神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

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復活!琥珀の闘神!

華の熱

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 ゼレクトロンの操玉コックピットで、自分と椎山のドッグタグ、そしてその同じネックストラップに括られた重拳パンチくんのAIが入ったメモリを左手でまとめて持って構えた藍罠は、右手の甲に装着されたナキルの琥珀アンバーの表面に、メモリの端子をカチッと接触させた。

「行くぜェ!パンチくん!」
 ·ピーーーン!

 その瞬間、ナキルの琥珀アンバーは、半付喪神化はんつくもがみかしているパンチくんAIの力に答え、目映く輝いた。



「「思重着想シンクロス インストール!!」」
「「来いッッ!超重琥珀拳アンブロイドフィストォ!!」」


 藍罠と椎山の掛け声に合わせ、ゼレクトロンが右手の手刀をスパッと天に掲げた。

 すると手刀の指先から、オレンジ色の巨大な魔方陣が迅速に回転しながら現れ、ゼレクトロンの頭上へと熱と音、光と衝撃波が降り注ぐ。

 フゥゥゥゥンッッ!!

 ゼレクトロンが息を溜めるように魔方陣に意思を集中させると、魔方陣はゆっくりと反時計回りに回転しながらゼレクトロンの肘の下まで下りて来た。魔方陣が通り過ぎ、撫でられた後の右腕は黄金色に輝いている。
 そして藍罠は、かつて腕にしがみついて来た巨大なカブトムシこと、ゼレクトロン幼形活動体の感触を思い出していた。

 ヌウゥゥゥンッ!!

 ゼレクトロンの気合一声と共に、今度は魔方陣が瞬間的に逆回転して指先より上まで上昇し、魔方陣から出現した巨大な腕の指先まで戻った。

「!!あの腕はっ?!いかんッ!」

 エザンデッフの後方に戻って来たベデヘム3は、まだ輝きに包まれたゼレクトロンのその巨大な右腕に見覚えがあった。

 それはかつて、良夢村での作戦中に現れた巨大な琥珀の腕。

 ゼレクトロンが巨大になったその右腕の手刀を振り下ろすと同時に輝きは落ち着き、それに合わせて琥珀柱の指がガシッと閉じて拳が握られた。

 ヴォフォゥウン!

「!」
 再びゼレクトロンの周囲の木々が燃え上がり、その炎想ほのおは腰の脇に捻られながら構えられていく超重琥珀拳アンブロイドフィストの拳に、渦を巻いて集約されてゆく。

「ぅ!ぬあぃああ!」

 ゴーザンの叫びと共に、エザンデッフの背後に装備されたミニミサイルラックが開口する。エザンデッフはゴーケンの拳先から超振動膜MWウォールパンチをゼレクトロンに向けて放ち、タイミングをずらして発射したミニミサイル群にそれを追随させた。

 ブアッッ!

 ゼレクトロンが決して素早くも無い落ち着いたモーションでくうを殴ると、拳の形になった炎がエザンデッフの全ての攻撃を飲み込みながら突き進む。

「ぬ!ぅおお!」

 その炎拳パンチの輝きに戦慄するゴーザンの視界に影が踊る。
「ゴーザン!」
 エザンデッフを庇ったベデヘム3は、その炎拳を防ぐ為にガードをするも、まるで引火した空気人形のように、いとも簡単に全身が燃えぜる。
「ウォオ···」

 ヴォゴォォォ!

「三号!」

 エザンデッフの視界、丁度双角の合間を、ベデヘム3の中枢活動体のような人影が爆発の衝撃波に弾き飛ばされて行った。

「···くっ!貴様らああ!」

 脂汗を流すゴーザンの視界には、既に剛腕を振りかぶり、鬼の形相で殴りかかって来るゼレクトロンの姿があった。





 ゼレクトロン。


 
 かつて。
 神世の時代と呼ばれた前創造世界において、神の戦者と呼ばれた最強の琥珀の闘神にしてゼレクトロンシリーズ唯一の生き残り。

 いつか、どこか。

 そんな超過去の遺物であるゼレクトロンを発見したとある王国の王族と王子ヴァエトは、人の手で前神世界の技術ゼレクトロンを制御して見せようと慢心し、ただでさえ不安定なゼレクトロンに不完全な改造を施した。

 王国を影から篭絡ろうらくしようと暗躍していたアルオスゴロノ帝国の戦士、転生以前のゴーザンの打倒に成功した王子ヴァエトだったが、家族や仲間の心配を他所に増長しゼレクトロンを暴走させてしまう。


 ヴァエトの悲しい情報と共に、眠りについたゼレクトロンだったが、活動体を用いて世界を見聞し、仲間達の思いに触れ、そしてある“友„との出会さいかいによって永らく諦めていた再生を誓い、今ここに立ち上がった。


 その友の名は······



「うぉりゃあああ!」

 ドゴォォォォン!!
 
 ゼレクトロンとエザンデッフの巨拳同士が正面からぶつかり合う。
「ぬぉお?」
 この一撃で、ゴーケンの超振動膜発生機能が破壊された。

 二撃目。

 ゴギャァアッッ!

 ゴーケンのフレームが確実に砕ける音がした。
「藍罠ああああ!貴ッッ様ァ!」
 エザンデッフは隙を作ろうと双角を突き出した。
 
 ギュズッッ!!!!!

 自重の制御を一瞬損ない、地球の引力に引かれてその場に“落ちる„ゼレクトロンだったが、手刀チョップに変わった超重琥珀拳アンブロイドフィストがその一瞬の間にエザンデッフの片方の角の根元へとスッと伸びた。
 結果、ゼレクトロンのほぼ全重量を支える形となったエザンデッフの片方の角がバキンと折れる。

〔どーしたゴーザン!師匠せんせいはそんな力の使い方を俺の体に叩き込んでねーぞ?!〕
 
〔ぬぐぁ!イサクぁーー!!〕

 ドゴァ!

 椎山の煽りに動揺したエザンデッフは、ゼレクトロンの三撃目をゴーケンに食らい、ついにゴーケンは砕け散った。

「椎さん!」
「おーよォ!」

 腕の間接からバチバチと火花を散らし、ズンズンと後退りするエザンデッフ。
 ゼレクトロンは空手の型のような、明らかに必殺技直前と分かるルーティーンをこなした。

 
 藍罠は右腕を構えた。ゼレクトロンの腕。超重琥珀拳アンブロイドフィストもその動きに連動して肘関節を引き絞る。
 藍罠の動きを読み、椎山が精神を集中すると同時に機体背面の剣のようなものが二本、カチンと瞬間的にかち合い、それに伴い発生した衝撃波が後押ししてゼレクトロンは前方に加速し、エザンデッフとの間合いを詰める。

 振りかぶられたパンチが渓谷を滑るように進み、拳先は的にしかなっていないエザンデッフの上半身ど真ん中を捉えた。

 ゴパァァァアアン!!

 轟音を渓谷の谷間に響かせ、エザンデッフの上半身は白い火花を華吹雪のように残して爆砕し、残骸は虚空にボヤけるように溶け散った。




「い!ぃひぃ!」

 ダズウウウウウウン!

 エザンデッフの残された下半身は、両膝を突いて渓谷に座り込んだ。怯えるゴーザンの居るコックピットは天井が無くなり、オープンカー状態になっている。
「し、信じられねぇ!アイツら、、この体が!どうなっても···良いのかよ?!」


「はああぁーー······」

 藍罠は肺に残った空気を全て抜いた。
 ゼレクトロンは胸の前で交差した両腕を横に引き腰の側に持って来ると、胸を張って体勢を整え、エザンデッフの残骸を見下ろした。

「あーーーー!スッとした!」
 琥珀の中の椎山少年は閉じた目もハの字になるほど力を抜いた。
「···さて!椎さん?どうやって元の体にモドリマショ?」
「···知らん!」
「アッハッハッハッハッ!本気まじすか?」
「うん!ノープランだった」


 ヨキト!イサク!


「!、ゼレクトロン?」
 操玉コックピット内に、少年ゼレクトロンの声が響いた。

 ちょっと提案なんだが······

「提案?」
 藍罠と椎山は、ゼレクトロンが何かを告げるのを待った。

 


 ゼレクトロンオレとイサクの体を交換するんだ。














 
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