神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

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絢爛!思いの丈!

愛キャラ

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 小型アクプタン70機。
 大アクプタン4機。
 クロヴァウタン5機。
 空飛ぶ巨大なペットボトルキャップのような飛行物体が2機。

 そして空中に浮かぶ奇妙な戦艦が、機影群の中心に陣取っている。

 アルオスゴロノ帝国第一空戦隊の主旗艦。
 ヴェスフィンプ。

「ハグスファンめ!手こずりおってからに!」
 ブリッジのメインモニターには、若者二人がそれぞれ操る裂断とエゴザーガが映っている。
 艦長を務める仮面を付けた肥満体型の男、ボクモス将軍は、まるで戯れるように戦っている二機に苛立ちを見せた。
 タカアシガニの甲羅を用いて製作されたその仮面は、両目の部分だけがくりぬかれ、眉間には黒い手書きの漢字で 健康 と縦書きで描かれている。
 ボクモスは、やがてこちらに気が付いた様子の裂断とエゴザーガを、モニター越しにギョロっとした三白眼で更に睨んだ。


〔ボクモス将軍!どういう事ですか?一騎討ちという事で俺は陛下ウィトリルから承っ······

 ハグスファンは通信で弁明を続けていたが、ボクモスは通信担当の兵士にボソッと命令する。
「切れ!」
 無感情かつ機械的な動きでハグスファンとの通信を途中で遮断する通信担当の兵士。
 その兵士だけでは無く、ブリッジに居る全ての兵士は、体にフィットしたグレーのスーツを着たマネキンそのもののような姿をしている。

「ハグスファン!お前の役目は終わったのだ!···アクプタン349機、クロヴァウタン3機、散って行った仲間達99機!その仇である裂断を我々の総力をもって潰してくれるわ!···陛下ウィトリルの御予想通りのヤツも釣れたようだしな···?」

 
 


 ドウイウコトダ ヒキョウモン

 ダカラシラナイッテ

 ウルセエ バカ

 バカッテイウノハ アタマガワルイッテイミジャナク ジブンノオモイドオリ二ナラナイッテイミデ アタマノワルイヒトガ ツカ···

 ウルセエ ジャナクテ マブシイ ドサクサマギレ二 メツブシシヨウトスンナ
 最後に鈴蘭は、嫌がらせで裂断の投光信号を長めに点灯させる。
「うわっ!」
 それをしばらく眺めてしまったハグスファンの視界に焼けが残った。
「な!なんて事しやがる!」

 その後も裂断とエゴザーガは、互いのパイロットの意見もんくをチカチカと投光信号で伝え合ってはAIで翻訳し合う。

 その合間に、ハチの大群のように押し寄せた小型アクプタンの群れが彼らの周囲を取り囲み、グルグルと旋回し始めた。


「追佐和ぁ!」
 裂断のピンチに、重翼隊の指揮支援機、S-R8の機内で八野が悲痛な声を上げる。
 だが、レーダーを見ていた隊員が嬉しそうに笑顔で報告する。
「隊長!アンバーニオンです!」
「!、おお!」

 裂断のバックアップに急行していた二機の補助戦闘機、K-24Mカブシムの横を超高速で追い抜き、アンバーニオン オドデウスが裂断の元へ急ぐ。

「追佐和さん!」
「ねー?ウリクン!“モヒトツ„作戦いいかなん?」
「?」
 ヘッドマウントディスプレイと化したオドデウスの両掌の内側、画面のある一角にアニメのワンシーンがワイプで映る。
「?···このキャラ!ウリュそっくり!」
 ディスプレイと視界をリンクしていたヒメナが感想を言い終わる前に、オドデウスは概要の説明に入る。
「「ドッキング」の前にめっちゃイケボでこの人のモノマネしながら追佐和さんの事呼んで欲しいん!大丈夫だから!」
「ええええ?!」
「こっそり裂断くんに宝甲も仕込んでおいたん!声も思いも届くん!」
「その方が良さげね?」
「お!丘越さんまで!?···ん~、なんだかわからないけど、じゃ、じゃあ···ん!ん!!」
 咳払いをして声色を整える宇留以外の全員が心なしかニヤリとする。
 
 アンバーニオン オドデウスの向かう先には、小型アクプタンの群れがまるで蚊柱のように渦を巻き、裂断を追いかけながら取り囲んで飛んでいた。


「うわ!お前ら!ヤメローー!」

 七~八機の小型アクプタンにたかられ、完全に捕まったエゴザーガは、呆気なく蚊柱の外へと連れ出された。
 裂断はバルカンを斉射してアクプタンに弾丸を当てようとするも、AIの目視接近警報が攻撃を阻んだ。
「くっ!」
 鈴蘭は裂断の自壊を覚悟して、セミアナログ操縦に切り替えてでも斬撃による攻撃をしようとした。

 その時、

〔ヌワーリェ!じゃなかった!、レイラァア!アンバーニオンに!力を!〕
「!!!!!」

 鈴蘭の耳に、子供の頃からずっと焦がれていたアニメのキャラクターそっくりのイケボが届く。
 厳格な女武士の表情から一転、鈴蘭の表情がはわわと乙女にとろける。

「は?をわはわわぅぁ?♪!?」

〔追佐和さーーん!
 私達を!
 信じて下さーい!〕

「お!お!音出さん!?」
 アンバーニオン オドデウスが小型アクプタンの蚊柱に突っ込んだ次の瞬間、裂断がガコンと揺れた。

 小型アクプタン達の蚊柱はバッと拡散し、中心の裂断とアンバーニオン オドデウスから離れる。

 ジャキン!

 一呼吸。間を開けたその時、先程まで裂断の周囲を覆っていた全ての小型アクプタンが同時に両断され爆発する。

「なんだと!」
 ボクモスが連続で爆発する小型アクプタン達の白い爆煙に驚く。

 アンバーニオン オドデウスの右手には、剣のようなユニットに変形した裂断が結合ドッキングしていた。

「···なんで···なんであなた達が乗ってたり!知ってたりするのーーーー?!!」

 笑顔で不満をこぼす鈴蘭の強い情動エモーションに呼応し、裂断のソージウムブレードから金色に輝くエネルギーソードがシュランと伸びる。

「「「うおおぉぉぉお!」」」
 
 鈴蘭、宇留、オドデウスが同時に叫ぶ。
 その輝く剣を振りかぶったアンバーニオン オドデウスラッシュは、ボクモス率いる部隊に向かって突撃して行った。








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