神樹のアンバーニオン (3) 絢爛! 思いの丈!

芋多可 石行

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復活!琥珀の闘神!

不 敵

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 ベデヘム3が指示するようにバッと手をかざすと、悠然と歩みを進めるゼレクトロンに向かって、六体のベデヘム達が巨体に似合わぬスピードで襲いかかった。

 だがゼレクトロンは避けようとはしない。
 殴る、蹴る、体当たり、張り手、引っ掻き、肘打ち。どの攻撃も一撃で高層ビルを薙ぎ倒せそうな程の威力だったが、ゼレクトロンは全く意に介す事無く、まるで紙人形でもいなすかのように真っ直ぐエザンデッフの方へと進んで行く。
 !ーーーー
 ーーーー!
 無視を決め込まれ、ベデヘム達が憤った頃合いを見て振り返ったゼレクトロンは、丁度背後から再突進してきたベデヘムの一体とガッチリ組み合った。
「グォ!」
 一瞬投げ飛ばされそうになったそのベデヘムを、次の一体、そのまた次の一体と直列に並び、たばになって押し込むベデヘム達。だがゼレクトロンはたった一体、余裕で筋骨隆々な怪獣軍団を押さえ込んでいる。
 
 ズシャ!ズシッッッ!!···

 それどころか六体と組み合ったまま、一歩ずつ押し返し始めた。
「グォワアア!」
 ゼレクトロンはそのまま一掻きも腕を振らず、ベデヘム達全員を押し飛ばした。
 そのあまりの怪力に、叫び声を上げて、渓谷内にブワッと弾き飛ばされるベデヘム達。

「椎さんッ!突っ込むッスよ?!」
「おーよぉ!」

 ベデヘム達が渓谷に倒れ込むよりも早く、頭角ツノを発光させたゼレクトロンは駆け出していた。

 ズヴァッ!ガッ!ドッッッ!ゴ!ガ!ズンッ!

 ゼレクトロンの頭角で突かれたベデヘム達は、錐揉み状態でその場で回転しながら渓谷沿いの尾根よりも高い位置に突き上げられた。ゼレクトロンが超高速で渓谷を駆け抜けた事によって、川の水や石も走った軌道上へと弾け飛ぶ。
 ゼレクトロンの角にはドリルのように渦巻く眼に見えない力場が形成され、打突の威力を途方もない程に増していた。
「!」
 そして急停止からのターンで振り返ったゼレクトロンは、降って来たベデヘム達をパンチで一体ずつ、エザンデッフ達の前に殴っては弾き、殴っては弾いて返却しながら前へと進む。

「はィよ!」 ドッ!
「ホラゃ!」ドゴッ!
「ジャンジャン!」 ドガギッ!
「っっとぉ!」 ドカッ!
「オラヤっ!」 ドドッ
「とぉーー!!」 ボゴォ!

 藍罠と椎山の、テンポの良い掛け声と共に、正確にブッ飛ばされていくベデヘム達。
 黙って見ている事しか出来ないエザンデッフとベデヘム3の前に、ベデヘム達の山が出来ていった。
 六体目が重なると同時に怒りの形相になったベデヘム3は、片手ちゃぶ台返しの要領で失神した仲間達の山を渓谷の外へバラバラと弾き出して吠えた。
「ヴァグォォオオオオオッ!」
 浮かび上がった仲間達の下をくぐり抜け、激怒して突進して来たベデヘム3は、目潰しのつもりか川底の石を掬い上げてゼレクトロンへと投げ付けた。
 思わず左腕でそれをガードしてしまったゼレクトロンの腹部に、ベデヘム3のボディーブローがゴンと直撃した。
「?」
 ベデヘム3の拳には、何の手応えも無い。ゼレクトロンはわざとガードした腕の隙間から、ベデヘム3を睨むでも無く見つめていた。

 ダン!

「!」

 ゼレクトロンはベデヘム3の両肩に両掌を乗せた。

〔ようやく組めたな大男ニィちゃん?リクに答えに来てやったぜ?〕

「グォ!?、その声!き、貴様!藍罠!···か?」

 ベデヘム3の顔前にある伏せ目がちなゼレクトロンの頭部から聞こえた藍罠の声に、ベデヘム3は目を丸くした。
「あ、藍罠だと?!何故奴がゼレクトロンに!ま!まさか!」
 ゴーザンが驚いていると、ベデヘム3の両肩から離れた両掌はコンパクトに上下回転し、下半身は横方向に素早く回転した···のをベデヘム3が確認したのも束の間、猛烈な勢いの正拳突きがベデヘム3の胸部にヒットした。

 シュド!ゴンッッッッッ!

 フッーーーー

 弾き飛ばされたベデヘム3は、エザンデッフの左横を通り過ぎ、背後の崖に当たって止まる。それはエザンデッフが、ゴーザンも全く反応出来ない速度であった。

俺もいるぜ?ゴーザンハァァァァァ···

〔な!イサクっ!??〕

 ゆっくりと構えを戻すゼレクトロンから、椎山の声と共に藍罠が呼吸を整える声が響いた。
〔くぬぐ!ぉノレ···なんだか知らんが!···おい!三号ッ!〕
「?!」
 エザンデッフの背後で片膝を突き、胸を押さえて頭を振っているベデヘム3が顔を上げた。
「ゴーザン?」
〔三号!ゴーケンを持って来い!〕
「······」
 ベデヘム3は、無言で渓谷の奥の闇へと消える。エザンデッフは、豪胆な態度でこちらを睨むゼレクトロンへと歩を進めた。

 ガッ!!ガジギギギッジッンッ!

 やがて至近距離で詰め寄った二体は、その一角と双角をぶつけ合い、ガチガチと絡め合いながらツノの下の目で視線メンチを切り合う。

〔ようやくこの体と戦う気になったんだな?え?オマエラ?〕

強請ゆすってんじゃねーぞ?甘やかせとのたまってまだ意地が張れると思ってるのか?ォオイ?〕

 ズズンッッ!

 二体がほぼ同時に発した高出力の姿勢制御用波動がぶつかり合い、渓谷が揺れた。

 ギュダ!バァァァン!

「!」

 ゼレクトロンがあえて自分から絡めた角を離した刹那。エザンデッフの双角の間で何かが起きた。
「ぬ?」

「フフ···惜しい」

 エザンデッフは二つの首を支える衝撃吸収機巧アブソーバーからヴシュ!と気体ガスを逃がす。

 ヴァーーーン!

 渓谷の合間を縫って、巨大なロボットアームにタイヤが付いたメカ、ゴーケンがクラクションを鳴らしながら川の上をザバザバと走って来た。
「椎さん?何すかあれ?」
「ゴーケンだとさ、重拳のコピーだって」
「なんとかならなかったんですか?そのネーミング!」
「だからかんとかしようゼ?な?パンチくん?」

    キュイ!

 パンチくんのデータが入ったメモリが、椎山に答えてか細く声を上げる。


「ふふふ!」
 エザンデッフはゴーケンを装備すると、首の動きだけでロボットらしい無表情なドヤ顔をゼレクトロンに向ける。
 そしてゴーケンの拳先を前方に突き出し、一瞬沈黙した。

 ヴァッ!

「!」
 ゴーケンの拳先から放たれた衝撃波の板がゼレクトロンを叩く。
 ギチンと機体前方の宝甲が軋み、ワッと熱くなった。
「が!これは!?」

 ヴァッ!ヴァン!!

 衝撃波の連発を受けたゼレクトロンの表層に、軋みと熱のダメージが蓄積していく。やがて周囲の川の水が水蒸気爆発を起こしてバッと弾けて沸騰した。
 ゼレクトロンはガードするも状況はさして変わらない。その間にもエザンデッフはゼレクトロンへと歩み寄り、その双角を近付ける······

 バァァァン!
 ギュシッッッッ!

「!「!」」
 いきなりの下方へと向かう重みに耐えきれず、ゼレクトロンはガクンと膝を折って僅かにかがむ。そしてゼレクトロンが見上げた視線の先には、ゴーケンを振りかぶるエザンデッフの姿があった。

 ゴガン!

 ゼレクトロンの両腕ガードに、ゴーケンの一撃がヒットし、ゼレクトロンは片膝を付いて湯気が立ち込める川面かわもに伏してうずくまる。
「ハハハハ!」
 嗤うゴーザンがもう一度ゴーケンを振り落とそうとした瞬間、立ち上がりかけのゼレクトロンの膝にあるカブトムシの角のような装甲がゴソッと上方にスライドして、エザンデッフの腹部を突いた。

 ガ!キョン!

〔ぉが!!〕
 弾かれ持ち上がったエザンデッフは、ひと間合い分程後退し、右にある崖にゴーケンで掴まって止まる。
「こッ!···の野郎!」
 エザンデッフは掴まっている崖の岩をバキバキと握り潰しながら姿勢を正した。

「藍罠!多分だがな?」
「はい!」
「多分拳から出たヤツはマイクロ波部門的なのと、角の能力は自重制御の波動を吸い取る系統だな?詳しくはよくわからんけど?」
「押ッ忍!上等です!」

 掛け合いの後、ゼレクトロンは立ち上がりもう一度自信満々に胸を張る。

「椎さん!パンチくん!俺らもそろそろやるッすか?」
「おお?良いねぇ!」
    キュー!!


 藍罠は首から下げたドッグタグの束を外し、左手でパンチくん入りのメモリを持つと、右手のナキルの琥珀アンバーに向かってメモリを構えた。














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