神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

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INTER MISSION

伝 説

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 所はI県の軸泉市!

 夏を迎えたばかりの不思議な地方都市を騒がす一人のやからがおりました!

 その名を怪人マジックフタエ!
 例年に及び、性懲りも無く収穫直前のスイカをなんでか狙います。

 迎え打ちますはいつかもこの野郎をとっちめて被害の当たりを付けておりました女二人!、ベーカリーわんちィ & ランチャーパニぃ

 朝から微妙にぬるい気温が鬱陶しい日の朝、早速今年もマジックフタエは、あえなく!現行犯御用となったのでございました!





「···わんちィでね?、騒ぎに乗じてそのヒトカッピカピになったままキャンプ場に放置されちゃったんだけどね?その後やって来た台風の雨を吸収して復活したのね?その時の第一声が「ハァ!···しぬかとおもった!」って!プックックッ!」
「フフフヴ!」
「あんたは笑うんじゃないよ!キリキリ歩けぃ!」
「くっ!チクショウ!」
「······」
 
 スキンヘッドのアラサー青年こと、スイカ泥棒の怪人マジック二重瞼フタエは、後ろ手に組まされた手首に細いレディースベルトを巻かれて拘束され、左右から彼女達に取り押さえられながら市中を連行ひきまわされていた。
 その異名の通り、両目の瞼まぶたには中太の黒いマジックペンで二重瞼が描かれている。

 プ!     クククッッッッ
 わ!笑うな!お前のつまらんネタでは決して笑ったりせんぞォォ!

 クッッッッッ!な!なんなのこのヒト!

 わんちィとパニぃは喉の奥で笑いを噛み潰す。
 そんな時、丁度通り掛かった歩道沿いの工務店のスピーカーから、始業前点検の社内放送が響き渡った。

〔···あー!あー!ンン!、マイクテス!マイクテスッ!···ジスィズァ!··· ペン!〕

 プグククゥクッッ!
 今時、こ、こんな!

 その社内放送を聴きながら、ペン!という言葉と同時にマジックフタエの書き込み二重瞼を同時に見たわんちィとパニぃは、再び笑いをこらえた。

 くっ!オノレェ···!力が抜けるゥ!

 この状況を察してか、パニぃが違う話題を繰り出した。グッジョブ!という視線を、わんちィはパニぃへと返す。しかし···
「···でさぁ?わんちィ?例の異空間にあるお店って最近行った?ほら!凄そうなヒト達とオコパーしたって言ってたでしょ?···!」
 わんちィは怪獣のようなギロッとした視線をパニぃに向けて笑いを堪えているようだった。どうやらそのお店でナニかあったらしいとパニぃは察したが、彼女は話題を変える気は殊更ことさら無いようだ。
「···ぁあ、なんかゴメンね?でも変だよね?軸泉には存在しない薄いモヤを抜けた先にある未知のお店、貰ったお店のマッチはちゃんと手元にあるのにね?これからも行って大丈夫かな?」
「···うーん、大丈夫でしょ?ヨモ何とかとか、存在ナンチャラ周波数とか、パニぃが心配してるのはその辺でしょ?お料理もお酒もウマかったし!大丈夫大丈夫!」
 
 二人が油断していると、歩道沿いにある民家から、皿等が割れる音と共に夫婦喧嘩の叫びが聞こえて来た。

「ぅわあー!カアちゃん!ヤメチクリィ!」
「全くモーあんたはァ!モーそんなんだから速度取締りのカメラに変な顔で鼻くそほじりながら車で爆走してるトコバッチリ写真撮られちゃうのヨぉ!」

 プグォクッックククツツ!

 見知らぬオッサンのその状況を夢想して笑いを堪える二人。そしてマジックフタエも肩を震わせて律儀に笑いを堪える。

 ク···!オメェも笑ってんじゃないよ!

 クソぉ···ッ!こんな!こんなん···で!

 そして二人は見てしまった。
 項垂うなだれるマジックフタエの頭頂部の一部が、ペコッと若干可愛く凹んでいた。
 それはマジックフタエを捕まえた時に、わんちィが放り投げたハイヒールの踵が直撃した部分だった。
 
 全くモー!ちょっとは若いワケーんだからそんな凹みすぐに戻れよ?
 なぁ?

 ···といった視線をパニぃに送るわんちィ。そしてそれはまるで想文のように、的確にパニぃに伝わった。
 プ!ウゥ!
 笑いを堪えるパニぃの頬が膨らむ。
 更に歩みを進める彼女達の視線の先で主婦が二人、オホホと世間話に花を咲かせていた。

 も!もう勘弁してくれ!さっきからなんなのよもう!
 
 一瞬だった。
 一瞬目を離し、再びマジックフタエの頭頂部に視線を戻した二人は我が目を疑った。
 凹んでいたハズの頭頂部の凹みは膨れ、小さめの可愛いたんこぶとなってプクッ凸と膨張していたのだ。

 フ!フ!ゥフ!も!、もう!許してッググ!

 そんな二人の願いも虚しく、主婦達の会話が聴こえて来る。
「奥さん!前回の河川敷ドラマ、よっちゃん北行き伝説ご覧になりましたぁ?私もう笑っちゃって!」
「ハイハイ!のホホホホ!」
蝦夷地えぞちに渡ったよっちゃんの前にお兄さんのそっくりさんが現れるシーンで私笑っちゃって笑っちゃって!」


「「フッッフフフフフ!」」
 パニぃとマジックフタエは同時に吹き出して笑った。
「いや!お前らも視てたんかい!」

 突っ込むわんちィのポケットの中から、メッセージの着信音が鳴った。

「ん~?ハイハイぃ?」


 画面を見たわんちィの表情が驚きに変わる。
「パニぃ!宇留くん帰って来るって!」
「「ええ!?」」

 わんちィ、パニぃ、マジックフタエは、スマホの画面をほぼ同時に覗き込んだ。











 
 
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