連結させた。
しなっていた琥珀柱は水平に伸びて細まり、アンバーニオンは完成した琥珀棍を後ろ手に構えた。
「ウモッッッ!」
一番大きい人魚、ガーファル集合体が一声号令すると同時に、泳ぐガーファル達は泳速を上げて宇留達に殺到した。
一方。ゴライゴから逃れる鬼磯目の船尾にはガーファル達が連結した黒い帯が絡まっていた。
·うううう!ガーファルのみんな!離して!
マーティアの願いも空しく。ガーファル達は一切の躊躇いを見せない。
鬼磯目は機体をよじり、やむなくガーファル達の帯に船首捕獲爪を突き立てる。
もう既に任意での自由な開閉が可能になっていた捕獲爪だったが、ガーファル達はパラッと解れて素早く爪を躱した。
·ぬーーー!?
マーティアは宝甲のエネルギーで増幅した空間認識能力を用いて、周囲にガーファル達が連結して待機しているのを確認して僅かに怯む。
·アキサ!大丈夫ですか?
「ああ!殆ど慣性力を感じない!」
· ······!
怯えてタイムロスした上、そのせいで重深隊の仲間達に迷惑をかけた事を悔いるマーティア。
その時···
サーーーー
明らかに海中の気配が変わる。
水中のガーファル達が一斉に鬼磯目から距離を取って離れる。
「来た!」
「!」
晶叉は身構えてソナーの画面を見た。丁度。画面の隅に島のように巨大な影が滑り込んで来た。
!!、ゴライゴ···さま···
マーティアが見つめる先、ほの暗い水中の向こうにゴライゴの巨大な顔が浮かび上がってきた。
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