24 / 201
復活!琥珀の闘神!
言伝て
しおりを挟む(ガルン···?)
ヒメナはふと思い立ち、アンバーニオンと並び立つガルンシュタエンに想文で語り掛けてみた。
(こ!琥珀の姫!、そんな!勝手に想文が開通してる!?)
クゥオオーーン。
アンバーニオンの操玉に、クリスタルボウルのような音が響く。
(やっぱり!この共鳴!ガルンの声だったのね?)
(な!なんのことだ?!琥珀の姫!)
「気にするな?ガルン」
「エシュタガにも聞こえるの?もしかしてイヤだった?」
「イヤも何も無い。恐らく、お前のカードに使われていた宝甲と偽装リンクする為の希少部品、疑似黒宝甲の影響だろうな?後でゆっくり、原理でも解析しよう」
そんなやりとりの間に、背後からにじり寄るベデヘム145に対して、振り返ったアンバーニオンもさも当たり前のようにガルンシュタエンの背後に回り込み、二体の琥珀の巨神は背中合わせでベデヘム達と対峙した。
(ガルン!いいの!ごめん、こっちのハナシ!)
(は?···ぬぅ!太陽の樹め!勝手な開通を!)
(その事なんだけどね?)
アンバーニオンとガルンシュタエンはほぼ同時にベデヘム達へと歩み出して行く。
ベデヘム146を間合いに捉えた神霧剣の一閃はベデヘム146の強力な顎で噛まれてガキンと受け止められ、一方、アンバーニオンとベデヘム145は、再び両手でドシリと組み合った。ベデヘム145の筋肉の上、全身に渡って血管の筋が浮かび上がり、今度は全力である事をアピールする。
(太陽で誰か見掛けなかった?私達を助けてくれたツツジ色の巨人の関係者以外で···)
ガルンは一瞬、太陽にヒト?などと何を言っているんだ?と思ったが、何気にヒメナの疑問にも俄然興味が湧いた。
地球と太陽を自由に行き来し、乗り込んでさえいれば、人間でも太陽の至近距離で活動出来るロウズレオウ。
そしてアンバーニオンを創造し、偽りの存在であったガルンシュタエンを真の琥珀の巨神へと修復再生させた太陽の樹の真意。
その他にも、何者かの意思が存在していてもおかしくは無いという予感のようなもの。
アルオスゴロノ帝国の戦闘システムとなり、様々な自己学習を積んできたガルンですら常識を超える出来事の数々。
探求心をそそられるのは確かな事であったからだ。
そして巡らせた記憶の中にあった違和感を、ガルンはヒメナに吐露する。
(よく覚えて無いんだ······けど、誰か···誰か居たような気がする)
(本当?!)
?、そういうお前の方は、修復中の事を何も覚えていないのか?
ガルンが疑問に思う中、ベデヘム146が咥えて振り回すガルンシュタエンの神霧剣が、フッと霧散して消える。
行き場を失った顎の力は無駄に空を切り、ガルンシュタエンによってその隙に掴まれたベデヘム146の首にもう一方の腕が巻き付く。
ブンッ!!
そのまま首投げを受けたベデヘム146は、背中から容赦なく地面に叩き付けられた。そしてアンバーニオンによって振り回された挙げ句、まるでクワガタ虫の相撲のように両肩の琥珀柱によって掬い上げられたベデヘム145がその上に落ちてくる。
〔よりゃあああっ!〕
ドダシィィィィィン!!!
「「ゴワガァァ!」」
呻くベデヘム達だったが、まだ与えるダメージの決定打には至らない。ベデヘム達の再攻に備え、臨戦態勢を崩さないでいた宇留とエシュタガは、突如、丘を下る峠道から走る閃光と、ベデヘム3を弾き飛ばす巨大な琥珀の腕を目撃した。
〔あれは?!〕
「共上さん達の居る辺りだ!」
琥珀の腕は、丘そのものに吸い込まれるようにすぐ消えてしまった。
丘を転がり落ち、宇留達の目線の先で立ち上がったベデヘム3は、こちらを見下ろすアンバーニオンとガルンシュタエンを視界に認めると、雄叫びを上げ突進を開始した。
「ギサマラアアッ!!!」
それに伴い、両腕が伸びて膨れ、頭部の皮膚も完全に再生する。
フッ!
「「!」」
ベデヘム3の巨大化した両腕が消えた。
攻撃の軌道を見失った宇留達に、不可視の攻撃を予測する時間はあまりにも少な過ぎた。
ドゴォォォン!!
ガルンシュタエン、次いでアンバーニオンに見えないラリアットが炸裂する。
攻撃を見せないという狡猾さに、気をてらう事の無い正面突破というシンプルな正攻法の組み合わせ。相手の疑心を利用するベデヘム3の戦法が功を奏した。
だがベデヘム3は、この一瞬の間にガルンシュタエンの指先から濃霧のようなガスが噴霧された事に気が付かなかった。
「がっ!」
地面に弾き飛ばされたアンバーニオンとガルンシュタエン。
宇留とエシュタガは、即座に自機を立て直しながら近くに倒れていた筈のベデヘム145、146が居ない事に気が付いた。
ブンッ!ドッッッ!
「!」
それと同時に、ベデヘム3によって放り投げられたと思われるそのベデヘム達そのものが、アンバーニオンとガルンシュタエンの体正面に組み付く。
ガシッ!
ギリリリリ!
「ぐ!」
「うぁ!離せっ!」
組み付いたベデヘム達の重さに耐え、踠く間にも、再び腕の消えたベデヘム3が二体の間を駆け抜けようと迫る。
「「!」」
アンバーニオンとガルンシュタエンは、なるべくベデヘム3をギリギリまで引き寄せると、二体同時に背部から衝撃波を発して前のめり、ベデヘム達を押し潰すようにして倒れつつベデヘム3の追撃を躱す。
ズドダァァァァン!
どうやらニ撃目もラリアットだったようだ。組み付いていたベデヘム145、146は、今度こそ失神して沈黙する。
ドン!
今度は機体前方に衝撃波を発して、転倒の逆再生映像のように速攻起き上がったアンバーニオンとガルンシュタエンは、後方でターンして戻って来るベデヘム3に向き直った。
「!」
向かって来るベデヘム3の肩幅の延長線上にある何も無い場所で、霧で出来た薄紙のような塵がフチッと解れた。
風圧ではなく、物理的な何かにぶつかって解れたような壊れ方。
〔見えたか?〕
「!、うん!」
ベデヘム3の周囲に舞う塵の正体が、ガルンシュタエンの能力だと悟った宇留達も、ベデヘム3の透明な腕の解析を試みる。
「こっちもなんかする!」
(アンバーニオンが叫ぶ!あなた達も聞いていて?)
(!、なるほど了解)
「······!」
ガルンが察すると同時に、アンバーニオンの口部宝甲が僅かに開き、ワッッ!と一声叫ぶ。
ッタァーーーーン!!
破裂音が大地を駆け抜け、ベデヘム3に当たって反響した音がアンバーニオンとガルンシュタエンに返る。
「!、そういう事か?」
宇留達もエシュタガ達も、音波反響によって機体のセンサー上に姿を現したベデヘム3の透明な腕の正体を理解した。
透明化する寸前、延長し膨れ上がったと思われていた腕は、長さこそそのままでありながら、膨れているどころか鉄棒のように細く、だが凝縮し固くなっているようだ。ベデヘム3は両腕ラリアットのポーズのまま二体に向かって来る。
(やっぱり!損害面積に違和感あると思ったら!)
ガルンが感心していると、ベデヘム3の本体も透明化を開始した。ベデヘム3も、アンバーニオンの声で音響解析されているのを悟ったようだ。
そうはさせんぞ!?
ベデヘム3は透明化に合わせ、突進の軌道を少しだけ右に傾けてずらす。三体の間にほぼ距離は残されていない。足跡から居所を追及している暇など無いだろうとベデヘム3は高を括っていた。
だがアンバーニオンとガルンシュタエンは、既にベデヘム3を目視で捉えているかのように正確に立ち向かって来た。
「何ッ!?」
アンバーニオンとガルンシュタエンは、横方向へと伸びた透明で固い腕を鉄棒のように利用し、二体同時に逆上がりの要領で空中へと飛び上がった。
「!ーーーーー」
飛行能力を組み合わせ、後方宙返りのように空中で回転するアンバーニオンとガルンシュタエンに驚愕の視線を向けるベデヘム3。
「バカな!?どうやって俺の居所を!?」
再生したばかりのベデヘム3の頭部表面の皮膚は光学迷彩能力が損なわれ、その部分だけ透明化があまり促進されていなかった。
「バレバレだぁーーーーー!」
自由落下で落ちて来たアンバーニオンの左拳と、ガルンシュタエンの右拳が同時にベデヘム3の頭部に降り注ぐ。
ドゴォォンッ!!!
周囲の土壌が砕け飛ぶ程の衝撃波を伴い、ベデヘム3は地に伏した。
「ヘアスタイルは、最初に気にするべきだったな?」
ガルンシュタエンの操玉で、エシュタガは片手櫛で髪を掻き上げる仕草をした。
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