魔王に捨てられた剣を振るのはパーティに捨てられた勇者 【Episode5連載中】

音喜多子平

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Episode3

待つ勇者

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 決まるが早いか、オレはラスキャブと共に先行してルーノズアの門を目指し始めた。ラスキャブは心の準備ができていなかったのか、半ばおどおどしながらオレについてくる。これはこれで門衛の反応を見るのにもってこいだ。



 ようやく街の明かりで照らされ始める様な位置にまで来た。当然、門衛たちも夜道を歩くオレ達の姿に気が付き、全員が何らかの反応を示した。しかし警戒こそしたが、排他的な雰囲気をまとう事はなかった。



 なのでオレもあくまで平然を装って、いつも通りの行動を心掛けた。



「通行許可を貰えるか?」



「はい。こちらで通過記録のサインと通行税をお支払いください」



「わかった…」



 六人の魔族たちは全員、登録印は付けている。だが町に『囲む大地の者』の姿は見えないにも拘らず、街への入行は難なく可能。



この三つから類推されるのは、オレ達『囲む大地の者』に対する何かしらの罠が考えられる。



 街の中に入ってしまえば証拠の隠滅や情報漏えいがし難いから、敵の立場を思えば追い返すよりも賢明な判断だ。けれども流石に『囲む大地の者』の姿が見えないのを好意的に受け止める程馬鹿ではない。



 だからオレは当然の疑問を投げかけて相手側の反応を伺った。



「ここの責任者は? まさか門衛をお前ら魔族にだけ任せてる訳じゃないだろう?」



 わざと荒々しい口調で言った。すると、注していなければ気が付かない程の間で、奴らの動きに変化があった。そして一瞬で出たボロを取り繕って、あっけらかんと返してきた。



「南側の入口で事件があったようで、そちらの対応に追われております」



「…なるほど」



 そうきたか。南からやってきたオレ達はそこで揉め事などは起きていない事は確認済みだからこそ疑いを持つが、そうでない場合は納得してしまうような理由だった。これならば南から入る時には北側でトラブルが起こったと言えばいい訳だ。やはり、外からくる『囲む大地の者』を誘い込み、尚且つそれを怪しまれないようにあらゆる手を想定済みのようだ。ますます疑念は募るばかりだ、やはり気は抜けない



 俺たちが無事に入れたことはルージュ達にも見えたはず。ならばいつか見せたように、女フォルポスの姿を取って、同じように門を通るだろう。ならばあまり離れ過ぎずに門の近くで合流を計りたいところだが、あからさまに誰かを待っているように振る舞うのも気が引ける。門衛がアレという事は、町民全員が敵と思っておいてまず間違いない。適当な場所で魔族に変身してしまうのが得策だろう。ルージュ達と合流が叶ってしまえば、並大抵の事は強引に解決できるのだから、その点では安心感があった。



 宿屋を探すふりをして、路地を右往左往する。一切の視線を感じなくなった隙を見計らってオレは魔族に変じ、ルージュ達を待つことにした。
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