314 / 347
Episode5
わからない勇者
しおりを挟む
休憩がてらに四人で賄いを食べていると、ルージュとアーコが戻ってきた。宣言通りシージライノのツノをうまく短剣と槍とに加工している。武器を二つも作るにはあり得ない程短時間だが、この二人の前ではそんな常識はあってないようなものだろう。
(よう。できたぜ。ちょっと持ってみてくれ)
アーコは案の定、短剣をピオンスコに槍をラスキャブに手渡した。ピオンスコはおもちゃを与えられた子供のように嬉々としてナイフを振るったり、逆手に構えたりしたりとはしゃいでいる。
反面、ラスキャブはおっかなびっくりと槍が周りにぶつからないように気を配っていた。ピオンスコと違い槍はおいそれと構えたり振るったりできないから仕方がない。だが本人は嬉しそうな顔をしているからきっと喜んでいるのだろう。
それよりもオレはルージュが持っている靴の方が気になった。
(その靴は?)
(これか? ラスキャブとピオンスコだけ武器を新調したのではトスクルが不憫だと思ってな。急ごしらえで作ってみた)
(え。私にですか?)
(ああ。シージライノの皮を鞣して作ってみた。そこに私とアーコが魔力を込めて細工をしてみた)
二人はニヤリと笑った。急ごしらえと言ってはいるが二人にとっての自信作らしい。
(トスクル。履いてみな)
(分かりました)
トテトテと近寄りトスクルは靴に足を通した。しかしその途端に怪訝な顔つきになってしまう。
「重っ」
テレパスを忘れ、つい思った感想を口にしてしまっている。シージライノの皮は頑丈さの大小にとても重量感がある。ひょっとしたらと思っていたが、どうやらオレの予感は当たっていたらしい。
(せっかくですが、これではジャンプもままならないので私の持ち味がうまく活かせませんよ)
(いや、逆だ。お前の跳躍力を十二分に活かすために作ったのだ。足に魔力を集中してみろ)
(こうですか…え?)
トスクルは急に驚いた表情を見せる。ポーカーフェイスが常の彼女が表情を変えるのは珍しい。つまりはそれほど予想外の何かに気が付いたのだろう。
(どうだ?)
(…そうですね。面白い感覚ですが、ここではうまく活かせません。一度外に出てみてもいいですか?)
(無論だ。調整の必要があれば言ってくれ)
と、こちらには何のことかまるで分らない会話を終えると宣言通り外に出て行った。少なくとも部屋の中では差し支えのある何かを試したいことだけはわかった。浮足立つトスクルを先頭に、オレ達は一度宿の外に出ることにした。
(よう。できたぜ。ちょっと持ってみてくれ)
アーコは案の定、短剣をピオンスコに槍をラスキャブに手渡した。ピオンスコはおもちゃを与えられた子供のように嬉々としてナイフを振るったり、逆手に構えたりしたりとはしゃいでいる。
反面、ラスキャブはおっかなびっくりと槍が周りにぶつからないように気を配っていた。ピオンスコと違い槍はおいそれと構えたり振るったりできないから仕方がない。だが本人は嬉しそうな顔をしているからきっと喜んでいるのだろう。
それよりもオレはルージュが持っている靴の方が気になった。
(その靴は?)
(これか? ラスキャブとピオンスコだけ武器を新調したのではトスクルが不憫だと思ってな。急ごしらえで作ってみた)
(え。私にですか?)
(ああ。シージライノの皮を鞣して作ってみた。そこに私とアーコが魔力を込めて細工をしてみた)
二人はニヤリと笑った。急ごしらえと言ってはいるが二人にとっての自信作らしい。
(トスクル。履いてみな)
(分かりました)
トテトテと近寄りトスクルは靴に足を通した。しかしその途端に怪訝な顔つきになってしまう。
「重っ」
テレパスを忘れ、つい思った感想を口にしてしまっている。シージライノの皮は頑丈さの大小にとても重量感がある。ひょっとしたらと思っていたが、どうやらオレの予感は当たっていたらしい。
(せっかくですが、これではジャンプもままならないので私の持ち味がうまく活かせませんよ)
(いや、逆だ。お前の跳躍力を十二分に活かすために作ったのだ。足に魔力を集中してみろ)
(こうですか…え?)
トスクルは急に驚いた表情を見せる。ポーカーフェイスが常の彼女が表情を変えるのは珍しい。つまりはそれほど予想外の何かに気が付いたのだろう。
(どうだ?)
(…そうですね。面白い感覚ですが、ここではうまく活かせません。一度外に出てみてもいいですか?)
(無論だ。調整の必要があれば言ってくれ)
と、こちらには何のことかまるで分らない会話を終えると宣言通り外に出て行った。少なくとも部屋の中では差し支えのある何かを試したいことだけはわかった。浮足立つトスクルを先頭に、オレ達は一度宿の外に出ることにした。
0
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる