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Episode2
巨大化する勇者
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カルトーシュを出たオレ達はいち早くセムヘノの街を抜け出した。今日の今日で逃げ出すことは算段に入れていなかったものの、事態はそうでもしないと身に危険の及ぶところまで発展してしまったので仕方がない。
流石だったのはルージュがこういう事を予測して宿屋を引き払った上、別の宿屋を前払いで押さえていてくれた点だった。ギルドにも迷惑をかけることもないし、追跡に混乱の一手を投じることもできる。正に好手と言える思い付きだった。
街を出たオレ達はまずは北へと向かい、街が見えなくなったところで進行方向を西へと変えた。
西にはニドル峠の麓の広陵とした森が広がっており、万が一に放たれた追っ手を躱すために一度そこに入って一呼吸を入れた。夜の森に吹く風が、心地よく熱を冷ましていってくれる。今のこの状況を臆病だと笑う奴もいるかも知れないが、優秀な戦士ほど戦わないというかつての師の教えを思い出してオレは自分を納得させ、同時に鼓舞させた。
そこで次なる問題の解決のために相談をし始めた。
「セムヘノを無事に出られけどよ…ここからどうする?」
「カルトーシュで見聞きした情報の確認もしたいところだが、それは急いでやることじゃない、安全が確保されてからで十分間に合う――大きな目的で言えば、やはり魔王を殺すために『螺旋の大地』を目指すのと、ピオンスコとラスキャブの仲間とか言うトスクルを探す事の二つがある」
アーコの質問にオレが返すと、ピオンスコの顔がにわかに明るくなった。
「ともすれば、その両方を達成できるダブデチカに向かうのがベターだろう…問題はその道のりだ」
「道のりですか?」
「ああ。ここからダブデチカはどう考えても十日以上はかかる。その上、直線状には大きな街や村がないから、セムヘノに戻って準備を整えられない以上、迂回しなけりゃならない」
「主よ」
「どうした?」
「迂回する理由は水と食料の問題外にあるのか?」
「いや、主だった理由はそれだな」
「ならば最短のルートで行くことは叶わないのか? 食べ物は魔獣を狩ればいいし、水ならばいつか見せたように私が供給できる」
そう言われてルージュの特技の一つを思い出した。確かにその二つの問題をカバーできるのなら、最短ルートで向かうのは一つの手だ。無理から理由をつけるなら、最短ルートを通る場合、遮るもののない平原を通ることになる事だろうか。
迂回をすれば常時森の中に身を隠して進むことができる。フェトネックもそうだが、手下の魔族も翼を有している奴らが散見された。平野を通ることは避けたいとオレの勘が告げていたのだ。
すると今度はアーコが意味深な笑いと共に提案してきた。
「そういう事なら、一つ面白い手立てがあるぜ」
「面白い手立て、だと?」
「ああ。一度狼の姿になってくれ」
疑問符を頭に浮かべながら、俺は言われるがままに狼の姿へと転じた。これが一体何を解決させてくれるのかを見定めていると、アーコがオレに一つの魔法をかけた。
すると、見る見るうちに周りの風景が一変した。
てっきりルージュ達が縮んでしまったのかと勘違いしたが、そうではなかった。周囲の木々も幾分小さくなってしまっていた。とどのつまり、オレは狼の姿のままに普段の何倍も巨大化していたという事だった。
流石だったのはルージュがこういう事を予測して宿屋を引き払った上、別の宿屋を前払いで押さえていてくれた点だった。ギルドにも迷惑をかけることもないし、追跡に混乱の一手を投じることもできる。正に好手と言える思い付きだった。
街を出たオレ達はまずは北へと向かい、街が見えなくなったところで進行方向を西へと変えた。
西にはニドル峠の麓の広陵とした森が広がっており、万が一に放たれた追っ手を躱すために一度そこに入って一呼吸を入れた。夜の森に吹く風が、心地よく熱を冷ましていってくれる。今のこの状況を臆病だと笑う奴もいるかも知れないが、優秀な戦士ほど戦わないというかつての師の教えを思い出してオレは自分を納得させ、同時に鼓舞させた。
そこで次なる問題の解決のために相談をし始めた。
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「カルトーシュで見聞きした情報の確認もしたいところだが、それは急いでやることじゃない、安全が確保されてからで十分間に合う――大きな目的で言えば、やはり魔王を殺すために『螺旋の大地』を目指すのと、ピオンスコとラスキャブの仲間とか言うトスクルを探す事の二つがある」
アーコの質問にオレが返すと、ピオンスコの顔がにわかに明るくなった。
「ともすれば、その両方を達成できるダブデチカに向かうのがベターだろう…問題はその道のりだ」
「道のりですか?」
「ああ。ここからダブデチカはどう考えても十日以上はかかる。その上、直線状には大きな街や村がないから、セムヘノに戻って準備を整えられない以上、迂回しなけりゃならない」
「主よ」
「どうした?」
「迂回する理由は水と食料の問題外にあるのか?」
「いや、主だった理由はそれだな」
「ならば最短のルートで行くことは叶わないのか? 食べ物は魔獣を狩ればいいし、水ならばいつか見せたように私が供給できる」
そう言われてルージュの特技の一つを思い出した。確かにその二つの問題をカバーできるのなら、最短ルートで向かうのは一つの手だ。無理から理由をつけるなら、最短ルートを通る場合、遮るもののない平原を通ることになる事だろうか。
迂回をすれば常時森の中に身を隠して進むことができる。フェトネックもそうだが、手下の魔族も翼を有している奴らが散見された。平野を通ることは避けたいとオレの勘が告げていたのだ。
すると今度はアーコが意味深な笑いと共に提案してきた。
「そういう事なら、一つ面白い手立てがあるぜ」
「面白い手立て、だと?」
「ああ。一度狼の姿になってくれ」
疑問符を頭に浮かべながら、俺は言われるがままに狼の姿へと転じた。これが一体何を解決させてくれるのかを見定めていると、アーコがオレに一つの魔法をかけた。
すると、見る見るうちに周りの風景が一変した。
てっきりルージュ達が縮んでしまったのかと勘違いしたが、そうではなかった。周囲の木々も幾分小さくなってしまっていた。とどのつまり、オレは狼の姿のままに普段の何倍も巨大化していたという事だった。
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