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絢爛!思いの丈!
具現の想い
しおりを挟む「···さて!続きまして···!」
中国地方での隕石迎撃に付随した怪獣討伐ミッションを終えたアンバーニオンは、東海地方沖上空を北上していた。
ヒメナは宇留の胸元の琥珀の中で、目の前に浮かんだ宇留のスマホの画面に表示された護ノ森諸店ホームページのシークレットルームにあるコンテンツ、がんばれサニアン ワンこと、アンバーニオン応援コメントをラジオパーソナリティー風に淡々と読み上げている。
そして何故か、タップもしていないのに画面が前後左右自在にスクロールしていく。
「···怪獣をこらしめてくれて、ありがとうございました」
「ハイ!」
どうやら宇留も、アンバーニオンの巡航に集中しながらヒメナのラジオごっこにノっているらしい。しかし二人共に表情に茶化したような曇りは無く、リラックスした喜びのような笑顔に溢れている。
「えー、指先程のシャリさん!応援頂きました!「ありがとうございます」ありがとうございます!······怪獣をこらしめてくれてありがとうございました。四国にイトコが住んでいるので、大事に至らず助かりました。世界が大変な時ではありますがまたよろしくお願いします!軸泉また行きたいです!今度はレールチャリ乗るぞ!ありがとうございました」
「ありがとうございまーす」
「と、言うことで。ハイ!こちらこそ!軸泉に!来て!下さいね!「ハイ!」続きまして······!?」
ヒメナは少し不思議そうに次のコメントを眺める。
「···ヒメナ?」
「ねぇウリュ、名前無いけどまたこのコだよ?」
「?」
宙に浮かんだスマホが上を向いて傾き、画面が宇留の方を向く。
「ひがいがすくなくて
めざましいかつやく!
なかでもスゴイのが
ゆみやで
こうげきしたことですね···?」
···ね?、ウリュ?」
「!」
このページでたまに見かける個性的な文面。コメントを読み終え、キョトンとし続ける宇留にヒメナは回答を求める。ヒメナはうっすらと微笑んでいたが、その表情に宇留は気付かなかった。
「···」
その時二人が感じた少し不思議な感覚の合間を、新着コメントの通知音が遮る。
ピコココン!
「?、ちょいと軸泉まで乗せてってくれカッコ肉球」
「え?」
「?、急ぐんですん!」
「え?」
「?、三名お願いいたします」
「え?」
ほぼ同時に新規コメントが三つ更新され、ヒメナが読み上げたコメントを宇留は一瞬理解出来なかった。
アンバーニオンがもうじき鍋子の琥珀の泉に到着するか?というタイミングで彼女達はやって来た。
「ええ、いいですよ!どうぞ!」
「え?」
ヒメナの招きに応じ、操玉が僅かに光って揺れ、丘越 折子、音出 深侑里、巨大猫アッカが姿を現した。
「うわぁ!皆さんお揃いで!」
「お邪魔します」
「こんにちわん!」
「ブニャ!よぅ!スマイ!」
「アッカ!」
「···宇留?疲れてる所で急に申し訳無いんだけれど、私達を軸泉まで送迎してくれるついでに、まずは最初に陽陸沖まで飛んでくれないかしら?」
「丘越さん!···はい!俺は全然大丈夫ですよ!?」
「押忍!ウリクン!急いで欲しいんのです!私の予言が正しければ、あっちで決闘中の鈴蘭ちゃんがいずれ酷い目に逢っちゃうんのですん!」
「オドデウスさん!って追佐和さんが?!!···はい!わかりました!」
「ぅおおぉ!、どうもですん!」
オドデウスは宇留の背後に回り込み、両手で宇留の目元を覆う。
次の瞬間、オドデウスとの思重合想が成立したアンバーニオンは光に包まれた。
そして琥珀柱が変化した両肩の巨大な翼は周囲の大気を激しく叩き付け、一気に機体は加速する。
アンバーニオンの空戦形態、アンバーニオン オドデウスは、一路I県沖を目指した。
アンバーニオンの変身が完了して間も無く、宇留は三神の雰囲気がいつもと違う事に気付いた。
現実として目に出来ている訳ではないが、オーラが煌めいているというニュアンスを実際に感じた。
「···あの?、みんな、何か良いことありました?」
「うふふ···まぁね?」
「ニュフフフ!」
「き!き!気のせいですんよ!」
オドデウスの掌が熱く火照り、宇留の瞼が火傷しそうになったが宇留は我慢した。やはり気のせいでは無かったらしい。
「それはまた後で話そうね?」
折子が、いつもの少し疲れたような優しい笑顔を宇留に向ける。
「スマイ!お前こそなんか美人の香りがするぞ?浮気か?」
「!!、っっがっ!そ!そ!そんなんじゃないよォ!なんて事言うの!」
「へぇん···?」
一体、誰に気を使ったのか?
宇留の頬が熱く火照り、オドデウスの掌が火傷しそうになったが、オドデウスはニマニマしながら我慢した。そして空かさずヒメナがフォローに入る。
「バジーク アライズ!、冗談抜きに彼女は新人で付喪神由来だけど土地神としての才能は確かです。注目しておいて悪い事は無いかと?」
「あら···これは···!」
折子はヒメナから受け取った想文を瞬時に理解し、アッカとオドデウスとも共有する。
「弓矢の具現想武技か、俺らも負けてランねーナ?」
「そうねん!」
「スマイもこんなに忙しくなるんだったら、あっち行く前に軸泉で家族でもっとゆっくりしてりゃヨカッタんだ!」
「いやは···それは···」
「んニュ?どうしたんだヨ?」
「アッカ···実はね?···」
ヒメナはアンバーニオンが軸泉から出発前、宇留の父である春名と、柚雲の恋人である風喜が初顔合わせをしていた事を明かした。
「···だからウリュ?ひょっとしてすぐに出発したのって修羅場の雰囲気がイヤだったとかなの?」
「ナェー?!」
ヒメナからいきなり振られた耳年増的な質問に、宇留は変な声で驚いた。
「www···そ、そうニャのか?www」
「ち、違うよヒメナ!そうじゃないよ!父さんはそんなヒトじゃ無いよ!···姉ちゃんから紹介があったのは駐車場だったんだけどね?ペットボトルの水を飲みながらポカーンとしてた父さんが後退りしてバーンと車に背中をぶつけたと思ったら!ちょっち仰け反った後で地面に向かって水を霧状にブシィィィィ!って吹き出したのね?」
「フフフフフ···!」
「そしたら母さんも悪乗りして!親心破損!損害不明!とか、遂にキタァーー!とかはしゃいじゃうしモー!俺、超恥ずかしくて!でもう!義兄になる人に変な家族って思われたらどうしようって思ったんだよぅ!」
「ニャハハハ!そうか!···って?義兄さんにゃと?あの姉ちゃんと?」
「「···えええええ!」」
祝福と歓喜の声を上げる女性陣。
そして宇留は、恥ずかしそうにぐぬぬと歯を食い縛り!機長としての責務に戻る。
「さ、さあ!もう着きますよ!」
「!」
その時、アンバーニオンの背後、遠くの海から地鳴りのようなプレッシャーを宇留は感じた。
宇留以外の仲間達は、まだはしゃいで笑っている。それは宇留だけが感じた事のようだった。アッカ達の笑い声も隣の部屋の笑い声のようにこもって聞こえる。
そして宇留は、隕石迎撃作戦の現場からいきなり姿を消していた鬼磯目潜水艦の事を、何故か思い出していた。
※もしよろしければ、本編は、神樹のアンバーニオン 番外編 大爆想 機械人形節 、をお読み頂く事でご理解が若干深まると存じます。
お手数ですがよろしくお願い申し上げます。
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