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Episode5

調子に乗る勇者

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 オレとしてもここまで来て遠慮されるのは今回の趣旨に反することだと理解している。だから不器用ながらも煮え切らないラスキャブに助け船を出すことにした。



「いいのか、ラスキャブ。オレが言うのも何だが、もうこんな機会を持つのは難しいかもしれないぞ。それにどんなことを言われたって怒ったりはしないさ。遠慮なく言ってくれ」

「うう…」



 それでもなお踏ん切りのつかない様子のラスキャブは、キョロキョロと視線を泳がしてピオンスコとトスクルの顔を見た。アイコンタクトで何かを尋ねられたような二人は、やはり黙ったまま力強く頷いた。



 この間に一体どんなやり取りが合ったのか、オレには想像もつかない。



 するとラスキャブはベットから立ち上がり、恐る恐るオレの元へとやってきた。そして握りこぶしを作りながら勇気を振り絞る様な態度で言ってくる。



「わ、私は魔族のザートレさんになってもらいたいです!」

「魔族の姿か…?」

「お、お、お願いします」

「わ、わかった。待ってくれ」



 思ったよりも気迫のこもった声にオレはつい尻込みしてしまう。何だかんだで言ってもこの三人の底知れないポテンシャルにはオレも恐れを持っているのだろう。



 言われるがままにオレは魔族の姿を取る。こと女性を相手取ることに集中するのならばフォルポス族の姿よりも魔族の姿になっている方が精神的には安心だ。



「それで? お前はどうしたいんだ、ラスキャブ」

「…私も」

「ん?」

「私も…ハグをお願いします」



 と、赤面しながら申し訳なさそうに呟くラスキャブにオレは再び庇護欲を感じてしまう。しかも今のオレはルージュに言わせると最も軽薄な性格になる姿を取っている。つまりは更に悪戯心が芽生えたのだ。



「ハグだけでいいのか?」

「え?」



 言うが早いかオレはラスキャブの事を抱きかかえていた。俗に言うお姫様抱っこという形で。



「ひゃあああ!」



 と、悲鳴を上げるラスキャブを見るともう少しだけからかってみたくなった。



 オレはラスキャブを抱えたままベットに腰を掛けた。そしてそのまま抱き寄せてみた。ハグというよりも最早抱擁に近い。そしてその勢いのままに彼女の額に軽く口づけをした。



「んんっ!?」



 そんな言葉にならない悲鳴を出したラスキャブを見てオレは満足だった。



「お前が望むならもう少しこうしていようか?」

「い、いえ。もう結構ですぅ!」



 そう言って半ば逃げ出すように部屋を出て行ったラスキャブを二人が追いかけ出す。ついでにオレはアーコを呼んできてくれと頼むと、あいつからはどんな要求が飛んでくるのか背筋を震わせながら待っていた。

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感想 1

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