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Episode3
頬張る勇者
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そうして組み分け通りに、先んじてアーコ達が宿を出ることになった。オレとトスクルは一旦はルージュのいる部屋に入り、もう一度段取りを確認する。アーコ達には気の向くままに街を歩いてもらって様子を伺ってもらうが、反対にオレ達は船の状況の確認と共に少し穿った探索をすることに決まった。つまりは何故、この町は魔族に占領され、なおかつそれが露呈していないのかという謎についてだ。
ルージュを魔族の姿に戻しても良いと思ったが、見も知らぬ魔族といても不利になる要素の方が大きいと判断したので、剣に戻りオレの鞘に納めることで話はまとまった。レプリカと違って、鞘からは妙な暖かみのようなものを感じる。
念のために、トスクルと共に部屋にはルージュが残っているかのような芝居をしてから部屋を出た。その足で一階におりようとすると、階段の傍らにいたナハメウと目が合った。
「お出かけですか?」
「ああ。買い出しと街の様子を見てくるように命じられた」
「そうでしたか。どうぞ、お気をつけて」
したり顔のナハメウに見送られて外に出る。すると、まず初めにオレの鼻をくすぐったのは、屋台で売られている串焼き肉の香ばしい匂いだった。
夕飯は食ったものの、巨狼の姿で走ってきたせいかまた空腹になっていた。アーコ達にも少なからず金は渡してあるから、きっと好き勝手にやっているだろう。そうして罪悪感を消したオレは食欲に素直に従う事にした。
「せっかくだ、トスクルも食べるか?」
「そうですね。頂きますわ」
屋台は例によって魔族の、それも年のいった女魔族がやっていた。尤も、オレは見た目で魔族の年齢を判断はできないので、本当に年増なのかは分からない。ただ、嬉しかったのはそこで売っている串焼き肉が「コアエ」という特殊な羊の肉だったことだ。
コアエは普通の羊と違い、羊毛を取るために飼育されることはない。岩塩などを舐めて取り入れた塩分を体毛に結晶化させて蓄えるという特殊な体質があるからだ。それのせいで羊毛は加工品に利用しずらい反面、その塩は「毛塩」と呼ばれ珍味として重宝がられる。特にコアエの肉にコアエの毛塩を振って食べるのは、どこの地域でも定番となっている。少々値の張るものではあるが、素通りするという選択肢は取れなかった。
トスクルの分と合わせて二つを頼むと、タイミングよく焼きたてを貰う事ができた。
そうしてコアエの肉に口を付けたところで、魔族の姿のまま飲み食いをするのが初めてだった気が付いた。フォルポス族の時と違って頬がある分、口の中で十二分に噛みしめることができる。ほとんど丸のみでしか食べられないフォルポスと比べ、肉汁や塩味をより一層味わう事ができたのは、感動的だった。
戦いの内に早食いになって行った自負はあったが、案外フォルポス族だからそうなってしまったのかも知れない。少なくとも食事に関しては狼よりも、フォルポスよりもこの姿でいる方がいいのではないかと思っていた。
ルージュを魔族の姿に戻しても良いと思ったが、見も知らぬ魔族といても不利になる要素の方が大きいと判断したので、剣に戻りオレの鞘に納めることで話はまとまった。レプリカと違って、鞘からは妙な暖かみのようなものを感じる。
念のために、トスクルと共に部屋にはルージュが残っているかのような芝居をしてから部屋を出た。その足で一階におりようとすると、階段の傍らにいたナハメウと目が合った。
「お出かけですか?」
「ああ。買い出しと街の様子を見てくるように命じられた」
「そうでしたか。どうぞ、お気をつけて」
したり顔のナハメウに見送られて外に出る。すると、まず初めにオレの鼻をくすぐったのは、屋台で売られている串焼き肉の香ばしい匂いだった。
夕飯は食ったものの、巨狼の姿で走ってきたせいかまた空腹になっていた。アーコ達にも少なからず金は渡してあるから、きっと好き勝手にやっているだろう。そうして罪悪感を消したオレは食欲に素直に従う事にした。
「せっかくだ、トスクルも食べるか?」
「そうですね。頂きますわ」
屋台は例によって魔族の、それも年のいった女魔族がやっていた。尤も、オレは見た目で魔族の年齢を判断はできないので、本当に年増なのかは分からない。ただ、嬉しかったのはそこで売っている串焼き肉が「コアエ」という特殊な羊の肉だったことだ。
コアエは普通の羊と違い、羊毛を取るために飼育されることはない。岩塩などを舐めて取り入れた塩分を体毛に結晶化させて蓄えるという特殊な体質があるからだ。それのせいで羊毛は加工品に利用しずらい反面、その塩は「毛塩」と呼ばれ珍味として重宝がられる。特にコアエの肉にコアエの毛塩を振って食べるのは、どこの地域でも定番となっている。少々値の張るものではあるが、素通りするという選択肢は取れなかった。
トスクルの分と合わせて二つを頼むと、タイミングよく焼きたてを貰う事ができた。
そうしてコアエの肉に口を付けたところで、魔族の姿のまま飲み食いをするのが初めてだった気が付いた。フォルポス族の時と違って頬がある分、口の中で十二分に噛みしめることができる。ほとんど丸のみでしか食べられないフォルポスと比べ、肉汁や塩味をより一層味わう事ができたのは、感動的だった。
戦いの内に早食いになって行った自負はあったが、案外フォルポス族だからそうなってしまったのかも知れない。少なくとも食事に関しては狼よりも、フォルポスよりもこの姿でいる方がいいのではないかと思っていた。
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